2023冬アニメの感想(その1)

冬アニメも楽しかったね。

引き続き、来期アニメをチェックしながらの随時更新とします。読んでくれてありがとうね。

<更新履歴>
2023/04/15 極主夫道 / シュガーアップル / ツンリゼ / おにまい / とんスキ / 斎藤さん / 冰剣
2023/04/29 氷属性男子 / jojo6 / ろうきん / 英雄王 / ノケモノ
2023/05/07 異世界おじさん / 邪竜さま / 外見至上主義 / 防振り2 / 永久少年
2023/07/29 人間不信 / テクノロイド / 吸死2 / 不滅 / 転天 / Buddy Daddies

 

極主夫道(シーズン2 - 前半)

一番好きなアニメ、冬は極主夫道があるんです。それだけで今期は最高のクールでした。

冬アニメ一覧で『極主夫道』と『吸血鬼すぐ死ぬ』が同じカ行に並んでるの見て小踊りしたもんね。向こう3か月までの笑顔が予約されたようなものだよ。

今回も前後編に分かれて5話分しかありません、なので噛みしめるように見ていました。嫌なことがあった日、逆に気分が上がり切った日を飾るときにも見てたよ。扱いがショートケーキの苺。そしてどんな日に見てもすぐ最高の笑顔になれました。

 

1話が自治会費500円を集めるエピソードから始まりました。これ実写映画版の『極主夫道 ザ・シネマ』と同じ入りなんですよ。周りでおそらく誰も見た報告のない映画なのですが、自分だけが分かる要素から1話が始まって、ひそかに得意気な顔をしていました。あの映画を劇場で観たこと一生の誇りにしていきたい。

 

特に好きだったのは63話、姐さんが猫カフェに行く回。猫チャン寄ってきますよォ……。家の人と同じ動きを猫に見る視線と、この子をお世話してあげなきゃいけない衝動にシンクロしてしまいました。そりゃ持って帰るでしょ。

 

Netflixのあらすじがなんか好き。1エピソードに複数ある話を一言ずつ片づけるのがシュールで。見る前に「龍、美久、雅の3人」ってワードが入ってるとちょっと期待しちゃう。

 

シュガーアップル・フェアリーテイル

毎週楽しみに見ていたアニメでした。美しいタイトルのおかげか、普段あまりアニメを見ない人でも視聴率が高かったように思います。自分の頭の中にしかない甘々な世界をそのまま物語に写し取ったようなファンタジーが大好き。

そんなイメージを裏切らないOP、今期でもトップクラスに好きでした。銀砂糖師、口で物を食べない妖精……モチーフのどれもがキラキラしていて、本当に御伽噺の中に入ったみたい。絵本のような背景も美しく、この作品の持っている空気感を演出していました。

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お菓子の甘さを引き立てるため苦みが使われるように、全体としては過酷さも濃いお話でした。夢見がちな世界を引き立てるための現実感とも。

役名の無いモブはだいたい意地悪な人だし、妖精蔑視、女性蔑視がまかりとおる世界観。不当に虐げられることへの怒りのようなものは少なからず感じました。実際に下らない理由で軽んじられることなんて現実にもたくさんあるね。

それ以上に、繊細なのに負けずに立ち向かうアンさんが強く輝いて見えました。 自分の成すべきお仕事に真剣な女の子ってカッコイイよ。塔の一件とか、もし自分が頑張って作ったものを目の前で壊されたらどうする?立ち直れずに辞めちゃうかも、アンさんみたいに強くありたい。

 

ジョナスさんが冬屈指のヤバイやつだったのはそこそこ同意がもらえるでしょう。物語に憎まれ役こそあれ、やってはいけないラインを次々に踏み越えて、ここまで堕ちていく人間がいるのか……って。

最初の方こそアンさんが同郷の人をのらりくらり躱すという感じだったけど、ジョナスさんが本当に目を合わせる価値も無い人だと分かるにつれて、よくEDで顔を出し続けられるなと思うこともありました。

あまり人をこういう風に言うことは無いのですが、それでもジョナスさんは物語上で明確に悪の一面を描かれていて、独特な視聴感になりました。どうしようもない人だけど、唯一キャシーさんが支えてくれてるのは嬉しいね……あの子が居なかったら本当に一人ぼっちだよ。

 

苦みがあれば甘さがあって、甘々なシーンには精神年齢が10歳まで戻ってときめいていました。ヒロイン綱引きの時間だ!! 楽しい場面も多かったです。

シャルさんが可愛い人……アンさんにとって半端なものが許されない職人の世界にいるぶん、努力を隣で見てくれる人がいるのって素敵に思います。アンさんも酷いことを言われて傷付かない人では無いんだよね。アンさんの仕事を邪魔せず、頑張った後に抱きしめてくれるシーンは思わず手を組んで見ていました。

