2021夏アニメの感想

夏アニメも楽しかったね。
今回も随時更新のスタイルにしようと思います、読んでもらえたら嬉しいです。

<更新履歴> [11/14 書き終わりました]
2021/10/17 アクアトープ / 迷宮BC / ひぐらし卒
2021/10/18 うらみちお兄さん / たんもし
2021/10/21 不滅のあなたへ / ぼくリメ
2021/10/25 (終わりに おまけリンク)
2021/10/31 メイドラS / ヴァニタスの手記 / ジャヒー様
2021/11/14 かげきしょうじょ!! / マギレコ2nd / スパスタ

 

極工夫道

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 アニメ『極主夫道』の実写ミニドラマ。極主夫となり理想のその先へたどり着いた津田健次郎概念を眺める最高の5分間。本編は春アニメのとき視聴済みです。

 どんなにつらかった日でも見終わる頃には笑顔を取り戻していました。帰ってきたらどくだみ茶を淹れてくれる津田健次郎概念、居てほしい。人がゴミ分別してる横で何でもポイポイ捨てられたらそのうち怒ると思う、そのゴミ袋開けて分け直さなアカンなるんやで。

 続きは本編と合わせて10/7~ Netflixで全話公開済みです。見ましょう。

 

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X

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 あの人たらしが帰ってきた、ポジティブな気持ちになりたいとき応えてくれるアニメでした。1期の放送は1年前の春。ストーリー仕掛けというよりは大きな幸せのかたまりを接種するようなスタイルで観ていました。

 1話の穏やかな始まりがすごく気持ちよかったです。1期の登場人物+新メンバーとの顔合わせと異世界貴族の舞台見せ、そして破滅フラグを回避した後だからこそゆったりとした感覚が心地よくて。第一・第二王子夫妻と相まみえたら、普通ならドロドロしそうなものを、全然そんな気配もなくポカーンとしてるのがこのアニメらしいよね。リラックスしてずっと見ていたくなるような雰囲気でした。

 3~6話あたりのソラ様登場回・子供の頃エピソードなんて凄まじい勢いで幸せポイントが貯まった期間でした。特にお気に入りは4話。ソラ様の任務中で執事の格好も決めてるのに、無敵のカタリナ様の前だと段々投げやりな話し方になるのいいよね・・・ 本来正装を着るべきじゃない人が着るシチュが好き。特に4話は卓に着いてお互いを切り替えながら映す場面が多く、屈折した過去があるソラ様の心を対話で真正面からこじ開けてやるぜ! 的なパワーを感じたのも面白かったです。加えてイアン王子・セリーナ夫妻のラストもめちゃくちゃ良かった……「君があまりにも愛らしすぎて、」ですって! 前髪パッツン真面目王子が純愛に戸惑う姿もおいしい。しかもここからは3週連続でアラン様やキース様、イアン様を含めたかわいい子供時代も見られる回が続きホクホクでした。そんなことしていいんですか?

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 笑顔で楽に観ていたところ、第8話『お見合いしてしまった…』は毛色の違う回として飛び込んできました。口数も表情も乏しいニコル様の胸の内、同じ空間にいる相手との距離感が、アニメの力から語られる所にも非常に魅力が詰まった素晴らしい回でした。幾重にも出てくる花と壁のモチーフの裏で、同じように堅物のジンジャー様を相手にカタリナ様がお菓子で距離感をブチ破ってるのも何だか可笑しい。8話はフレイ様の活躍もすごく良かったよね…… 自分で生きる強さを持った人。Aパートで花は相手を拒絶する壁であり形式的だったものが、フレイ様と散歩する中で生き生きと咲き誇っていくのも圧巻でした。庭園の風景を男女で歩いていればおのずと ”いい雰囲気” にも見えそうなところを、そうではなく、徹底して個人と個人の空間に閉じて描かれていたのも嬉しかったです。お見合いの場にはそぐわずとも邪なものは引き算されて対等な人間として話し合えるようでした。

 夕暮れの場面もグッとドラマチックでした。単体の美しさも勿論のこと、2人を区切る太陽の光が、ここまでネガティブに使われていた壁のイメージをガラッと変えてくるようでした。貴方と私は結ばれる仲じゃないけれど、人生を変えるような言葉だって伝えられる、そんな友人としてのポジティブで暖かな線引きにも見えて。しかも一瞬だけ2人が同じ空間に入るんですよね、ニコル様は背中を向きながらも、きっとこの回で初めて妹以外に相手を見た瞬間なのだと思います。だからこそ尊敬できる相手と憚りなく握手ができる、高潔でいて何度見ても好きな場面です。

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 終盤はキース様3本立て。今まで幸せな顔で見ていた分、幽閉ENDとかは結構胸に刺さるものがありました。個人的にはジオルド様よりキース様を応援する方が多かったり。捜索のとき全員貴族らしくドレスで着飾っている中、ソラ様だけラフな格好に戻ってたの逆に目立っててなんだか嬉しかったです。救出後「子犬みたいな形になってくれれば」の台詞が従順なキース様に重なるようで……その後ほんとうに子犬になったときは笑っちゃいました。最終回は今まで穏やかな雰囲気で通っていたのもあり、FORTUNE LOVER2の予告は急転直下で1期の勢いが帰ってくるようでした。劇中作なのに本物のゲーム発表みたいにわくわくするよね。攻略対象でソラ様が出て来るのもアツかった、そこそこ出番もあったのにココからが本番なんだ……!って。おそらく魔法省入りするフレイ様もひょんなところで株が上がってしまったので出番が楽しみです。

 全体を通してとても楽しく観られました。登場人物がとにかく多い上さらに増えるので人数の捌き方に苦労してる印象はあったものの、でも全員集合するのが大体「あのカタリナ様から目を離しておけないわ!」なのが扱いが赤ちゃんと同じで笑っちゃう。このアニメから1話選べと言われたらすごく悩みます…… アニメとしては間違いなく8話なんだけど、心の赴くままだと4話のストーリーも捨てられない。皆はどこが好きだったでしょうか。

 

出会って5秒でバトル

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 「おう、いい加減に悪フザケはやめろよ!」
 見て良かったアニメ。火曜日のサブスク更新がある度にとりあえず真っ先に視聴してしまう不思議な引力がありました。0話時点ではあまり見るタイプじゃないのかなーと思いながら、しっかり毎週の楽しみになってたよね。タイトルと5秒要素はインパクトがあれば何でもよかったらしいよ。

 何と言っても1話はその古めかしさにびっくりしました。あえて昔のアニメっぽさを演出してるのかな…… と思って制作を辿ると元請は18年ぶりだそう、古めかしいじゃなくて本当に古い。共同制作を含めると『八男って、それはないでしょう!』に続くタイトルで、遡ると『ハヤテのごとく!』『絶対可憐チルドレン』など。私自身この時代のアニメは分からないのですが知ってる人は見ててピンと来る所もあるのかも。開幕から形式美のデスゲーム宣言されたらテンション上がっちゃうよね。

 基本は気楽に視聴できました、ヤバそうな人達が極悪顔でまだ見ぬ強敵立ちしてるとそれだけで面白いからズルい。3rdプログラムの緑リーダーがカッコイイお爺ちゃんしてて好きです。無敵になる熊切さんも筋の通った善人で好感、あの後ちゃんと腕くっついててよかった……。意外にも大神・黒岩さんペアが横暴ながら最後は急に可愛くていい人になってきました。黒岩さんが倒れる所もかなり悲しかったよね・・・ むしろ夢を砕いてゲームやりたい主人公の方が悪役なのでは。知略戦かどうかはともかく敵が出てきた時のこいつヤバそう! 感がビシビシ伝わってきて楽しかったです。特にヤバかったやつは2話の下半身丸出しおじさん、なぜか絶妙に気合が入っていて見てて本気でぞわぞわしました。不運にもほどがあるでしょ。。。

 

Sonny Boy

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 夏目慎吾監督オリジナルの青春群像劇。様々な他作品のテイストも取り入れつつ、底には一貫して誰かの決めたレールに抗うこと、自分自身で世界を切り開く青い力強さのある作品でした。SunnyじゃなくてSonny。特徴的な背景のスタジオPablo は『少女☆歌劇 レヴュー・スタァライト』を手掛けたことで有名。

 このアニメの世界観をイチから筋道付けていこうとすると非常に難解なSFになりそうです。その線で見るのも面白そうですが、しかし主張はもっと単純で、何となく観ているうちでも通じ合うところが見えてくる、というのが面白さの一側面だったかなと思います。なので意外にも肩の力を抜いて観ることが多かったです。取っ掛かりとして「この世界って何だろう?」「なにか法則があるらしいぞ」から始まり、そのフシギへ迫って考える事がかえってリアルを見つめ直させるような。複雑で人間味のある登場人物や、あるいは自身の青春模様へと向き合うことに転写させられるような感覚がありました。このあたりが理屈は分からないけど体感で分かる、的な口当たりの良さにも繋がっていたのかなと思います。

 1話を見た第一印象について、誤解を恐れながら書くと、これは学生作品のようだと感じました。もちろん下手だという意味では無くて。大きく3つに分けると、1つは抑圧の象徴、鬱憤、解放というテーマ性から。2つは背景人物ともに非常に美術的なデザインから。3つ目は真っ黒の空や傾いた学校などの大胆な演出面からです。特に3つ目については朝風が能力でガラスを割るシーンが印象的でした。こういった大仕掛けや題材はどちらかというと卒業制作やインディーズのアニメ作品でよく見る(言い換えると企業だと誰かに止められて角が丸くなっていく)気がするのですが、その青臭さなんかも含めて、随一の実力派たちが羽根を伸ばして思いっきりやるとこんなアニメになったというのも非常に面白いところでした。

 序盤のほうは学生による統治と弾劾、集団心理、仲間外れ外し…… といった場面でかなりウッとくることも多かったです。その渦中でも長良のいくじなさがリアルだったり、希のブレずに己を持ち続ける姿が印象的でした。強気で真っすぐ見透かすような視線が美しい。また各場面で「私はこう思ってるから次こうしよう」みたいな展開の説明語りがほぼ無く、人間の喋り言葉と仕草があるのみで、状況や心境はそこから推測するしかないというのも現実と同じ臨場感がありました。視聴者の立ち位置は神の目線ではなく当事者として漂流教室に投げ込まれているんでしょうね。

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 4話の猿野球回、さあこれをどうしたものか。ベラベラと捲し立てるキャップについて紐解くのは早々に諦めましたが、1話のキャップは愚かで暴走していたぶん、意外といい人かも…… な印象には落ち着きました。また現代アニメでこんな回をやってもいいんだと妙な安心感もあり。殺されたのは野球だ、殺されたのはあるべきだった信念だ、普通のアニメで猿野球回が許されないのは何が殺されているのか? とはいえ、本題は長良が能力を自覚した方だと思います。気弱な長良にも世界を切り替えてしまうほどの力がある。でも使い方だってわからないし、捉え方一つで別の力にも見える。集団でいると勝手に期待されたりガッカリされて出る杭は打たれるようなのも世知辛い・・・。

 6話の卒業を皮切りに集団心理のクビキからも解かれて、以降はさらにロックさと抽象度が増し、それぞれの形の自由を求める話に見えました。7話は塔の話、卒業の先に待ってるのは労働なんだね。バベルの塔は徒労のモチーフとして有名ですが、ビートニクという言葉はヒップホップ的な用語で、標準的な物語の価値の拒否…… あたりの意味合いだそうです。長良は決められたルールに逆らえるようになったみたい。またドン詰まりだった6話から反転して長良達には清々しい希望が見えるようで。逆に今までブレない道標だった希が立ち止まる姿には不安を覚えました。反転のモチーフが散りばめられた回だったかなと思います。

