今年もaninado様で集計されている企画に参加させていただきます。
すっかり毎年の楽しみです。他の方の記事もぜひ見に行ってね。
・2024年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
去年の10選はこっち。
◆姫様“拷問”の時間です 9話
(サブタイトルなし)
脚本:村上桃子 演出:幸博コマヲ 絵コンテ:出合小都美
作画監督:土佐岡加奈、加藤祐子、酒井愛理、大野勉、関口雅浩、三橋桜子、秋谷有紀恵、白幡裕二、黄薇霓、中村咲智、渡辺千尋、牧原加奈
監督:金森陽子


なぜか今年いちばん泣かされたのはこのタイトルでした。全然泣かせるような話じゃないのに、幸せでいっぱいの日々を見ていると謎にね……。
選出理由はシンプルで、姫様がこのケーキの上にあるものを「ペンギンだ」と言ってくれたからです。嬉しいなあ…… 誰かの顔を思い浮かべながら一生懸命に作ったものって、やっぱり報われてほしいから。
どうも私は、アニメの事をこのケーキだと思って見ている節があるようです。綺麗にも、時には不格好にもなるけれど、誰かの顔を思い浮かべながら工夫を凝らすところは同じ*1。そこに意思がある限り、見たアニメには出来るだけ向き合いたいな……と思って。姫様のようにカッコよくは出来ないけどね。
◆ぽんのみち 12話(東十二局)「雀卓の娘たち」
脚本・演出:南川達馬 絵コンテ:清水聡 作画監督:吉田満智子、三好智志、杉山直輝
監督:南川達馬



名作。「日常系」というファンタジーから目が覚めてしまいそうだった12話を選びます。
現実の尾道を舞台にしながら、むしろ今作の「日常」は夢の中にいる心地でした。よくアバンから夢オチで始まったり、OPがゲーム(電源を切れば終わるもの)なところも、幸せな時間とはパッと消えてしまうものだ――ということに自覚的だったと思います。
本編視聴中は、だんだんと不思議の国へ迷い込むようでした。東五局を越え、純金の麻雀牌を贈り、ケーキに刺身を合わせて笑えるのも、現実にありそうで無いライン。しかし、この現実に少し輪をかけた幸せこそ「日常系」の真髄に思います。本物の日常だといくら喫茶店の扉を開けてもチノちゃんは出てこないからね。
そんなファンタジー性の象徴、チョンボが動かなくなるのが12話。なしこちゃんが五索を切ろうとするのは最も危険な瞬間でした。
しかし五人の「日常」は終わりません。少なくとも、今はまだ。1話 → 12話で季節がひと回りするのが美しく、じゃんた君を中心に親番が一巡したように、また新しい風で青春の時間を始められるようでした。
それだってもう1周、2周もすれば終局する有限の時間です。だけど、そんなに心配は要らないのかもしれません。居場所となった電動雀卓なら次の対局を始めるのも楽ちんだし、修理さえすればほぼ永久に壊れない代物だからね。
◆最強タンクの迷宮攻略~体力9999のレアスキル持ちタンク、勇者パーティーを追放される~ 2話「アバンシアへの帰還」
脚本:雨宮ひとみ 絵コンテ:神崎ユウジ 演出:月野正志
総作画監督:永井泰平、山本径子 監督:熨斗谷充孝



このアニメ良かったね~~ 愛されて生まれてきたことが伝わって来るようなアニメでした。
第2話は、人間に恐怖心を持つルナさんをルードさんの故郷へ連れて帰る回です。このアニメの人たちって主人公を含め本当に優しくて、笑顔の素敵な人ばかり。そんな人たちとの触れ合いを通して、ルナさんの頑なだった心がほどけていく様子が温かかったです。見ていて、確かにこの町でなら幸せに暮らせると信じられたのが強くて。



表情が抜群にいい。コンセントみたいな目のミニキャラが出るのも可愛かったです。アバンから見せ場を設けて、一瞬で今作の優しい世界観に入っていけるのも特徴的でした。
実際、マニシアちゃんのアホ毛がブンブン動いて「これはそういう体質なんだ」と言われた時点で心は決していたかもしれません。選出理由には十分だと思います。
◆グリム組曲 4話「小人の靴屋」
脚本:横手美智子 絵コンテ・演出:鎌倉由実 絵コンテ:笹木信作 音楽:宮川彬良
作画監督:石川真理子、米倉麻衣、折井一雅、名倉智史、片桐貴悠
監督:鎌倉由実