 

特に思い入れがあるのがミスリル・リッド・ポッドさんです。というのも4話、アンさんに疑いの眼差しを向けられたシーンが強烈で。実際は謀略だったとしても一度でも純粋な不信をぶつけられたら、もう関係に埋まらない溝が出来てもおかしくないと思うんです。

にも関わらずミスリルさんは尽くしてくれて。アンさんがピンチのときは必ず助けてくれました。いつの日かその忠義に見合うような、ミスリルさんのためだけの砂糖菓子を贈って、ありがとうを伝えられる日が来たらいいな……。

ミスリル・リッド・ポッドさんの可愛いところたくさん見て。

 

思っていた以上にアニメの上手さが光る作品でもありました。中でもこれはと思ったのが5話。水に手を浸けるシーンが美しくも寒々としていて、ここが冷たく見えた分、暖炉で2人が暖まり体も心も溶かされていくような感覚が鮮明でした。それまではメルヘンな雰囲気に乗る視聴をしてたけど、5話を切っ掛けにすこし見方が増えたような気もします。

 

最終話ここで終わりなの……?! ビターエンドでの続編引きでした。11話を見て2人がすれ違ったときは次回が何とかしてくれる!って信じてたけど、そうはならなかったんだ。

大好きなアニメだったので、またもう1クール見られるのが嬉しいです。一方でこのモヤモヤを抱えたまま3か月も待つのは大変、今度こそはどちゃどちゃに甘いエンドが見たいよ……!早く夏になって。

 

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん

絶対に横恋慕が発生しないラブコメ。

朗らかで楽しく見やすいお話でした。毎週、月・火くらいにはすぐ見ていた気がします。正直なところ制作がちょっと不安で、あまり期待していなかったのをひっくり返すくらいに面白かったです。

 

悪の少ない世界観でした。特に終盤まで。リーゼロッテ様……リゼたん様がたいへんにお可愛らしい人で、人の見てないところでも善行を積み過ぎているので、どれだけ甘いご褒美があってもにっこりでした。小林さんと同じポーズを取っていたね。当然のようにリゼたん様を囲む人たちも優しくて、この幸せな雰囲気が何より視聴感を底上げしていました。

 

ジーク様の(リーゼの魅力が分からん素人は黙っとれ……)みたいな顔好き。よくポケっとした表情になるのも可愛かったです。神託が無ければリゼたん様をみすみす断罪させた人でもあるので、印象が悪くなってもおかしくなかったところ、底なしの誠実さのおかげで安心して見られました。ゲームの王子様だもん、基礎ステータス高いよ。

ED絵すっごく好き、やっぱりこの2人が並ぶと絵になるよね。可愛らしいリゼたむ様の横に並び立てるのは同じくらい可愛らしい王子様なんだ……今度こそ離さないであげてね。

 

バルドゥール様の愛情はいつも想像の5倍は大きくて慄いていました、ひぇぇ……あんな風に真っすぐ言ってくれる人いる?

剛腕アタックに対して、フィーネちゃんが意外と冷静なのも好きでした。きっとヒロインってプレイヤーから選択肢の答えを与えてもらう人で、自分で何かを決めることってあまり無いと思うんです。だからプレイヤーの手を離れたいま臆病なほど慎重に、それでも地に足着けて人生を決断しようとする姿が、ある意味誰よりも人間らしく見えました。



「良かった!良かったねえ"!!」って小林さんが言うの、すっごく分かる。良かったねえは最高の感想だから……。

遠藤くんと小林さん、特に2人が並んで実況解説してる姿も不思議と好きなものでした。似たことを『その着せ替え人形は恋をする』おうちデート回*1でも思ったのですが、性別とかを越えて、同じ "好きなもの" を前に別の人同士が平等でいられることが好みだったのかもしれません。

そもそもアニメを見ながらtwitter垂れ流してるわたしたちにとって「実況」が身近なフレーズだよね。このアニメでは「野球実況」の意味合いを含むので同じではないけれど、好きなものを好きに言い合ってる空間には親近感がありました。

やっぱり実況してる人って腕組んだりガッツポーズしながら見てるんだ。そうだね。

 

誰と誰が好き同士になるかがキッパリ決まって見えるのも清々しかったです。人物間にアレコレと矢印を引いてはくっつけたい気持ちもあるし*2、でも今作の前ではそんな悪の感情すら浄化されるようでした。

最近は自分がゲームに入る(転生する)展開をよく見てきたので、現実/ゲームの間が不可侵なことはむしろ新鮮な気持ちでいました。ラストで壁を越えたのはあんまり好きじゃなかったけど……小林さんが嬉しそうだからいっか!