 8話は疫病と宗教。青い鳥よろしくキリストの宗教観*1のIFストーリーな感じもしました。始めから神様扱いで目立ってる少女と、その教えに服従しイヌに成り下がったために、少女は年相応の人間として死んでしまう。この回、アンチ恭順の展開が「神様に恭順であれ」と「レールの上の人生」を重ねてばってん書く危険弾スレスレのような気もして、ロックも来るところまで来た感あったのですがどうでしょう。ただ7話の二つ星少年にも続き、盲目・妄信的であることの咎、己の内側に閉じて一歩を踏み出さなかった末の悲劇、という姿勢が一貫していました。このふたり顔が長良くんと妙に似てるんですよね。犬と人間では指切りが出来なかったのに対して、希と長良は時計の針を合わせられる。そこはポジティブに思えたのですが・・・ やっぱり終わってしまった者の酷く悲しい回でした。ヤマビコさんにも幸せな終着点があってほしいなぁ。

 9話、ソウセイジ、双生児? 創世児? と気になり名前をググっていると『創生児』という有名ロックバンドの楽曲に行き当たり、元ネタこれっぽい~~と一人でちょっと嬉しくなってました。違ってたらめちゃくちゃ恥ずかしい……。少なくとも、訳わからない例え話してるときは何かしらの元ネタがありそうな予感、4話とかも何かあったのかもね。以前から出ている白衣の先生は、青少年の反抗や解放を謳った物語へ無粋に介入し捻じ曲げる大人、というイメージになってきました。強さと弱さの二面性を持つソウ・セイジは向かい合って戦い続けていなければならなかったのに……。9話で特に印象的だったのは瑞穂です。光線銃で弱い方の自分を切り捨てた片割れに、熊を捨て猫を抱いた瑞穂が噛みつくまで。弱肉強食に分かたれた世界で猫は弱い方の動物ですが、その弱さをこそ守り、ひいては自分の弱い部分をも受け入れた強さのようなものを感じて、心配性な猫の視線から見える瑞穂がなんだか頼もしく思えました。この先、愛する猫と離れ離れになった元の世界に戻る決意が出来たのも、この瞬間があればこそだった気がします。

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 10話のサブタイは「夏と修羅」こうなってくると由来当ても楽しくなってきます。宮沢賢治の詩集「春と修羅」はズバリな題名でした。空に昇っていくバスとか銀河鉄道の夜だったね。人のこころと傷に触れる回だったと思います。ここでも先生が介入して戦争を殺しに行く提案をしてきますが、まあハッピーな結末にはならないんでしょう。朝風くんは元々ニクめない奴な印象でしたが、心を読むチートスキルのおかげもあっていじらしさが満開でした。この回、初めて見たときは希についてあまりの呆気なさにひょっこり帰ってくるでしょ…… なんて思ったりしたのですが、取り返しの付かないことが起こってるよね。崖、銃、赤一色の景色と詭弁が通じないほどに危険のシグナルでいっぱいでした。死なない世界に慣れていた分、いざそれが訪れたときの唐突さ、英雄気取りで銃を握った人に突き付けられるような結末が冷酷で・・・ どうすんの、朝風くん。

 11話「少年と海」は、そのまんま「老人と海」でピッタリ。かなりお気に入りの回です。淡々とした作風で得ることと失うことが描かれていました。平和そうな雰囲気でのほほんと見てたら当たり前みたいに希の葬儀に進んで、ああ本当に死んだんだ…… と息をついた思い出。希を失い、だけどラジダニと再会できる。ラジダニの冒険譚に出るホームシックの世界の住人がおそらく老人サンチャゴ*2なのでしょうが、やっぱり史実とは違って、美化された世界への想いに囚われた滑稽な人として語られるのがいかにもこのアニメらしいなと思ったり。希を一話分を使ってじっくり弔ってもらえるのが、たとえコピーされた存在だろうと価値があったことの証明のようで、流した涙にとてもグッとくる回でした。だけどまだわからない、コンパスは磁石で回せば復活するし、イチかバチか希が生き返る可能性だってある。長良の目が希望に輝くのはこのアニメいち嬉しかった瞬間かもしれません。現実に戻れば再びラジダニを失い、猫を失い、記憶を、この世界を・・・とあらゆるものを失うにあたって、ならばこそ得るものがあるはずと前向きな期待感がある締めでした。

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 12話、かなり解釈に幅のあるラストだったと思います、なのであくまで一個人の感想として。現実はなんにも面白いことは起こらないし、灰色でつまらなく見えました。長良も漂流教室で決意を固めて変わったのに、結局は”若気の至り”で流されてしまうようで。現実に戻る前さらっとアキ先生はいなくなったと告げられたけど、あれだけ大戦犯をしておいて気付いたら消えてるって…… 大人って無責任です。そんな人に従う生き方を良しとした朝風には何も残らなかった、じゃあ自分で選んだ長良や瑞穂の方がエラいのかというとそんなことはなくて。カーテンの裏表をめくったりグラスを落として割ってみるのが最終回らしく今までを振り返るようでもあり、虚しく、どこかで後悔すら感じるように思いました。

 だけど少しだけ変わったのは長良が鳥を助けに行けるようになったこと。雛の命は厳密には長良が助けてはいないし、その実、希を巡った一連の出来事にも同じことが言えるのかもしれません*3。でもどちらにしても、そこに希がいる事が見ていてすごく嬉しかったんです。灰色の世界が続く中で、食べたいと言ってた苺のケーキだったり希の映る場面がどれも華やかで暖かくて。個人的には長良くんがコンパスを握って駆ける姿もかなりラブに溢れた青春の疾走に感じてて、本当かは分からないなりに、好きな人のため世界を変えるくらいの事はしてやったんだと思っています。少なくともその力があるのは向こうの世界で証明済みなわけです。だからこそ別人の希を前にするのが切ないけど、それ以上に彼女の在り方が変わっていないのがすごく明るく見えました。正しいと思うことを自分で決めて指針を持つことができる、それが好きな人に対して焦がれたもので、昔の長良が持っていなかったものでした*4。11話で約束した「友達になろう」も怖くて言えないし、救った命を預かる大人の仕草もとれないほどに坊やだけど、振り返った顔はとても雄弁で。対する世界は相変わらず巨大で簡単に夜が明けたりもしないけれど、雨は上がり、街に暖かな血が巡っていくようでした。ちっぽけでも確かに屈しない心とこの先の未来にとてもポジティブさが残るラストだったと感じています。

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 全体を通して。私の中では間違いなく素晴らしいアニメでした。もちろん全然拾えてる気がしないし難解だけど、素直に受け取れるところは感情のまま、気になったところは立ち止まってあれこれ考えるのも楽しかったなと振り返っています。ナイーブで超がつくほど青臭いストーリーには正直恥ずかしくなっちゃう時もあったんですが、このお話を子供の戯言だと腐るんじゃなく、ある程度共感を持って見られたのも良かったかなと思います。非常にリッチなアニメ体験でした。

 

精霊幻想記

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 リオさん早くお手紙書きな vs ラティーファちゃん悲しませたら許さないよ vs あんな真っすぐに告白する子にちゃんと誠意見せな

 始めの頃こそ愛されアニメの印象が強かったところ、特に王国へ戻るあたりからストーリーもどんどん気になって取り込まれたアニメでした。ミイラ取りがミイラになる。今期最終回を真っ先に見たのも精霊幻想記でした。望まないウェディングと略奪する主人公・・・とか来たらわくわくして正座で見ざるをえないよね。

 1話は雰囲気が可愛い割に世界からの悪意が強めだった印象が残っています。異世界王道に乗りながらも「前世の記憶を引き継いで無双」ではなく元の人格に負けてたり、俺強ラブコメするたび隠すこともなく憎しみを向けられるのは、ある意味で新鮮。暗く見えるところも多い中、それを補って余りあるほどガラスのような輝きと表情の良さが際立って見えました。お気に入りは2話のリオくんを連れて教室に入るところ。先生自身も飛び級で年端も無いのにさらに年下の拾った男の子をなんとか世話しなきゃいけない、身長差が窓枠に乗って背伸び感も伝わってくるようでした。全キャラ共通で笑うとき^^ってニッコリなるのも可愛くてめちゃ好き。子供リオさんが美しい逆光を落としながら「文字は学んだことがないので……」ってキリッとするのは、何?

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 各地で悪の人が出て来るのにも慣れた頃、時を置いて悪役と社会が先生を囚われの身にしていたのは、なんだか世界と話の辻褄が急に噛み合ってきた感じがしました。リオさんこんな世界に先生ほったらかして約束も守らず女の子と遊んでたってマジ? それはさておき、たった一通の手紙を焼こうとする ~ リオさんを追い出す一連のシーンは見ていてすごく力が入りました。旅をする間に一段と身長に差が付いたこと、数年ぶりのお茶の時間が心から楽しそうなところや、アルゴーは良い人と嘘をつくとき一瞬で顔を取り繕うところにもグッと来るものがありました。見た目は逆転されても大人として年下の子に心配をかけさせまいとするの本当に強い・・・ でもつらいよ・・・。個人的に高圧的な人を家族に入れて自分はこの先ずっと人形を演じるっていう展開がド地雷で、そのENDだけは許せなかったのもあり、いかにリオさんがラノベ主人公でも頼みの綱として祈る気持ちでいっぱいでした。もう責任取ってとか言わないから、とにかくあのヤベーやつの手中から救い出して・・・

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 リオさん手土産に連れてきた他の女に花嫁預けてどっか行ってるってマジ?? 先生にとって一番不安な時じゃん、そばにいて抱きしめてあげな・・・とも思いつつ、でも攫いに現れたときはストレートにうれしかったよね。11話引きの時点で既にガッツポーズが出てしまいました。ウエディング衣装の必殺カットもめちゃくちゃ良い、ドレスの裾は盛れば盛るほど可愛くなります。12話で印象的だったのは、攫うかどうかを最終判断するのが先生で、抱きしめる(つまづいて体を寄せる)のも先生からなところ。捉え方次第はあるとして私的にはここちょっと良いなーと思ったり。というのも今まで好きに思ってたのが2話の背伸びして男の子を守ってる感だったり、11話の本心を裏切ってまで年上として年下を守るプライドがあるところだったんです。そこに返される感情が、俺についてこい! 的な狼となった主人公の強さで塗り潰されるよりも、あくまで先生を上に見てくれていて、お互いの力関係が子供の頃からずっと守られているのが主導権にも現れているようで。作中で一番大切だったのはヒロインが魅力的である事と思うのもあり、実際先生のキャラクターは最後まで好きでいられました。まあ花嫁奪いに来るまでしたなら覚悟決めて一生を背負うくらいのこと言ってほしいなって気持ちもあるんだけどね・・・。リオさんは身一つで払いきれないほど罪を作り過ぎてしまったんだ、不意打ちでも書類に判押させて身を固めさせた方がいいんじゃないかな。

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 OP、登場人物がドコドコ出て来るところも何だか楽しい、それぞれ違う場所にいる関わりの無い人同士なぶん、視線も頭の高さもジグザグで1人1人が粒立って見えるのも面白いなと思ったり。EDの入りも楽しかったよね。毎話、ここでぶっこむの!? とか、今回良さげじゃない?みたいな。 あとyoutube公開の『セリア先生のわくわくまじかる教室』も最終回の後から見ました、本編で台詞には出せないけど、ってところを遠慮なく言えるのも気持ちいい。

 

チート薬師のスローライフ〜異世界に作ろうドラッグストア〜

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 癒しと笑顔があふれるアニメ、皆のこと大好きになっちゃいました。制作はEMTスクエアードで監督は『デンキ街の本屋さん』ぶりの監督タイトルです。また脚本は『ミュークルドリーミー』シリーズ担当の方でぶっ飛んだギャグはミュークル由来の成分かも。

 1話からずっと楽しくて。1話って結構どんなアニメなのか探るような気持ちで観ることも多いのですが、薬師はフェリスさん*5が出た半分くらいの所でもう全部ふき飛んで笑ってました。アニメに身をゆだねると言うんでしょうか、色々と解釈しに行こうと息を巻かなくても観てるだけで最高に幸せで居られるような。それも中身が無いとは真逆で、面白さもキャラクターの可愛さも詰め込まれた上でただ笑って観ていられる雰囲気が丁寧に用意されて、その視聴感はスローライフのテーマとも噛み合っている。というところが薬師の一番の魅力だったんじゃないでしょうか。