たった一つの創作物、「昏迷の渚より」を書いた/書かなかったで、人生が全く別の結末に変わってしまう。童話をベースに読み手の想像力に働きかけるアニメながら、4話では自らの想像力を手放した主人公の凋落ぶりに圧倒されました。
売れない小説家Nの口を借りて「読者に読解力なんてない」「自分が書いた本の良さがまるで分からない」と言わせる恨み節も身に迫りました。これを実際に第一線で活躍されている方が書いているのだから肝の冷える思いです。
絵、小説、ブログ記事、何でもいいですが「思いついたけど書かなかった」というモノは、私たちにも一つくらいあるんじゃないでしょうか。そのくだらない一作が、あなたにとっての「昏迷の渚より」だった可能性を誰も否定できないわけです。
◆夜のクラゲは泳げない 12話「JELEE」
絵コンテ・演出:竹下良平 脚本:屋久ユウキ
総作画監督:谷口淳一郎 作画監督:谷口淳一郎、中島千明、鈴木彩乃、鈴木明日香、中尾和麻、松下郁子、徳永さやか、久保茉莉子、﨑口さおり、中野美柚、中田亜希子、宮永あずさ、朱里
監督:竹下良平


嫌いな素の自分/なりたい架空の自分。光月まひる/海月ヨル。『夜クラ』の悩める人たちが持つ二面性を、現実/バーチャルの混合ライブという形で、両方とも肯定してみせたのが力強かったです。
架空の自分とは、例えばペンネームやSNSのアカウントの事も指すと思います。自分のアカウントってどう思いますか? そんな仮面は脱ぎ捨てて素の自分で勝負しろ! と言うのは簡単だけど、心の弱さを補うべく創り出された人格も、また肯定されて良いものに思います。
特に12話で "竜ヶ崎ノクス" という名前が出たとき「私の名前だ」と言えるシーン、あれが本当に嬉しかった……。きっとJELEEは、この二面性をどちらも持ち合わせて歌うことのできるバンドなんだと感じています。



さらに収まりが良かったのが卒業の場面です。「何者かになりたい」と悩むように、『夜クラ』の4人はいつも思春期の色を帯びていました。良く言えば青さ、悪く言えば幼さ。
きっと卒業した後の4人は、少しだけ大人に変わっていくのでしょう。でも、それは今すぐじゃない。得意な手持ちカメラの演出は、かつて嫌いだった素の自分がキラキラと輝く瞬間を映すものとして、線香花火のように鮮明でした。
◆忘却バッテリー 11話「俺は噓つきだ」
脚本:池田臨太郎 絵コンテ:徳丸昌大 演出:徳丸昌大、増田桃一郎
作画監督:徳丸昌大、井上修一、小木曽伸吾、石塚理央、宮地聡子、中西優里香、陳品君、若狭賢史、三浦里菜、陳韋寧、飯田剛士
監督:中園真登


映像、声、人物……と、アニメの各要素が掛け算的に高め合っていた11話を選びます。
「宮野真守のアニメ」と呼ばれる作品に心当たりはあるでしょうか。あの人が思い切り演技をすれば、ともすれば役を食ってしまうほどの魅力を発揮すると思います。しかし、今作ではあれだけ自由にやっても「要圭」という芯があり、それは映像や脚本が声を受け止めるだけのミットを構えていたからだと思います。
11話の場合だと、まずは映像美に圧倒されました。大振りな動作とカメラワークには遠慮が無く、ともすれば映像だけが浮いてしまうほどの全力。ところが、それに千早瞬平の情念が一切負けていないのが凄まじくて。掴んだグローブを捨てたくても捨てられないシーンが、好き……。
◆ポケットモンスター 50話「映えろテラスタル!ダンス・ダンス・クワッス!!」
脚本:福島直浩 絵コンテ:斎藤徳明、忍田雄介 演出:小島隆史
作画監督:荻原慶汰、忍田雄介、松本めぐみ、吉野真一、田中修司 総作画監督:山崎玲愛、伊藤京子
監督:でんさおり 副監督:中田誠