 

毎話のように何かしらびっくり要素があったのも一役買っていました。1話のゲームに干渉できちゃうの?!から、ゲーム側からも現実世界に来てる人がいるんだ……!とか。久遠さんのcvとか絶妙に思います、いかにも物語から飛び出してきた存在っぽい。その声を持つ人が現実にいるわけないもんね。

 

楽しい時間でした。幸せな視聴の中でも、フィーネちゃんが優しい人だったのは結構大きかったかもと思います。悪役令嬢がいい人になったからって、正ヒロインが悪に堕ちるとは限らないね。誰もが幸せになれる話が好きです。

 

お兄ちゃんはおしまい!

可愛くて可愛くて、一週間の楽しみなアニメでした。お兄ちゃんまたお口が八つ橋になってるよ。

 

かなりガッツリTSもの*3をしていました。ジャンル自体は個人的には苦手な方で、周りからチヤホヤされたいがために女の子になる……なんて言う人がいたら愚かだな~と思ったりします。

だけどこのアニメはそうじゃないよ、と見えたのが1話のBパート。ここがもうびっくりでした。まひろさんは自分が兄であることに深く傷付いていて、女の子になったことを「実のところ今は妙に気分が楽だ」って言うの。この台詞が全てだったとも思います。

『お兄ちゃんはおしまい!』のタイトルを、「お兄ちゃんはダメ人間!」「男の子はおしまいで女の子になる」って意味だと思ってたんです。だけどこのシーンを見て、「兄(男)に求められる重圧からの解放」ってことでもあるのかなって。

つまり、男ならしっかりしなさい!とか、威厳を持って優秀でありなさい!とか。そういった「こうあれ」というものが上手く出来なくて、実際引き籠りにまでなったのがまひろさんに思いました。

 

だから一旦は男の子の責務を降ろして、女の子の生活からカウンセリングを始めていこうというお話で見始められました。それだけにまひろちゃんのかわいい~仕草が自然体であればあるほど嬉しくなってしまうね。

女の子になるのは欲望からではなく、人を害する気持ちとも無縁で、まひろさんにとって本当に居心地よく暮らせる姿がたまたま女の子だったと信じられるのがまず安心できました。

 

もちろん男の子から解放されたら天国なわけじゃなく、女の子には女の子の苦しみがあるのを2話~かなり踏み込んで描かれていました。まひろちゃんリアルな問題も経験するのに、泣いて男に戻りたいとは言わないんだよね……。

まひろちゃんの魂の形がどれほど妹に合っていたかはアニメーションが力強かったです。見てこの可愛い表情、見た目が変わったからって一朝一夕に出来る仕草じゃないよ。

性別がどうあれ、元からまひろちゃんが可愛い人だったのはハッキリ伝わってきました。その上で、重圧さえ無ければ生来の優しさが滲み出てくるのも凄かったね。このアニメって「兄をおしまいにして(弟・姉)になる」ではたぶん成り立たなくて、男らしさ・年長者らしさからも遠ざかり、その先に出た素の性格がこんなにも良い人だと見えるのも好きなところでした。

 

もう一人、みはりちゃんの目線もわたしの大きな視聴軸でした。この子となにかと感性が近くて、アニメを見ながら心の声で言ったことは大体みはりちゃんが代弁してくれました。「お兄ちゃんが自分から外に出てる……!!」とか、泣きそうになった瞬間に画面の中のみはりちゃんが200%の力で泣いてくれたよ。

かわいい~!って見ていた半分くらいは、お兄ちゃんでお人形遊びが出来るところにあったりもしました。よくお気に入りのキャラに着てほしい服で絵描いて遊んだりしなかった? しない、そう……

だけどそれは「許されるならしたい」という話で無暗にやっていい事ではありません。もし人形にされる側が嫌がってたらプライドを傷つける行為になってしまうね。

そこを『おにまい』は、お兄ちゃんが女の子扱いされることを満更でもなく思ってる……と信じてもいいような描写に溢れていたので、着せ替えやメイクをして遊ぶのもすごく捗りました。

 

その上で、お兄ちゃんの意思を無視して女の子にしたことには変わりなく、みはりちゃんはいつか罰を受けるのかもしれないとヒヤヒヤする気持ちがずっとありました。なんなら、かつての兄に重圧を与えた一端はみはりちゃんにあったりするわけです。