 スローライフものが2クール続くとどうしても『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』と比べたくなっちゃいます。スライムがアニメ的な美麗さ・演出に勝負所があって目の離せない傑作だったのに対して、薬師はより手近で親近感も湧きスローライフそのものの楽しさに焦点が当たっていたように思います。正直楽しすぎて「閉店の時間です」が来るたび泣きそうでした・・・。

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 というわけでほぼ頭空っぽで観る贅沢にあずかりつつ、ノエラちゃんの可愛さにメロメロにされつつ、一時期TLが明らかにザワついたときがありましたね。第7話の本音ストレート回です。私自身は笑って観られたし好きな回なのですが、個人の宗教観によるところは大きいかも。1話からミナちゃんを見てて可愛いと思う一方で、いつも家にいてフリルの服で家事をする、レイジさんにとって都合がいい存在だともちょっと思ってたんですよ。冷やかされたり頭に刃物を置かれて怒らない聖人が居るか……? みたいな。でもそういうものかな~とも思って見進めていました。そこに来たのが本音ストレート回だったので、ミナちゃんが家事マシーンじゃなくちゃんと意思のある人間なんだと分かったのが私はうれしかったです。ただ声のトーンが大迫力で笑いあり怖れありではあったんですが……。どうなんでしょう。

 11話の引きは完璧でした。「次回のお客様」でレイジさんにスポットが当たるところ。今まで筋肉モリモリになったり破茶滅茶に暴れ回った分、ここで初めて灰色の元の世界が顔を出して、そしてスローライフの何が楽しいの? 的な本来の楽しさに着地する感覚がたまらなく気持ちよかったです。嫌な現実*6から逃げて、お店屋さんを開き、薬は使うみんなに喜んでもらえて、得られた居場所には可愛い笑顔が溢れてる。これこそシンプルかつ求められていた究極のように思います。さらに最終回の醍醐味はもうひとつ、今まで登場した人たちが全員集合するのもやっぱり凄く嬉しかったです。第1話の閉店の合図でも3人で楽しかったのに、今はこんなに賑やかになって昔よりもっともっと楽しいんだ・・・。エジルくんはこっちに来て一緒に遊ぼうね。

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 のえLOVE

 

白い砂のアクアトープ

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 連続2クールなのにすごく気持ちよく終わってくれたよね。

 洒落っ気のあるP.A.WORKSお仕事アニメ。同じ系統のタイトルはいくつか浮かびますが、実は今まであんまり縁が無くてちゃんと見たのは初めてレベルかも。キャラクター原案は『Lapis Re:LiGHTs』と同じ方が担当、また監督をはじめ『色づく世界の明日から』のスタッフがほぼ再結集してるらしいよ。

 視聴前はそれなりに緊張してたのですが、全体的にも難解過ぎることはなく、ストーリー面はかなり見やすかった思いです。それ以上にインパクトがあったのが1話、お母さんへの連絡を無視して携帯の電源ブチ切るシーンが大好きで一気に掴まれました。個人的なツボ*7とは思うのですが、もう他人事として見れないというか。そういう訳で風花ちゃん自身が沖縄でどう過ごすかは私の中で1つ視聴軸になっていました。

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 また風景と生活芝居がやっぱり抜群です。坂道をくくるバイクで行くところとか何度見ても気持ちいいよね。水族館という響きから最初は「あ~沖縄行って水族館で働きたいわ~」とか思ってると、矢先に2話で館長代理から甘っちょろさを指摘される狙い撃ち感。思惑通りにしてやられました。

 沖縄、水族館と題材の見栄えの良さはもちろん、そこに住む人々や水槽の見せ方にも魅力に事欠きませんでした。そのひとつでくくるちゃんの自宅もかなり好きです。薄暗くて涼しそうで、沖縄に居候するのがこんな民家なら最高だなぁと思わされたり。居間に4人とかいる場面で、お婆ちゃんが台所に立ち、1テンポ遅れて風花ちゃんが手伝いに出て、くくるちゃんが別の向きに話しかけていて、視線の先はお爺ちゃんが椅子に座ってて…… みたいな足音の聞こえそうな生活感がたまらなく心地良かったです。4話でも一人早起きして余所余所しい人が寝坊できるまでに馴染んでいく描写が嬉しくて、ここを居場所とできることにすごく安心感がありました。

 それだけに5話「母の来訪」は相当ハードルが上がりました。恐れていた事件がついに起こってしまった・・・ それでもなお期待を上まわる素晴らしい回でした。この回、結局親が理解のある人だったとか、子供が親心を汲まない馬鹿者だったって話し方をされると一気に冷めてたと思うんです。だからまずは前半の、侵略者 vs 全力で守ってくれる沖縄の人たちの図を面白くやってくれたのがすごく嬉しかったです。くくるちゃんが梅酒で丸め込むところとか楽しかったよね、姑にも強そう。

 お母さんへの敵扱いも済ませた上で、だんだん型通りの悪者じゃないことも分かってくる感。そして娘をしっかり見て認めてくれる姿勢が非常に好印象でした。お母さんはいわゆる"理解のある"人間には見えなかったんです。親としての仕事も不十分で手一杯な人だけど、娘の姿や梅酒の美味しさなんかを自分の目で見て判断しようとできる。そこでいざ分からないものに直面したとき、娘自身あやふやで逃避じみた本心に親の立場から承認 / 否定をつけるのではなくて、あくまで肩を並べて見送ってくれる。一連を通した来訪者の扱いが非常に丁寧で、また満たされる思いでした。「赤い長靴、結構似合ってたね」の台詞も本当に良い。自分の見た範囲だから言える確かな言葉だし、赤い靴を履くアイドルの昔も、長靴で仕事をする今もまとめて肯定してくれる。布団の同じ目線で話してくれるのも娘を一人の人間として対等に接してくれるようでした。立派なお母さん出来てるよ・・・。

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 6話「スイーツラプソディ」は単話で一番好きな回です。うどんちゃんの性格そのものが好きなのもあるけど、6話は特に定食屋での身のこなしが光っていました。手前にいるうどんちゃんの手が喋ってたり小皿を2枚だしてちょっと裏返して見るとか、動きから職人感を出せるところはアニメの髄を感じます。動きの良さはさらにお話に乗って、うどんちゃんだって始めからこなれてた訳じゃない秀才タイプな印象にも繋がって見えました。知らないことを色々工夫していく楽しさはここから広がっていて、苦労があっても試行錯誤を続けられて、最終的にかき氷で皆を笑顔にできる。うどんちゃんの性格が表れる以上にそれを魅力として押し上げる素晴らしい回でした。

 9話「刺客のシンデレラ」はなかなかパンチの効いた回でした。だけど争ったよりも、刺客が最後に消えて行った道が思いのほかつらい末路に見えたのが印象に残っています。前進してるつもりだけど、道は捻じ曲がって退場の方を向き、光を背に、最後の一線を越える・・・ と、本人の意思とは裏腹にあまり良い未来が待ってるようには思えませんでした。あの人2クール目で再登場あるのかな。

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 このあたりからだんだん、閉館はもう避けられないっぽいのと、くくるちゃんの危うさも顔を出してくるようでした。こういう心理的なところのグラデーションが本当に豊かだよね。引き替えにじゃないけど風花ちゃんがメキメキ強くなっていく。タッチプールでも病院でも、風花ちゃんが仕事してるのを見るたび何だかこみ上げてくるものがありました。一度でも家族から逃げた人が一生申し訳なさそうに振る舞わずとも、自分の果たすことをして、落ち込んだくくるちゃんを勇気づけられるくらい居場所があるようで。それがすごく嬉しかったです。

 最終回ひとまずのラストも非常に収まりがよかったです。今まで何度も見てきたはずの館内も魚がいないとこんなに寂しく見えるんだ・・・。うみやんが扉を閉める、全員でがまがまから退出すると終わりの仕草がキッチリしていて、寂しい中にも清涼感がある印象でした。打ち上げのとき夏凛さんが「やっぱり飼育員目指す!」って言うのすごい嬉しかった、こういうお酒持った大人ポジションの人って現役の主人公たちに夢を託す…… 的な立ち回りが多いし、夏凛さんだって物語のサブじゃなく当事者なんだと希望があるようでした。

 飛行機のゲートをくぐって、これはいよいよ1クールで終わるんじゃ・・・と思ったら。本当によかった、風花ちゃんがBIGになりすぎて1話の頃の電源ブチ切る人に共感してたのが遠く離れて行ってしまうような、それ以上にここまで強くなったことに泣きそうでした。オタクは勝手に後見人づらする。たとえ最初のきっかけが逃げでもそれだけ沖縄で得たものは大きかったし、その一番は海咲野くくるなんだね・・・。

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 縦通しの話として、がまがまは生き物を守る場所、命が終わり再生する場所として描かれていました。3話の水のレンズ越しに妊婦さんが映るシーンは特に象徴的です。アニメ視聴前こそあまり神秘的が過ぎるとついて行けなくなりそうでしたが、不思議パワーの演出は抑え目で、かつ最期を看取る仕事などもじっくりと人の目線から描かれていたところが良かったです*8。生まれ直しのイメージはアニメ全体としても。守ろうとしたがまがまを、アイドルの夢を、ありもの全部崩して再スタートを切るのはすごいインパクトでした。この1クール目を前日譚としてではなく生まれ直しと見られるのは、やっぱり無くした物のどれもが鮮明に生きて描かれていたからこそと感じます。迷って失敗もするし結果ダメなことだって沢山あるんだけど、それらも沖縄の人々の暖かさで抱いて新しく還してくれるような、寄せては返す手触りがとても好きです。

 OPも好き、カット単位で言うときりがないけどやっぱりサビ部分は圧巻でした。近景から遠くにグッと視線が通り抜けるような奥行きとスケール感、青さと太陽光が舞台のイメージにピッタリで、これを見ると「今からアクアトープが始まる!」と気持ちが切り替わる思いでした。こういう見ただけで心を動かすような力強い一枚があるのって本当にすごいよね。

 

ひぐらしのなく頃に卒

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 唯一無二のアニメでした。ジャンルは・・・これは何なんでしょう。真剣に面白いのと馬鹿馬鹿しいのを層にしてホラーと可愛さとバトルで固めて話題性のテーブルに出したような。なんにしても大成功だったと思います、面白かった。

 あの時もあの時も、ぜんぶ沙都子のお芝居だったんだね・・・。業のときは突拍子も無く見えたシーンでも実はこういう意図があって、と言われると見え方も変わり、当時の思い出を引き出しながら納得するような思いでした。業はふんわり見ていながらも児童相談所のシーンとか(今度こそ行けるかも!)と盛り上がった覚えがあって、その分薄ら笑いを浮かべる沙都子に裏切られるような気持ちもありました。

 急に変顔したわけじゃなかったんだ、こういう裏があったんだ。と感心した次の瞬間に沙都子が地面クリーナーやるようなオモシロが来るからもうおかしくなりそうでした。納得させたいのか笑わせたいのか、正直めちゃくちゃ笑ってました。このアニメでは業との答え合わせ以上に、もっと短い間隔でも予想を裏切られ続けていた気がします。滅茶苦茶ながらこのあたりをスベらずに貫けるのはやっぱり手腕なんだろうね。

 無印からの声優続投は売りのひとつでしたが、特に祟騙し/明し編での教室の1シーンは声の演技にも驚きました。沙都子が圭一の振りかぶった腕に恐怖する(フリをする)ところ、業のときは素人耳ながらあんまり上手くは聞こえなかったんです。そういうものかなと飲み下したところを、卒で欠片ごしに見ると本当に猫を被った一幕だったという。改めて凄みというか、アニメで表現できることの幅を感じさせられました。