67話を入れたいのは山々なのですが、この回は見逃せなかったです。
圧倒的な楽しさで選出しました。キャラクター自身が見られることを意識したパフォーマンス的な動きが本当に楽しい。カメラの方が振り回されて必死でついて行く感じ。配信者は目立つことが仕事で、ドットさんに「楽しむこと」を伝える話だったことも、この回を華々しく描く理由に繋がっていたと思います。
チラッ……とだけ見えるドットさんの横顔、ご覧になりましたか? 信じられないほどカッコいい。思わずコマ送りで見てしまう回でした。

この辺とかスゴいよ。ひと繋ぎの内にファンサービスと、ドットさんへ期待する表情と、ギャグと、芝居がかった驚きが全部入ってる。
◆異世界失格 8話「あの穴はすごく、背徳の匂いがする」
脚本:中西やすひろ 絵コンテ:河合滋樹 演出:高田昌宏、石丸諒、河合滋樹
作画監督:稲吉智重、渡辺はるか、春川彩子
監督:河合滋樹



コッテコテな異世界要素が楽しくて、油断すると太宰作品らしさに刺されるアニメでした。
8話は愚かなトネリコ村でのお話です。救いを与えると伝えられた優しい精霊が、最後にセンセーへ与えたものが無限の死の薬だった衝撃といったら……。
初見のときも圧倒されましたが、いざ言葉で解釈しようとするとなかなか考えさせられてしまう話で、美しさの輪郭をなぞっていくようでした。少し長くなるので内容はリンク先に丸投げしちゃお~ 読んでもらえたら嬉しいです。
2024夏アニメの感想(その1) - アニメ雑記帳
◆かつて魔法少女と悪は敵対していた。12話「SideB/SideM」
脚本:綾奈ゆにこ 絵コンテ・演出:大橋明代
作画監督:阿部愛由美、香田知樹、川本利浩
監督:大橋明代


原作から好きでした。私にとって大切な作品です。
アニメ化としては原作に忠実な描き方をしていますが、12話のラスト、白夜ちゃんの表情はオリジナルでした。OPの冷たさが残る横顔のリフレインで、雪解けのような笑顔。
私の中でこの作品の時は止まっています。それは今も変わりません。しかし、アニメであの二人が春を迎えたのを見たとき、いつまでも笑顔で、これからの季節を歩んでいくような気がして。それは世界という規模ではなくても、あの待ち合わせ場所という小さなスペースで時が動き出すのを感じました。
きっと、今頃もあの二人は他愛のない乳繰り合いをしているのでしょう。
◆転生貴族、鑑定スキルで成り上がる 20話「家族」
脚本:大東大介 絵コンテ・演出:加戸誉夫
坂﨑忠、堀たえ子、平馬浩司、金到暎、阪野日香莉、甲斐天貴、GrandGuerrilla 総作画監督:小林千鶴
監督:加戸誉夫