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 基本的に推理とかはせず後から答えを当てはめる感覚で見ていました。むしろ推理は無理なんじゃないかな・・・。偶然にも業の感想のとき気になった、台所の踏み台が卒で2つに増えたのを見つけてちょっと面白かったです。梨花が自殺するために登る絞首台のようなモチーフだったのが、卒終盤になると両方登って凶器を持つんですね。むしろこれで初めて視線の高さが合って仲直りに繋がる…… かもしれないけど、2人を揃えるのが ”かがむ” とか ”階段” じゃなく絞首台って。

 14,15話で笑わない人はいないでしょ。笑ってられる状況ではないしスプラッターだけど。オモシロでもお互い打ち解けてきてイイ話・・・ と自分を順応させながら沙都子のサンライズ立ち・2分割バトルスタートが流れてきたときは匙をぶん投げて笑ってました。でもコレなんですよね、求めていたものは。殴り合いの回があまりにも目立つけど同じ感覚は本編中もずっと描かれていて、締めに総決算が来たような思いでもあります。純粋に面白いアニメと笑えるアニメを同時視聴してるような感覚は他には無いなあと思ったり。

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 OP、あの発光しながらぶつかり合うシーンが本当に解釈一致だったって誰が予想するんだろう。かと思うと2期OPの追う沙都子、1期の逃げる梨花で鬼ごっこ続きになるのが面白かったり。こういう切り返し/切り戻しがあるよね。インパクトゆえにブッ飛んだところばかり話題にしてしまうけど、全体を通して本当にアニメの運びが巧かったです。ボールを投げられてはこちらがリアクションを返してまんまと乗せられるような。楽しい視聴が出来た名作でした。

 

うらみちお兄さん

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 見やすさダントツ1位のアニメでした。しんどい時、暗いアニメに落ち込んだ後、アニメを見る気にならない時、ライブ後の余韻でなんもしたくない時、あらゆる状況下で視聴可能。このアニメのこと清涼飲料水かなにかと勘違いしてます。制作はスタジオブランで、監督・シリーズ構成は『ハッピーシュガーライフ』でのコンビ。

 キャラクターが良いとやっぱり面白いんですよね。超強力な声優さんのパワーが肝だったのもありつつ、何だかんだ皆のこと好きになってる自分がいます。うらみちさんが子供の笑顔を悪しからず思ってたりね。うさお君くまお君もかなり好き、12話の過去回ではまた一段と株が上がった印象です。池照お兄さんは王子様御用達の中の人で好きなのでズル。詩乃お姉さんは・・・うっ、心に傷が。個人的には木角さんも出るたびに楽しくてすごい好きでした、外から見てる分にはね。

 こういうTwitter漫画発祥のアニメとなると、普段から深夜アニメを見る人にとっては結構敬遠しがちというか、元々ターゲット層ではないというか。身構えるところもありつつ『うらみちお兄さん』はかなり良かったんじゃないかなと感じています。会話劇に一点特化した短編で、間延びさせることもなく、原作の特性とうまく付き合ったアニメ化になっている印象がありました。もちろん作劇の美しさや武器を全部使って戦うのとは方向を異にしますが、こういったテレビを凝視してなくてもいいような、現代人の主流な視聴スタイルに合ったアニメは今後どんどん増えていくんじゃないかなと思います。

 考えすぎとは思うけど、EDで吊り輪が映るところが見ててちょっと面白かったです。体操のお兄さんのシンボルであり、労働へ向かうときの電車のつり革のようでもあって、もっとネガティブな何かの輪にも見える。トリプルミーニングなのかもしれない。

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迷宮ブラックカンパニー

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 もっと大きな権力を得るぞ!

 コメディ&フリーダムで笑顔で見られました。何でもやっていいアニメの何でもやっていい瞬間が嫌いじゃない。制作はSILVER LINK. で夏アニメは『ジャヒー様はくじけない!』と色々被ってます。

 すごく主人公への中央集権型アニメだった印象です。カリスマ性のある二ノ宮さんが旗を持って大きいことをしたり、しっぺ返しを食らってはタダで起きないところが面白くて楽に見ていました。それだけに二ノ宮役のcv小西克幸さんの演技が屋台骨なほどに存在感がありました。『デカダンス』とか『アルテ』のときの役も好きだったけど、こういうクズ主人公っぽいよく通る笑い声もめちゃくちゃ似合うよね。

 クズっぽい・・・と思ったら意外と良い人で、気を許そうとしたらやっぱり私利私欲のカタマリだ! って二転三転させられる思いでした。一貫して欲に忠実なのがむしろスカッとするポイントでもあったり。しかも欲の原動力についても最終回で回収されたりとほったらかしな部分はほとんど無く、アニメ全体の奔放さとは裏腹に意外にもきっちりした印象もありました。悪い事しても丁寧に全部返ってくるのもストレスフリー。

冒険者の砦にたどりついたキンジたち。しかし、そこでゾンビの襲撃に遭い、キンジはパンツのみを残してどこかに消えてしまう。

 もーなんでもやってよさそう。ジャヒー様とも同じですが、節度さえ守られていれば部分的か1話くらいお祭りできるアニメは嫌いじゃないです。実際9話やED変更が良かったかは分からないけど、11話EDみたいにいつもと違うことも思い付きひとつで出来そうで。そういう雰囲気は私の気楽な視聴スタイルには合っていました。

 お気に入りはやっぱり10話かなあ。1~3話くらいにも「今期も面白いアニメがあるぞ」と掴まれる雰囲気がありました。一番好きなのは・・・・・・ワニベさん。EDも途中までワニベさんが歌ってると思ってました。

 

ジャヒー様はくじけない!

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 「どぅるじ。」
 このアニメが連続2クールあるのうれしい。制作はSILVER.LINK、監督もおなじみで『すのはら荘の管理人さん』『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』など。サブタイトルの出し方とか色合いが『政宗くんのリベンジ』っぽいよね。

 なんでこんなに馴染むんでしょう、気楽に笑顔で見ていました。アニメに安定という言葉をあまり使いたくないですがジャヒー様は白ご飯のようにいつまでも見ていられる居心地を感じます。キャラクターデザインがほんとうに可愛い、他作品ではプリヤ、防振りなども担当されていて個人的に好きな方です。またcv大空直美さんの存在感がやっぱりものすごいよね。オーラのある役者さんが真ん中に一本入ってると、それだけで雰囲気を全部持って行くようなインパクトがあります。”ひらがな”をそのまま台詞に出せるような言い回し…… めちゃめちゃかわいい。

 基本的にジャヒー様がかわいいのを見ていました。笑うときに目尻が上がるの好き。子供モードのサイズ感も良くて、小ささが強調されるぶん背景との差で豆粒くらいに見えるときもあったり。ズンって立ってるときの姿、アルマジロみたい。たまーに可愛いより可哀そうが上回るときもあるけど、本当に心細いときは周りが助けてくれるのがすごくいいよね、風邪を引いて一人で寝込むとき看病に来てくれる回が大好きです。

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 大家さんも好き、めちゃくちゃいい人だよね。何だかんだ言って守ってくれるし、お酒が入って「我のこと好き!?」「好き~~!!」って抱き合うところ。お酒は人の本性を暴くものだからね……。サルワさんも不憫だけど銭湯の回を含めて大好きです。高いシャンプーはマジで高いから勝手にだくだく使うのは犯罪だよ。

 

ヴァニタスの手記

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 EDのここめちゃめちゃ好き。
 美しいパリの街並みと薄汚れたスチームパンクの間にエロスが染み出す世界観。制作はボンズ。こういったお話は原作の物語が良くてアニメ化にはいくつもハードルがあるはずなのに、その二枚三枚上を行くような素晴らしい1期でした。監督は歴代の物語シリーズを手掛けている方で、所々シャフトっぽい演出が入ったのはそういうことみたい。感想にあたっては公の場で関係性が~… の話をどこまでするかの問題が、あるね。

 まず『ヴァニタスの手記』は人によって好き嫌いがハッキリ住み分けされるタイプだなと思います。私自身はキャーキャー言いながら大好きに視聴できたのですが、例えば3話ドミニクさんの登場回なんかはヒヤっとする思いがありました。いきなり出てきた女のドミニクさんがノエさんに首輪付けて引っ張っていくんですよね*9、しかもヴァニタスを縛って顔に傷をつける・・・キズモノにする。登場は最悪の印象だったところ、見ていくうちにドミニクさんが本当にいい人だって分かってくるんですよね。またジャンヌも受け取る側に印象が強く左右される人物に思います。公式カプとしてヴァニタスと漫才する姿を見るのも美味しいし、一方で露出のある服と性的な記号で異性を攫っていく存在にも見えるかも。初めの頃はこのあたりをどう見ようか悩んだりもしましたが、今はかなり好意的に視聴できてる気がします*10。かつその後のカバーもばっちりで、特に7話くらい、ドミニクさんもジャンヌをきちんと見定めた上で「いい人だ」と逆にがっかりするのもすごく良かったです。生真面目で天然で可愛い人はやっぱり嫌いになれないし、ドミニクさんも嫉妬で人を貶めない器量ある人なのが見えて、臭みを残さない丁寧さにもグッと印象を底上げされました。キャラクターの好き嫌いはどちらへ転ぶにしても、男性的・女性的な部分を思い切り強調した演出が拍車をかけるようで、アニメの見せ所としても1つ大きな魅力になっていたと思います。

 ここまでは前置き。ノエさんとヴァニタスがめっっちゃかわいい。5話を見ましたか? キラキラの天蓋付きベッドにまるまるころころした謎の生きものが動いてて脳天を撃ち抜かれました。それで真っ赤な王子様マント着て殺陣もやるんだからヤバいよね……。ちょくちょくデフォルメがゆるく挟まるのもあって、決めのシーンの振れ幅にも輪をかけてグッときました。特にヴァニタスのシーンは笑う表情のどこかに寂しさが覗いてる感じが絶妙。最初は俺様系に見えたところを、おっとこの人は……? と思ってる内に好きなタイプが「自分のことを好きにならなさそうな人」って言われたらそれはもう自己嫌悪の塊じゃん・・・って。だから自暴自棄気味になったり人を傷つけないよう遠ざけたとき無垢なノエさんが寄り添ってくれたのが滅茶苦茶嬉しかったです。10話マッドサイエンティストに我慢してへらへらしてるときもノエさんがバシッと守ってくれるのもすっごい嬉しかった。こう普段はノエさんが好奇心で振り回すけど、ヴァニタスがヘラったら真っすぐな瞳で理解しようとしてくれる、お互い馬鹿笑いもする・・・ 的なのずっと見ていたいよ。

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 最終回でちょっとだけヴァニタスがノエさんに隙を見せてくれるんですよね。見てて背筋が伸びる。最後になっても相変わらず一人で出て行こうとしたり、2人の関わりにも変化が無いように見えて、だけどほんの少しだけ前進した証のようで。しかもここで終わりじゃなく分割2クールに繋げるENDなのがさらなる発展を予感させるようですごく気持ちのいい幕引きに見えました。最終話は11話から続いてジャンヌとのデートがあって、でもノエさんに危機がありそうな時は放り出して駆けつけてくれるの、この時点ではジャンヌよりもノエさんを選ぶってことだよね。もうジャンヌとはお別れって訳じゃないと思うけど、最後は2人に帰ってくる話になったのが私は嬉しかったです。OPもEDも2人を映してるアニメだもんね。

 2クール目は早速2022年1月から。超たのしみです。正直ルスヴン卿から刻まれた約束とか一抹以上の不安分子も感じるのですが首を長くして待つことにします。頼むぞ・・・。

 

小林さん家のメイドラゴンS

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 毎話圧倒的におもしろかったです。制作はもちろん京都アニメーション。1期は2017年放送であらゆる意味で待ち望まれていたタイトルでした。OP、第1話ともここにありという貫禄を感じずにいられなかったです。間違いなく年間トップクラスのアニメでした。

 テーマに価値観の差を挙げてガッツリやるぞという意思はかなり感じました。2話は性別、3話は大人と子供…… と様々な角度から差を見せて、違う価値観をどう擦り合わせられるのか、あるいは衝突するかといった目線は常に底を流れていました。だけど難しいテーマを分析していくような視聴ではなく、決して重くならないテンポと楽しすぎる日常風景の中に、しっとり価値観の話も入りこんでくる。という雰囲気が見ていてすごく心地よかった思いです。

 魅力を挙げるとキリが無い作品なので好きだったところの一部を拾うと、5話トールとエルマの話す特別な仲にはグッと来るものがありました。「お互いのことがわかって ソリが合わないから 自然と殺し合いに」って関係、まれにあるよね。老夫婦や熟年漫才コンビのような、相手を深く知ったために自分にとって無視できない性質も見えていがみ合う感じ。それが殺し合うほどでも同じテーブルに着いていつまでも一緒に居られる。そういう仲の人がいるってある意味羨ましいし、かけがえのないものだと思っています。話を聞いた小林さんがまあまあ分かってないのもいいよね、当人同士にしか理解できない領域があるみたいで。Aパートで2人はやっぱり食い違うんだけど、ここで喧嘩のために立ち上がるからこそ、壁(手前の小林さん)を越えて目線を合わせられるのが素敵。お互いの価値観をぶつけ合って共存をする実演のような1シーンでした。共存の形はさらにBパートへ続き、今度はトールが自ら礼をした後イルルの頭を下げさせるんですよね。違う価値観を前にしたとき、主張を折らずぶつけ合うだけでなく、折れて受け入れることでも共存を探ることができる。捉え方の豊かさやそれを同じトールが出来ていることにも人物としての奥行きを感じた回でした。

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 ストーリーラインの良さだけでなく、演技・撮影の魅力も目をつぶって見るにはもったいない作品でした。例えば6話*11 3本立て構成の各ラストは特に好きな場面で、人間とドラゴンが同じ空間にそっと収まっていくような暖かい質感がありました。途中、ファフニールさんと話す滝谷さんの立ち位置なんかもすごく冴えてましたね。二次元的には同じ四角に入るけど三次元では別の空間として区切られてるみたいな。並んでゲームする姿も語る以上の距離感の近さが表れていて大好きなシーンです。同様のラストの映し方は1,2組目に続き、3組目の才川・カンナさんペアでも用いられます。だけど前と違って2人が合流する(かもしれない)のはまだ先の話で、主役に映るのは今の2人よりも少し遠い空の方なのが…… あまりにも美しい。ちなみに6話の小林さん・トール組はサブ役なものの、チラっとだけ映る食卓の風景にも凄まじいパワーがあるよね。1週間のうち放送されてる30分以外も語られないだけでこうやって過ごしてるでしょって。

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 もう少し演技に寄ったところだと、ただの一瞬にこそ魅力を込めるようなアクションも魅力的でした。・・・ちょっと言葉で言うのは難しいですが。例えば8話で翔太くんがドアを開ける場面があって、入るときのほんのわずかな隙間にすごくかわいい表情が見えたりするんですよね。1アクションの中に2つも3つも美味しいところがあるというか。手数の多さもさることながら、「ドアを開ける」ってじゃあどうやってやろう、「今すぐ見せたい」ものがあるならどんな動きが出来るだろう、ってところを最高に気持ちのいい形として見せつけられるのが堪らなかったです。もちろんドアは一例に過ぎませんが、仕草の細部に宿るものがドラマ全体で表現の豊かさを生んでいたことは間違いなかったと思います。

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 実は、1話を見たときは不安もありました。というのも風の噂で原作はバトルが増えていく展開らしく、戦闘メインのアニメに変わるのかなと当時は思ったり。でも杞憂でしたね。今までの細やかな生活描写や雰囲気を壊すどころかむしろパワーアップしたようにすら思いました。一方で日常を続けていく中、この監督絶対バトルシーンやりたいんだろうな~~ ってうずうずが伝わってくる感覚も確かでした。途中で挟まるトール・エルマの本音バトルもある意味では息抜きとばかりの全力さ。そして最終回のラスト、小林さんを追いかけるところでもう我慢できねえ!と言わんばかりにビーム出すんですよ。あの場面が完璧で思わず膝を打ちました。好き勝手やる宴会感も楽しすぎる上に、ごちゃ混ぜをやるのは異種族交流のテーマでもあって、色んな差を描いてきたアニメで最後に残ってる差は物語とその外側なんですよ。あの桜の下で楽しんでいたのは『小林さん家のメイドラゴン』のキャラに閉じた話ではなく、EDクレジットに載っている人も確かに手を取って好き勝手やってるし、そうなってくると見ている人だって例外じゃなくなる。アニメも人間も混ぜて楽しくなってるのがものすごく嬉しくて。……というところまで想像したり。これ以上ないほど最高にハッピーなエンドを迎えられました。

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探偵はもう、死んでいる。

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 最後のほう一生同衾の話してる。
 制作は成長株のENGI『宇崎ちゃんは遊びたい!』『究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲーだったら』に続く現代的なスタイルが特徴です。中でもたんもしは歴代で監督を担当した人が交代になって初挑戦作に近いかも。

 掴みはすごく良かったです。1話のときは随分都合のいいヒロインが出てきたと思ったのですが、白い花嫁衣裳はそのまま死に装束だったんですね。最期に花を持たせた演出だったというのはこのアニメがヒロイン一強の話(なのに死ぬ)という頭出しも兼ねてかなりハマっていたなと感じます。2~4話の頃とか本当にもう出ないんだ…… って思ったよね。1話は飛行機での戦闘も大見得を切ったワンシーンでした。あの放送の後ENGIのホームページに行くと早速そのシーンが看板で出て来るようになってたんですよ、かわいいね。

 顔がアップになる場面がとても多かったです。キャラクターの緻密な美しさが1つの勝負所だったのでここは見せたい物への意識が噛み合って見えました。3,4話だと瞳を見せることとも相まってアイドルの顔の良さがじっくり見える機会に。シナリオには賛否両論あると思いますが、全体を通してキャラクターを映えさせることに関しては間違いなく一線級だったと感じます。OPも良かったよね、歌ともピッタリの清涼感で、動かすことが楽しくなるメリハリと地平線の移動は往年の名作をも思い出させるようです。これできたら気持ちいいなあ。

 より広い層に見てもらえるように内容を易しくすることと推理モノの相性はなかなか難しいところがあった気もします。コメディなら簡単という訳ではないんだけどね。伏線はあるものの難しさを極力排除しようとすると後付けで全部語ることになるし、かつ説明不足に見えるところもあり。このあたりの塩加減ってどうしても経験がものをいうところなのかな*12。とはいえ原作のやりたそうなことを目いっぱいやれる楽しさがあり、自分なりに気楽な視聴ができました。今後にも非常に期待が高まるところです。

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ぼくたちのリメイク

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 世間では ”創作” や ”クリエイター” なんてカッコいい字面だけが浮きがちです。だけどこのアニメではかなり踏み込んだところまで描写があり、確かな面白さを感じた瞬間はいくつもあったアニメでした。前置きしておくと今回は特に主観の大きい感想なので、一個人のものと笑って読んでね。

 キービジュアル時点ではあんまり見るタイプじゃないなと思いつつ、とりあえず見た1話で掴まれたアニメでした。結局、私は誰かが誰かの喜ぶ顔を想いながらモノを作ったり、ごはんを作ったり、その途中で挫折もあるけど最後は報われる…… みたいな話が好きなんです。それに近い流れが決まったのは3話、初作品の上映会のところ。はじめての作品なんて大抵はボロボロで酷評されるのがオチなのに大健闘だったのは純粋に嬉しかったです。

 だけど本当に良かったのはその後、貫之くんたちが「悔しい」って言ってくれるんですよ。ここが何よりも嬉しかった。たとえ健闘でも散々な結果でも、人によっては関係なしに笑ってて次の打ち上げの方が大事なんて人もいるじゃないですか。空元気とかでもなく素で。上映会にしても「たかが課題なんだから」と思う人にとって悔しいなんてセリフ出るはずがないんです。もちろんそういう割り切りだって賢い方法だし上手く使っていくものとは分かるのですが、なにか人に喜んでもらうものをチームで、それなりに時間もかけて頑張ったつもりが、大失敗しても皆そっちのけで笑ってる、あっ 張り切ってたのは自分だけだったんだ・・・ みたいなの、物凄くツラいし自分が情けないんですよね。だから3話の一幕は期待を越えて理想を見たような気持ちでした。正直ここの嬉しさがアニメ1本分賄ってお釣りがくるほどだったので、後はもう多少おっぱいが出ようと大富豪の気持ちでいられたのが私的には一番大きかったです。*13

 ぜってーなんとかする! って普通なら歯の浮くような決め台詞なのに、このアニメに限って妙にハマってたよね。制作はぜってーなんとかしなきゃいけない役割だからです、それこそどんな裏の手を使っても。見られる範囲が広いぶん制作に出来ることなんて付け焼き刃的な対処に留まるんですね。仕事ニンゲンとしての恭也さんはそれなりに的確で、本当にこんな人が八面六臂してくれたら超助かるなという思いでした。文化祭のステージとか、挫けた人を立ち直らせるために具体的な数字で励ましにかかって、ああいう風に言われたら確かにやる気出るなぁ・・・と思ったり。一方で人物としての恭也さんはなかなか難しかったです。良くも悪くも ”制作” にピッタリな人物すぎて、本筋のモノへの直接的な関わりが見えにくかった感じはありました。制作を足掛かりに将来脚本がやりたい、監督として自分の作りたいものを実現したい…… とかはよく聞く話です*14。このあたりが欠けていると、ともすれば才気ある人の輪に入っていたいだけの人物に見えるかもしれません。

 8話あたり、恐ろしくダークな時間でしたね……。バグと仕様変更の嵐、極めた人はあの時間こそ最高で生を実感するらしいけど。遊ぶ人に楽しんでもらいたかった思いを曲げて完成を目指すのは地獄ですよ。打上げパーティの「僕はたまらない幸福感に包まれていた。」は流石に嘘でしょ??? ってなりましたね、あんなボロボロでやりたいことが出来ず終わったらお通夜まったなしだよ。そりゃあ制作としては完成こそ100%のゴールだろうけど・・・。その後「本当に?」と問いかけるのは気持ちを代弁してくれるようでした。これも後に回収されますが、このへん寮メンバーが悪い意味で恭也さんに靡いていくのもいやーな感じに描かれていました。もう悔しいとは言わないんだね・・・。

 終盤11話、僕が優秀過ぎたばっかりに……! って頭を抱える場面は相当シュールでした。ただなんか、じゃあ全部あなたがやればいいじゃんって言われたり、あの人はガチ勢だから…… ってお菓子くれてバツが悪そうに離れられてしまうとか、何となく身に覚えがある人はいるんじゃないでしょうか。開発エンジンの話の実例っぽさといい、なんだか祈りのアニメな気がしてきました。現実で叶わなかったことは物語で叶えればいい。

 過去に戻る / 戻らない の話をする前に。このアニメでは好きと安定は天秤にかけられていました。安定しない職業を志す人にとって実家稼業や嫁入りは呪いの言葉です。作中でも課題をやりながらバイトで稼ぎ、貫之くんの実家から覚悟を問われる様子は真摯に描かれていました。こういう人が夢半ばで安定に飲み込まれるのを見るのは本当に悲しいし、どうしようもないんですよね*15。特にプラチナ世代として日の目をみると分かってる人達だから尚更です。でもこれは物語だから時間を戻す魔法が使える、甘くて残酷な安定に一矢を報いて別の世界を選び直すことが出来る・・・ というエッセンスはどこかにあった気がしています。"ぼく"の人生だって潰された人の可能性だってここでならリメイクが効く。ただし、そもそも作中では潰した発端が恭也さんだし、乗り切れない主人公をして自分が自分がのお話になったのはあまり得意ではなかったです。現世なりに熱量を取り戻した奥さんを支えると約束して自分は過去に熱量を求めて去ることも。またいかなるテーマがあったとしても、生まれた子供への責任だけは蔑ろにしてはいけなかった思いです。