人を視て、人を助け、人に支えられる。やがて人を導く存在となるアルス・ローベントの成長をじっくりと描く正統派ファンタジーより、20話を選びます。


まずは1期の3話が印象的でした。まだ幼く、街を見ながら自分の無力さを痛感する背中。このシーンでアルスさんが決意を固め直すときも、決して口先だけでなく、隣に立つ街の少女ひとりを笑顔にした実績があり、思わず期待させられた回でした。
月日は流れて20話。今度見据えるのは、自分のため犠牲になった人たちの墓標です。大きくなった背中には人の前に立つ者としての精悍さとともに、いまだ背負うには酷な重責も圧し掛かっていました。
その背中の意味をリーツさんなら知っている。昔からずっと見ていたから。アルスさんの堂々とした背中も、年相応な背中も見つめ、抱えきれない感情を傍で支えられるところにグッと来ました。このアニメで誰かが一人でいるなんてことは無いからね。「家族」とはアルスさん達を指す言葉としても相応しいと感じています。
◇その他候補
今年はひとこと添えてみました。
- 最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました 2話「ラトト村へ」
アイビーの五感を通して感じられる村の描写から。 - 悪役令嬢レベル99~私は裏ボスですが魔王ではありません~ 1話「裏ボス、学園に入学する」
ユミエラさんが乙女ゲームのルールに沿った幸せを掴むことに先駆けて、まずは生きる場所の「ヒカユウ」世界が美しいことを1話丸々で伝えられる胆力。 - ダンジョン飯 8話「木苺/焼き肉」
ウンディーネ戦が好き。 - ゆびさきと恋々 2話「恋々へ」
雪ちゃんが「世界を広げる」ために自分の足で走っていく力強さから。 - ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する 3話「薄衣越しの剣舞」
衣装や小物への目くばせと、舞踏シーンの美しさに目を惹かれて。 - 月刊モー想科学 3話「も~、止まらない!? ミュージカル口調……!?」
とびっきりくだらないアニメ(褒め言葉)も~笑いすぎて! - 治癒魔法の間違った使い方 9話「終わりと始まり」
ローズ団長が好き。右目の傷、仲間と騒いだ家具の傷と、傷を使った演出から。 - 愚かな天使は悪魔と踊る 11話「Thanks」
阿久津さんが“悪魔”として倫理を踏み砕く人になり、「これは家族の問題だ」という無敵の文句を越えて一発ぶん殴ってくれたから。 - 外科医エリーゼ(話数選択なし)
話数全体を通したエリーゼの善性、後悔という一本の軸から。MAHOの傑作。 - バーテンダー 神のグラス 5話「始まりの一滴」
ケルビンさんが流せなかった枯れた涙の一滴。 - リンカイ! 12話「もがけ、未来へ!」
鐘が鳴りラインが解かれ、仲間がライバルに変わる瞬間! - HIGHSPEED Étoile 8話「あなたの走り」
それぞれの想い、脚を使ってサーキットを踊るプリマの誕生から。 - ATRI -My Dear Moments- 13話「時よ止まれ、おまえは美しい」
ファウストを引用した永遠に続く最期の一日。詩的でロマンチックなラストから。 - 異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~ 2話「よろしくね、じゅーる」
ご飯を食べる、呼ばれたら返事をする、敵は倒せる、あとは寝る! - モブから始まる探索英雄譚 7話「青春のオープンキャンパス」
サッカー部員「あぶなーーい!!!」 - 疑似ハーレム 7話「卒業」
二人だけのステージから。 - エグミレガシー 12話「END of the WORLD」
ボムさんの新たな門出を祝して。解釈のやり甲斐もありました。 - アクロトリップ(話数選択なし)
決められない……(軟弱) N県奈仁賀市で起こるハプニングのすべてが幸せ。 - ぷにるはかわいいスライム 8話「文化祭です!全員集合」
コタローくんの軽率なスーツ衣装に性癖を刺されたので……。 - やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中 4話「婚約相手が本気で口説いてくるので、対処方法がとにかく分かりません」
可愛さを願った人が可愛く描かれることの祝福。 - きのこいぬ 8話「きのこいぬのかいもの」
ほたるさん以外の人にも仄かな絶望はあって、きのこいぬ属と居れば少し安らげるところ。
おわりに
今年もたくさんのアニメを見られて幸せでした。2024年は感想を垂れ流すのも復活して、特に『ぽんのみち』『月刊モー想科学』『ATRI』『アーリャさん』『エグミレガシー』あたりはそれっぽいコトを書けた気がします。
一方、『終末トレインどこへ行く?』『となりの妖怪さん』『菜なれ花なれ』あたりは、自分なりには見たものの、まだまだポテンシャルを秘めている作品とも思います。他の人の目線も借りながら振り返りたいよ。
候補になった話数、ここには挙げなかった話数も、気持ち一つで入れ替わるほど確実に面白かったです。来年もきっとまた素晴らしいアニメに出会えますように。
※当サイトで使用している版権物の知的所有権はそれぞれの著作者・団体に帰属しております。著作権所有者様からの警告及び修正・撤去のご連絡があった場合は迅速に対処または削除致します。
*1:これは決して「不格好でいい/がいい」という意味ではありません。