 そういうわけで恭也さんに仕事ニンゲン以上の思いは薄いけど、貫之くんはすごくいい人間味だったよね。自分の中でベストになった物はもう触りたくないのも共感するし、上を見てすごい人がいればあっさり挫ける弱さも。またシノアキが明らかに優遇されて全部持ちのヒロインだった印象なのもあり、奈々子ちゃんの天才に負けない奮闘みたいなのももっと見たかった思いです。一つ屋根の物語で突出した人に劣等感持ちながらそれでも…… みたいなお話が好き。全体的にはラブコメ・業界モノ・タイムスリップと属性のジャングルで、人によって見るポイントも変わってくるのかなと思います。想像以上に向き合うアニメになったので気持ちを整理するのも楽しかったです、見てよかった。

 

不滅のあなたへ(13~20話)

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 継続20話のジャナンダ島編。前期は途中とはいえトップレベルのアニメで期待も高まりました。1~12話までの感想はこちらから。

anime197166.hatenablog.com

 マーチのコミカルさがあるヤノメ編、物語に花があるタクナハ編と続いた分、ジャナンダ島編では人の生死へがっつり焦点を合わせてくる話でした。物語全体のコンセプトに改めて立ち返ってきたような感じもします。

 今回の短編主人公トナリは最初かなり信用ならない人に見えました。この島・・・ 人死にが紙よりも軽いとんでもない場所で生きるには悪知恵も必要とは分かるものの。前半こそちゃっかり者で嘘くさい演技が多かったけど、後半につれグッと複雑な表情を見せて思わず惹き込まれていました。またフシの言葉遣いや幼稚にスレてる態度も着々と育ってる感じ、このアニメ分かってても毎回おお…!ってなるよね。

 今まで1人の死が重く描かれていただけあって、闘技場で大量にサクサク死んでいくのはどうにもやるせない気持ちでした。それだけに島の罪人、トナリの父親、ハヤセと並んで "死んだ方がいい人間" というのは常に引き合いに出されていた気がします。特にハヤセはあのとき殺しておかないからこうなった感が何度もありました。5話でトドメを刺しておけば、パロナが弓を外していなければ、報復も無かったんだよね…… 本当にきっつい。一方のフシは殺す度胸なんて無く、むしろどんどん死に怯えて人を遠ざけていくように見えました。「痛いことだから良くないと思う」ように、精神年齢が幼いときって漠然と死が怖くなる瞬間があるよね。刺激的すぎる絵面だけど感情自体は誰もが考えるものだったと思います。

 怒りがあれば人を殺せるのか、ゾンビなら躊躇いは無いのか。各人が死に向けた信念もなぞりつつ凄まじく重いテーマを何度も叩くようでした。普段ならいくらか見直すのですがゾンビのところは流石にリピートする気になれないです……。だけど目を背けたくなる、べったり貼りついて何度も見せられる死にどうやったら自分で折り合いをつけられるのか、がこの物語全体の狙いだったようにも思います。フシが闘技場で一瞬、もっと強いものをコピーしてなきゃ意味ない!って考えるんですよね*16。それって生命の死に後付けで意味を与えることだし、最後にハヤセを殺しておけば便利グッズとして使えたわけで、そういう折り合いの付け方だってあったはずです。でもそうしない。結局ジャナンダ島では生きた人間を殺めることは無かったし、良かったと思う反面、仕留めなかったせいで絶対ハヤセは今後も邪魔しにくるでしょ…… とも。*17

 ちょっと前後しますが、19話フシがトナリから剣を取り上げる場面は 5話パロナさんの自刃シーンの再演にも見えました。殺さないために刃を抑えたのが今度は殺すために剣を取る、昔は無我夢中だったのも今はすごい含蓄ある表情をするようになったよね……。続く20話でも、寝ている人に最後の贈り物をする、つらいときに笑う、と今までを振り返るようでもありました。

 20話「老婆ピオランは90歳近い、川魚を獲ることが得意だ」「火をおこせフシー!」がめちゃくちゃパワフルで笑いました。再会したときの笑顔も大好き。ピオランが嬉しかった分そこから認知症の話が始まるのは本当に……、生生しく描く筆の力があるだけエグい題材が本当にしんどいですよね。人は忘れられたとき2度目の死を迎えるというように、記憶が不確かになるピオランが生きながら抜け落ちていく感覚、とは実感の伴う思いでした。ただ観察者を通して暗に死んだ人が楽園にいると分かったのにはまだ救いがあったかな。一番の希望だったのはフシが自由に生きたピオランと手紙を見て、いつか自分も満足と思える日が来るのかな、と思えるところ。今まで散々見せつけられた死と恐怖にこういう形の折り合いだってつけられるわけじゃないですか。ハヤセは死こそ自由を与えるものだと信じて振る舞ってたけど、その横で生きた老婆が自由を謳歌して全うしたんだから何だか可笑しいよね。

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 テーマが激重だったのは確かですが、どの話数もアニメとして非常に完成度が高く見応えのある作品でした。2021年秋の続編も楽しみです。流石にジャナンダ島よりは気楽に見られたらいいなあ。

 

ラブライブ!スーパースター!!

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 1シーンごとに面白さが詰め込まれた、圧倒的に密度のあるアニメでした。毎話本当に楽しくて、かつこれだけの量を24分でやりきるんだと終わるたびに感心してました。1期は”結び”をテーマに5人が集まるまで、そして主人公が主人公になるまでの物語でもあったと思います。

 まずは表現の引き出しの多さ。舞台っぽい大げさなリアクションが次から次に出るのを見るだけでも楽しかったです。かのんちゃんの驚く時どひゃ~~って身を引くのとか好き。感情描写の豊かさは長めに取れる担当回とも合わせて、キャラクターってこうやって描くんだぜ、とお手本を見せられている感じすらありました。1期が終わった今でも5人全員の印象は強力に残っています。十分に余裕があるタイトルって稀に「よく動くけど無駄」な力みが見えたりしますが、スパスタではどの仕草も余すことなく魅力へ繋がっていたのも良かったです。

 アニメとしてテンポの心地良さも凄まじかったです。全編を通してだけど、分かりやすいのは5話の中盤サニーパッションの練習へ着いていくところかな。画像で、かのんちゃんが喋る→すみれちゃんムッとする→ちーちゃん目パチ→すみれちゃん横向く→2人が反応したら→下から可可ちゃんがドーン! と視線がまったく飽きないです。ただの会話パートが魔法のように面白く、しかもその楽しそうな雰囲気が5話時点のちーちゃんの置いてけぼり感を増すようでもあって*18。これもほんの一例だけど、そういう仕掛けにとことん事欠かなかった印象です。

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 みんなは誰が好き? ちーちゃんが好き。好きという以上に"この人には勝てない"という屈服に近い気持ちかもしれないです。そういうわけで6話は一番好きな回でした。なりたい自分であろうと目標を立てて自ら進んで行ける人ってだけですごく強い。視聴者目線だとちーちゃんは紛れもなく強い子だけど、本人の中のスーパースターは昔からずっとかのんちゃんで、追い越した存在じゃなく並び立ちたい存在なのが良いよね。その上で実はかのんちゃんも昔から支えられていたと会って伝えてくれるのがうれしくて。「〇〇になりたい」と1人で頑張れるのって、裏を返すと「〇〇にならなければいけない」と思い詰めてしまうものでもあると思います。ちーちゃんの場合は「ダンスで結果を出してかのんちゃんの力になれると自分で思えるようになりたい」、それがストイックであればあるほど退学届も真実味を帯びて見えました。そんな状態の人に走り寄って言葉をかけてくれるかのんちゃんはまさに今も昔も変わらないヒーローでした。

 そして度肝を抜かれたのは本当に優勝して転科届を出すところ。1人で頑張ったことは”無駄じゃない”どころか、真正面からスクールアイドルに入るための切符になる。お話的には1人じゃダメでも皆となら…… って展開になるものだと思ってました。そこを飛び越えて、しかも誰から言われた訳でもない約束を守って、自力でつかみ取った資格を持って堂々としていられる。凄まじいパワーでした。昔は気弱な子だった回想も相まって、この6話以降、ちーちゃんが自信に裏打ちされた行動を取るたび嬉しくて仕方ない体にさせられてしまいました。地面に描く〇が回を重ねるごとに増えてデッカくなるのも大好き。

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 11話について、これは12話を見た後でバチッと繋がった回になりました。かつて1人で勝利を掴んだちーちゃんがかのんちゃんを1人でも歌えるようにするお話。感動できる回でしたが、初見のときは疑問もあって、自分が強くなるのは良くても同じことを他人に要求するのは押しつけなんじゃないかとも思っていました。でも今ならそれが澁谷かのんを、Liella!を勝たせるための方法でもあったんだと理解できます。11話で5つ繋がった失敗のたこ焼きが出てきて、可可ちゃんは食べれば同じと言うけれど、ちーちゃんはこれじゃダメだって言うんですよね。"繋がり"はキーワードで、5人で一緒に歌ってゴールするのが順当な流れと思っていました、そこで終わってもよかったはずです。だけど12話で芽生えた勝利を目指すとなると足りない視点があって、「あの時のかのんちゃんを取り戻すことができたら、誰にも負けないって。」のように勝ちを見据えた心の強さが無いと勝てませんでした。その意識はちーちゃんだけが既に織り込み済みで、11話時点で自分なりの治療法として行動まで起こしてる。自身がダンスで勝ちをもぎ取った者だから考えられることだし、優勝を誓ったかのんちゃんにかける言葉も「私は最初からそのつもり」だったんです。すごい・・・ 唯一わだかまってた部分も解消されて完璧でした。

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 1期はかのんちゃんの存在感が大きかったです。問題事もかのんちゃんがカリスマを発揮して解決することが多く、「みんなで一緒に」「全員がソロ」のイメージとは違い、明確な一人の主役として立っている印象がありました。ちょっと気になって歴代のポスターを比べてみると、スパスタだけかのんちゃん一人が周りより大きく真ん中で目立っているのが見えると思います。6,11話の独演の話もあり、みんなで纏まって一緒に頑張るという一枚岩だけでなく、だからこそ反対の一人でいることにもスポットを当てて進む話になるのかなと、続編の展開も期待しています。スーパースターって手の届かない唯一の存在…… みたいな感じするもんね。またこのシリーズの”大好き”に強くエールを送る姿勢もたまらなく好きなので、そのあたりも注目して2期を見たいなと思います。その前に虹ヶ咲の2期かな、楽しみが尽きません。

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マギアレコード 魔法少女☆まどかマギカ外伝 2nd SEASON‐覚醒前夜‐

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 2期、というよりも純粋な続き。言うまでもなく芸術的でカロリー高めな作品だけど、そういうものこそ構え過ぎないよう楽しく観ていました。ちなみに1期の最終回(13話)はいま配信で見ると完全版に差し替えられているので、当時黒塗りが気になった人はこの機会に。

 シリーズには詳しくないので個人の印象ですが、超絶の14話をはじめ1つ1つの場面に物凄い密度があるのは確かなのに、全体を通したペース配分にはなかなか難しさがあったかなと思います。この感覚は1期のときとまったく同じで、確かにマギレコってこういうアニメだったよね・・・ と勘を取り戻すようでした。キャラクター&ウワサの単位があった1期と違って大筋の事件を追う話となり、映画館とかで一繋ぎに視聴するスタイルも合ってるのかなと思ったり。前作からかなり時間が空いたのもどうしても影響はあった気がします。

 ドキっとしたのは20話「何も知らないじゃない」、やちよさん周りの話は共感しやすくて入り込めました。フェリシアとさなちゃんを抱いて叱るシーンとか本当にお母さんしてる。それだけに過保護で子供の意思を抑えつけるような態度を取ってしまうのもむず痒い気持ちでした。フェリシアが自分の気持ちを第一にして跳ねっ返るのとは反対に、さなちゃんの ”いないもの” だった身上から素直に受け入れてしまうところもなんかクるよね・・・。親の籠の中で求められる良い子で居続けるような、その先にあるのはきっとまた別の不自由だよ。そんなやちよさんが使命感に満ちた顔で「鶴野のことは私がなんとかする、私が誰よりもあの子をよく知っている」なんて言うから、それは絶対無理なやつじゃん…… って。キレーションランドが鶴野ちゃんにとってもう頑張れない人の場所なら、辣腕のやちよさんは逃避先まで押しかけて説教しに来るお母さんだよね。だけど間違っても反省できるところ、弱さを肯定するいろはちゃんとも手を取ってやり直しができるところに救いがあって、やちよさんを人間的な魅力ある人として視聴できました。独善的に守ろうとする姿はマミさんにも重なるのかも。ところでやちよさん、いろはちゃんの消息を辿ってるときさらっとGPS使ってたよね・・・ やっぱりヤバい人かもしれない。

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 未完なので何とも言えないですが、鶴野ちゃんへのリトライ、いろはちゃんの生まれ直しも含めて、魔法少女そのものをやり直す雰囲気があるのかなぁと感じています。まどマギの魔法少女といえば1度そうなったら魔女になるまで戦い続ける運命で、マギレコも既に輪の中には入ってるのですが、繋がりの力を使って魔法少女の在り方を新しく塗り替えようとするような。灯花ちゃんの計画も手段こそ違っても目的は似たもので、世界中から魔法少女を消すラストとはまた違った結末になるのかなと想像しています。

 アクションについては見事の一言でした*19。影を裂くような細かさは特徴で、最近の線数の多さを極めたような画作りには流行りも感じました。流線形って言うんでしょうか、動きはたぶん水を描くときのエッセンスに通じるものがあるんじゃないかと思います。また3Dを合わせた場面も圧巻でした。

 3rdは年末放送。正直なところ制作スケジュールが破綻してるタイトルではありますが、なんとか見届けたい思いです。

 

かげきしょうじょ!!

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 夏アニメ覇権の筆頭でした。毎話どこをとっても面白く、時に宝塚という舞台の苛烈さ、それを覆いつくすだけの優しさと楽しさを持ち合わせたアニメでした。原作はけっこう異色の掲載歴*20を辿りますが一応少女漫画といっていいはず。そのテイストもあってかかなりエグい場面なんかもありつつ、登場人物を大切にしてくれる後腐れの無さもピカイチでした。同じように、いかにもギスギスしそうな環境と実際の人々の明るさ、定員数のある厳しさとギャグ調の楽しさ・・・といったバランスが絶妙で、ドキドキしつつも心地よい地点で見事に釣り合っていたのがひとつ大きな面白さだったと感じます。

 そのバランスを信じるまでの3話あたりはかなり腹を括って見る気でいました。キツい話題もツボを押さえてくるから入り込んじゃうんだけどね。聖先輩の出る場面も相まって、これはいよいよ昼ドラを始める用意ができたと覚悟をキめてました*21。実際、山田さんの痩せる話が出たときは(お願いだから過食嘔吐になるのだけはやめてね……)と祈った5話にひしがれて頭を抱えたり。

 だけど序盤で最もうれしかったのも5話でした。大人たちの徳が高すぎるよ……。小野寺先生の熱弁にめちゃくちゃ泣きました。たとえば落ち込んだ人に向けて「目指した場所と違ってもいいよ、曲がり道した先で別の未来になっても幸せならそれが一番だよ。」って語る優しさも好きだけど、かげきではそうじゃなく、「この紅華が目指すに値する舞台なんだ、あなたにはその資格があるんだ!」って背中を押してくれるのがたまらなく嬉しい。小野寺先生はこの厳しい世界に住み続けている人物で、そんな人から輝けるあなたに送る言葉として何よりも誠実で愛が籠っていました。力強く手振りで伝えるのにも感極まってしまって。この回をきっかけにアニメの印象も一段と変わってきました。

 5話は外せないのがもうひとつ、さらさちゃんが一度見たロミオの真似をする場面です。その場の誰もが魅了されるのは演出である以上に、聴いた瞬間、確かにハッとさせられたんです。この声は本当に同じ人が出してるの……?って。声で出来ることの凄みとも同時に、渡辺さらさというスター性、主役足りえる人間だという怖ろしさにも似た自覚を刻まれた瞬間でした。予科生たちはこの人間を相手に競わなきゃいけない。

 6話は渡辺さらさの才覚がより浮き彫りになった回。中でもそれを見た先生から「トップにはなれない」と告げられるのに一心地ついてしまう思いがありました。さらさちゃんのする完コピって何事でも最も早く上達する方法です。何かを上手くなりたいと思ったときの近道は既に上手い人たちを真似て自分でやってみること、これは私個人の信条でもあったりします。ただし舞台が紅華となれば話は別です。紅華は上手くなればいいのではなく、明確に勝ち取るべき役・トップスターの座がある、一番になる必要がある場所だからです。人から学ぶ方法は上位1%になるためには最良でも、トップになることからは最も遠い手段かもしれない。紅華の入学者という特権階級ゆえの壁は、次回の歌舞伎の型の話、オーディションの演技にも脈々と続いて感じます。

 7話も面白かったです。まず配役的に男役のさらさちゃん・女役の奈良田さん、の役回りが徹底されてるのに笑ってました。さらさちゃんが日を浴びて人々の真ん中で挨拶をする奥で、奈良田さんは菓子折りを出してじっ・・・と正座で我慢した笑いを浮かべるのがものすごく象徴的でヒャーって言ったり。おもちゃを貰って喜ぶさらさちゃんと価値の分からない奈良田さんとか。笑える上に、7話はさらさちゃんが決して男の助六になれないお話でもあって、どれだけこの回の中で男役としてハマって見えたとしても届かない憧れがある、と舞台を見つめる涙にも一層深みを増して見えました。

 帰りの場面も良い、特に最後の握手の場面がすごく良いよね。暁也さんとさらさちゃんが並ぶと昔も今もさらさちゃんの方が背高いじゃん!って思うのもあるけど*22、暁也さんから言葉を貰うときは遠近で背の高さが曖昧になって、最後は対等な高さで握手ができるところ。斜めに入る新幹線の稜線がすごくいい仕事をしています。2人の間にビミョ~……に距離感があって遠く映るところも。

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 8話「薫の夏」は本当に美しく鮮烈な回でした。男役になればスカートを履けないから今のうちに履いておくんだ、なんて甘酸っぱ過ぎて胸がギューッ……としてしまいます。半袖の私服が毎回違うの、夏の1日を惜しむようにまだまだ着たい服が沢山あったと思うんです。だけどそれは捨てなければならないことも、自身が紅華乙女になることも、他の誰でもない自分の意思で進む姿が苦しくも本当にカッコいい。そして日傘を捨てて甲子園のテレビに噛りつくところは息を忘れました。美しい人へ手向けるエールとしてこれ以上嬉しいこと無いよ……。ラストの貼り紙でも不意を突かれてまた泣きました。一番ロマンチックだった違う未来がありえた場所で送るメッセージ。「好きだったって言ってあげてもいい」の台詞といっしょに、過ぎ行くバスに乗らない、夢から降りた世界の2人が映るのが本当に……。恋をする夏は過去になっても、2人がそれぞれの輝きを目指し続ける限り、その先でいつかまた別の形で出会える。その時、もしかしたら今こんな生活をしてたかもしれないねって茶化し合える日が来るなら。どれほど素敵だろうと思います。

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 9話は双子回、「ふたりのジュリエット」っていう存在し得ないサブタイトルからして波乱です。予科生・本科生含めかなりいい雰囲気(でいてくれる)ので、改めて順列の付けられる世界で生きるリアルな感情の吐露が見える回でした。ここでもベテラン先生の徳が高い・・・ 逆に、出来た人間でなければこの世界で年齢を重ねられていないのかもね。
 10話、実際の宝塚でも100周年記念大運動会を2014年にやってたんだって。宝塚は知らなくてもジャニーズ大運動会で知ってる人は多いかも。話をちょっと先取りして、続くオーディションではさらさちゃんが勝つわけですが、10話でも観客の求める演技をできるようになってるんですね。それは歌舞伎の型のコピーとは違って、7話の暁也さんの台詞も借りると「お客様をどれだけ喜ばせるかが役者の覚悟」を実践しているともいえます。当人にとって一大事の勝敗について、萌えがあったから、過去回想をしたから、に加えて話数を渡り丁寧に丁寧に積み上げられてるのがすごく良いよね。

 11話からはロミジュリの審査です、まずは何と言っても劇中劇が圧巻でした。アニメーションの七つ道具をフルに使い、場を盛り上げた頂点で声の演技が花開く。このゾクッとする感覚は他では味わえない思いでした。山田さんの演技と回想もめちゃくちゃいい、娘役として愛されるに足る素質を確かに持ってる子だよね…… そんな人に周りが蹴落とすじゃなく真心で接してくれるのが本当にうれしい。山田さんが5話の奈良田さんを「初めから綺麗な人」と跳ね除けたときから転じて「奈良っちみたいにはなれないけど」と舞台に臨むのもグッと来ました。そして杉本さんのティボルト、あれを見たとき杉本さんが勝つと思ったんです。勝って然るべきという願いだったかもしれません、仮想敵を置いたりと勝てるだけの理由も揃っていました。

 この完璧に見えた演技に、渡辺さらさはどうすれば対抗できるかというのが12話後半でした。ここの回想の煌三郎さんがさ・・・ 暁也さんを脅してまでさらさちゃんと関係を繋ぎ止めておくのが最初微妙にわからなくて。16代目を継ぐなら彼女の一人でも持っておけ的な意味かとも思ったけどそうじゃないよね。とことん酷い想像もできてしまうけれど、きっと煌三郎さんなりにさらさちゃんの歌舞伎大好きな気持ちの受け皿を用意して応援したいが故の行動だと信じたいです。10話の大運動会で煌三郎さんは歌劇の世界の演技をしたさらさちゃんを見てないんですよね。歌舞伎への想いはさらさちゃん自身まだ持ち続けているし、”なれない”助六になれる暁也さんへの恨みは演技にも生かされます。もし、これから花道ではない銀橋を渡るようになった姿を煌三郎さんが見たら、きっと歌舞伎に繋いでおいてあげる仄暗い優しさも別の形になるんじゃないかな。

 捩じれきった回想が終わって現れるさらさちゃんの笑顔にはグッと胸を掴まれるようでした。普段明るい子の裏に暗い部分が覗くといつも背筋が伸びます、しかも演劇をする人というのもあってなおさら。第1話からどんどん渡辺さらさという存在に惹きこまれていくんですよね。それは奈良田さんの視線とも同じかもしれないし、紛れもなくスターになれる資質の1つでもあります。

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 そして13話が本当にいい……。厳しさと楽しさが薄氷の上にある物語を、繊細に、かつこれほどポジティブに終えられるのが予想を遥かに上回った最終回でした。杉本さんにたっぷり時間を使ってくれたのが本当に良かった。人前で泣くのってなんか屈辱だよね・・・。”萌え”で雷が走るのは完全にギャグなんだけど、シビアでしんみりな雰囲気だけでなく最後には笑って観られるのが、アニメ全体でも拠り所以上の大きな魅力だったと感じています。繊細さは他にも、合格を見て喜ばないさらさちゃんの表情や、必死で射止めた舞台が意外にも些事扱いされるところも。薫さんの「私ロミオになれなかった、でもおめでとう彩!」も大好き…… また泣かされました。このあたりも含めて、苛烈さを見せつけたあとに重箱の隅をつつくような後腐れがまったく無いんですよね。

 何よりも驚いたのがラストの集合写真です。先に通常EDの話をすると、あれは美しさとともに恐ろしいものにも見えました。銀橋がスターだけを輝かせるものなら、クレジットに名前が載る登場人物はアニメで言うところの銀橋ポジションで、飾り立てるように顔の無いモブも一緒に描かれています。だけどさらさちゃん達もまた銀橋を目指す存在、一様に整列される姿がどうしようもなく厳しい審美の前に立たされる感覚をおぼえました。アニメにおいて顔を塗りつぶす行為はときに洒落にならない意味を持ちます。ともすれば回を重ねて脱落者が出るたびに顔が無いまま消えてもおかしくない・・・ と恐怖していたEDが、一転して全員の顔が映るのを最後に持ってくるサプライズ! 完璧でした。仮にも原作未完の話を、これほどのポジティブさで終えられたことを喜ばずにいられません。*23

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 OPのことも少しだけ。1つ印象的だったのは日常と舞台上での色味の使い分けです。少女漫画らしく丸い暖かな感じと、スポットライト下の鋭利な感じ。こういうのはどちらかというと漫画を描くときの十八番な気もしますが、アニメとしてもキリッと雰囲気を切り替えてくれる要素でした。優しさと厳しさの二面がありどちらにも真摯なこのアニメならではの見せ方だったと思います。

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 全体を通して、大部分は笑える話だったのがとても大きかったです。もしも強さと美しさだけの世界でもボロボロになりながら好きで見てたと思うけど、内容のリッチさ以上に楽しく軽快に観られました。一方で扱われる話題には全然遠慮してくれない切れ味もあって、見得を切った後始末をつける漏れの無さ、優しさが包んでくれるところにも心を動かされるお話でした。大好きなアニメです。

 

RE-MAIN

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 振り返ってみれば満足度の高い、右肩上がりな印象があるアニメでした。監督は『TIGER & BUNNY』の脚本で有名になった方で、今作は監督・シリーズ構成・脚本・音響…… と兼任していてかなり独自性の高いタイトル。ちなみに秋アニメは『テスラノート』の原作脚本をしてるらしいよ。

 マイナースポーツ作品も数ある中、『RE-MAIN』は1話で水球の見せ場が無いのが少し予想外でした。それどころか4話で小学生と戦ってボロボロに敗ける以外、最終話直前までまともに試合すら出来ない。その分人間ドラマの方に重きを置かれて、雌伏の時を越えた11話はミナトくんの内面が変わりアニメそのものの流れも変わるような渾身の回でした。試合に対するその思いが誰よりも身に染みてるのは、たぶんキャプテンなんだろうね。

 人間を見せることもあり、1話は特に水球やらないよ宣言をしたミナトくんの親の反応を覗う一瞬に鋭さが光って見えました。子供目線での家庭内って世界のすべてだったりするし、親の期待に沿えるかどうかを最優先で気にするのが子供の所作らしくエグかったなと思います。外見と中身のチグハグさは声の演技も印象的でした。コンテンツ的に声優さんを目立たせるための演出・セリフ語りを使った進行が多かったので、ここの視線と間で作る演技はビビッと来た瞬間でした。

 山南学園 水球やる動機がろくでもない部。最初はミナトくんに対して女と22万で釣られる主人公ってまじ??? と思ってたけど、部員が集まるごとに、野球から逃げて、打算で、いじめを断れなくて…… と集団レベルでのなにか輪郭が見えてきました。全員やばそう。ここから個別回もすごく楽しみになりながら観ていました。特に牛窓くん回とかいい意味で予想を裏切られて爽快でした、前向きでめっちゃ良い子じゃん・・・。

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 8話からは暗雲の時代・・・ スポーツものでいざこざをするのは定番だけど、それにしたってこの放送後は1週間をやきもきしながら過ごしました。8話に限らずだけど、リメインでは家族がとても心強くてうれしい存在でした。ミナトくんの場合は重苦しい場面が続く中でも、お兄ちゃんがつらいときは家族も一緒につらくなり、そばにいて痛みを分け合える後ろ盾であってくれるのが、見ている側ですら最終ラインの安心感がありました。仲間の写真を割って関係にもヒビが入るシーンがありますが、もうひとつ1話の入学式でも家族と写真を撮ろうしてます。ただしその時は失敗して撮れずじまい。もしも同じ棚に家族の写真もあってその全てを壊したかと思うと・・・怖いよ。苦しい時だけじゃなく、11話でお兄ちゃんが大一番に挑戦するときは家族も自分の取り組むものに向き合うのも、保護者・血縁がある以上の繋がりを感じました*24

 家族でいうとキャプテンの話は凄く刺さりました。寂しい様子が序盤のチラ見せからずっと気になって、明らかになるたびに本人の純粋さが分かっていくような。初登場のチャラ男ぶりが強く当時こそ受け入れがたい人って思ってたけど、今見ると始めからすごく良い人だよね。今期トップクラスで印象が手のひら返しされた人でした。やっとのことで迎えた試合、一番カッコいい瞬間を一番見て欲しかった人に見てもらえるのがもう嬉しくて。。。このアニメで泣かされると思ってなかったです。

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 12話は曙學館との試合、アニメ全体の爽快さも決定付けた素晴らしい回でした。ミナトくんファミリーが駆けつけてくれるのめちゃくちゃ嬉しかったよね。正直なところ俺戦エンドで収まると思っていたので予想外ではありました。というのも懸念があり、チーム戦で明らかに力の釣り合ってない相手と戦うのって、足を引っ張る人にとって本当に肩身が狭いんですよね。実際マッチョたちが並ぶ中で牛窓くんの線の細さも浮いていて…… と思ってたところへ、あのラストシュート! 掛け値なしに気持ちよかったです。一見やらされてる感だったハンズアップも活きていたし、今までの積み重ねが報われたような気持ちで。良かったね・・・。加えて12話は観客席との一体感も大きかったです。ベタな盛り上げ方ではありますが負け試合確定の曙學館を相手に、いけるかも…? ああ惜しい! ってハラハラしたのはおそらく皆と一緒だと思います。ミナトくんの変わり様にもびっくりでした、チョコ食べてくれるだけでこんなに嬉しいなんて。変化自体は11話時点で分かってはいるんだけど、やっぱり8話が強烈だったぶん頭に補正がかかってる感覚があります。あのミナトくんが妹と肩並べて吹奏楽のこと聞いてくれてるよ・・・。車のシーン、最後は家族に帰って、ずっと罪人だったお母さんを赦してくれるところも本当に良かったです。運転席に座ってるのはお父さんなんだよね。支えられるだけじゃなく、ミナトくんから発信して家族の傷跡に還元すること、「楽しくやってるよ」が言葉以上の力を持って安心させてくれる見事な着地でした。

 冒頭では "右肩上がり" なんて言ったけど、後から見返すほどに納得できる面白さもありました。栄太郎さんがミナトくんを「コイツ」呼びしたのとか、ミナトくんが本当にそう呼びたくなる傲慢な人と分かった今では見方が変わってきたり。ジャージの文字で「自分を越える」が一度却下され「変化」になったのが、それが過去のミナトくんのスタイルを指して囚われたまま提案した言葉でもあるようで。話の運び方自体は至ってシンプルだと思いますが、意外なほど緻密さがある印象も受けました。夏アニメだと比較的隠れがちなのかな…… ですが、間違いなく見届けて良かったアニメでした。

 

終わりに

 夏アニメは肩の力を抜いて見られるアニメが多かった気がします。同じくしてビッグタイトルも並ぶなか、特にメイドラとかげきしょうじょ!! は毎話どこを取っても異常におもしろく頭一つ抜けていた感覚がありますね。そこに限らず、癒しも美しさも笑いも揃ったすごく幸せ度が高いクールだった印象です。

<10/25 追記>
 おまけ記事を作ったのでよければこっちも見てね。

anime197166.hatenablog.com

 感想は個人のもので決めつけるものではありません。各人の思ったことが何より尊重されるものと思っています。特に今期だとサニボ、ひぐらし、僕リメあたりは様々な見方があるんじゃないでしょうか。色んな感想も見てみたいです。

 夏アニメも本当に楽しい時間を過ごせました。コメント等も本当にうれしいです、コメント欄に残るのが嫌という方は非表示としますので書き添え下さい。

 以上です!

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*1:ざっくりイメージだと、キリストは最初は人々に紛れて気付かれないけど実は神様だった、人々は神様を信じ教えに従って、キリストは人から離れて行く・・・的な。ズレてたらごめんなさい

*2:漁師であるサンチャゴは魚が釣れなくても、せっかくかかったカジキが台無しになっても、誇りを失わずかつて見た勇ましいライオンの夢を見る…… という感じの人物

*3:長良は別の可能性の現実に戻ることを選んだだけで、希を生き返らせたヒーローじゃないのかもしれない。長良が居なくてもこの世界の希は友達とお喋りしてたのかもしれない・・・とも思ったり

*4:1話の長良くんお母さんにどうでもいい事まで永遠にLINEして決めてもらうような人だったんですね・・・ 見違えるようです

*5:ジラルさんの彼女の人

*6:唯一になる現実シーンも明暗を使ったあいまいで最小限の見せ方をされていて、過酷になりすぎなかったのも良かったです

*7:たとえば目が覚めたら帰れないくらい遠い場所にいて、不在着信が貯まってて、苦しい言い訳を考えて・・・ って悪夢をいまだに見るくらいトラウマがあるシチュです。本人が来たり警察呼ばれたりしそうで。その裏返しか胸がぞくぞくする感覚がありました。

*8:それだけに10話の不思議パワー頼みして空回るくくるちゃんが皮肉だけどね・・・

*9:幼馴染設定が明かされるのはその後でした

*10:ある意味で無遠慮な、清潔な矢印だけじゃない感じが歯車の薄汚れた世界観ともマッチしてて良いよね

*11:翔太くん・ルコアさん、滝谷さん・ファフニールさん、才川・カンナさんのペアにそれぞれ焦点が当たる回。1期を経た者同士それなりに仲良しな上で、相手(ドラゴン)のまだ知らない側面を今度は人間から覗いて間合いを測る、というお話に思いました。

*12:12話中7話分の脚本は本当に初担当っぽいですね

*13:3話、初めての大仕事を成功させた表情が「よっしゃー!」とかじゃなく、「うわー乗り越えたわー……」って安堵に近いのも何だかリアル

*14:制作進行の主人公といえばSHIROBAKOが思い浮かびます、あちらは自分が結局何をやりたいのかについては相当悩んでいたように思います

*15:アニメーター志望のTwitter垢とか覗くと、毎日物凄い量のデッサンを練習して美しい線を描くのに次がダメなら米農家、という人も本当にたくさん見ます。

*16:あるいは最初自分が飛んで逃げるためにリカード(フクロウ)を射貫こうとしたり

*17:ただし、生命の死に後付けで意味を持たせることも同時に肯定されているのがこのアニメらしいとも思います。ウーロイ、ミァ、ウーパの遺体は確かに罪人たちを改心させたし、その前のグーグーだって自らの命を使うことに意味があったと満足できるならそれでいいのだと思います。

*18:5話は全体で、スクールアイドルではないちーちゃんが蚊帳の外になる(他のメンバーだけでまとまりが良い)ように見える立ち位置が徹底されていた回でした。画像の場面でもちーちゃんはサニパの看板で隠れてしまいます。

*19:『Vivy』のときも困ったのですが、戦闘のようなアクションの凄さをより楽しむための引き出しが自分の中には少ないのを感じます……

*20:集英社(ジャンプ系列)から、白泉社(花とゆめ系列)へ移動。割と原作を知ってる人が多かったのも目に触れる層が多かったからなのかも。

*21:でも聖先輩は、確かにイジワルだけど見進めるごとに良い人だって分かってくるんだよね・・・

*22:この窓枠使ってさらさの背は暁也さんと比べてココですよ~~って見せびらかす感じ…!!

*23:ついでに、EDは本物の宝塚舞台音楽の方が手掛けてるそうで、歌声も「ここで見つめ合う」とか「階段を降りる」とかステージ上での向きを組み込んで歌ってるらしいよ。作中でも「あの子には2階席が見えてる」とかの意識があったもんね。すごい・・・

*24:このあたりの温度感は『やくならマグカップも』でカレー作りをするお父さんにも似たものを感じます