もしお兄ちゃんから「やっぱりこの生活はつらい」って打ち明けられたら、みはりちゃんは謝ることしか出来ないじゃないですか。それは賢い本人が一番分かっていたと思います。

だからこそ、お兄ちゃんがみはりちゃんに感謝の気持ちを伝えたり、プレゼントをしてくれる場面ではみはりちゃん共々に号泣していました*4。まひろちゃん良い子すぎ……!もうなんなのこの人、自慢のお兄ちゃんだよ。

 

このあたりは普段のアニメーションから、兄妹が心から信じ合っていると見えたのも大きかったです。この2人けっこう似た者同士なんだよね。みはりちゃんはいつもお兄ちゃんを第一に考えてるし、まひろちゃんも妹のことを大切に思っていて。ここにも厚く信頼を感じられたのが安心な視聴に繋がりました。

 

単話でちょっとスゴいなと思ったのが9話です、クリスマス回。お兄ちゃんがスマホのインカメを起動するシーンがありました。

インカメってどう?自分が映ったら嫌じゃないですか?もしくはテレビが黒い画面になったとき急に人間が現れるやつ。

お兄ちゃんは1度目に偶然か本当かインカメを起動させました、このとき秒で画角に入って来るみはりちゃんがまた嬉しいね……お兄ちゃんを曇らせまいとフォローする意図があったかもしれません。だけど今は隣を見れば家族以外の友達もいて、2度目ははっきりと自分の意思でインカメのボタンを押すんです。

もしお兄ちゃんが自己嫌悪を抱えたままなら、これは絶対に出来ないことだったと思います。さらに女の子になった自分の顔を認めることとも合わさっているようで。この大事な場面をみはりちゃんが隣でちゃんと見てるんですよ……誰も彼もが幸せになれる魔法のような一日でした。

 

12話も圧巻でした。1話の「もういっそ、お兄ちゃんはおしまいにしてこのまま……」で足を止めたシーンとは対を成す回だったと思います。

今までが楽しすぎて、薬の効果は切れるものということが頭から抜けていたかもしれません。急に日常が期間限定になったみたいで固唾を飲んで見ていました。せっかくお兄ちゃんが笑顔を取り戻しかけたのに……。

前は男の子じゃなくなることを躊躇って立ち止まったのに、今は友達を失うことに悩んで歩き出すんだね。悩む対象が変わっていて、それはこの12話の間でもっとかけがえのないものを手に入れたからなんだと思います。男らしい、女らしいではなく、まひろちゃんらしい選択だと感じました。*5

 

それでもなお、この日々は永遠ではないんだろうね。今回のようなピンチはきっとまだあるし、まひろちゃんが友達を裏切っている事実にも変わりありません。もしかしたら秘密を打ち明ける日が来るのかも。同じように、みはりちゃんにとっても、自分の強引なやり方のせいでお兄ちゃんが酷く傷ついてしまったら、取れない責任を取らなきゃいけないかもしれません。

いずれにしてもそれは12話のタイミングでは無かったんだと思います。ただこの2人が心から良い人なのを見てきた分、どうあっても幸せになってほしいと願ってしまいます。

 

2期のやる気も満々だし!『おにまい』を「二人の妹が逢う」に訳すのすごいな~って思ってたら、その2号車が次に向かって走ってるんだもんね。少しは期待していいのかもしれません。

 

とんでもスキルで異世界放浪メシ

いつでも見られて笑顔になれるアニメでした。冬クールで何だかんだ一番(終わってほしくない……!)って駄々をこねたのもこのアニメ。朝帯まで移動して100話くらい放送しない?

 

かなり広い範囲の人に見てもらえるアニメだったと思います。一応は異世界ものだけど、そういったジャンルに抵抗がある人でも楽しく見られるお話になっていました。

ごはん要素はもちろん見やすさの助けになっていたけど、やっぱり登場人物にアクが無くて可愛いのが大きかったね。特に主人公のムコーダさんが印象の良い人だったのは肝でした。冴えない人に見えて、実は物腰柔らかな情のある人で、いい声。

 

これもぜひOPを一目見てほしいタイトルです。イイOP……っていつも言ってたよ。ただ公式で出てるのはノンクレジット版なんです。最後あの缶ビールに「MAPPA」が出るところまで含めてのOPだと思うなあ……!

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お肉大好き腹ペコわんわんさんが愛おしくてもうたまらない。にこにこしながら見ていたら、突然びっくりするほどお顔が良いカットがあるし、また数十秒後にはわんわんさんに戻る感じ。フェルさんはデザイン的にもアニメにするのが相当大変そうだったところ、最後まで魅力たっぷりに動いてくれていました。

 

6話ですよ、も~~~スイちゃんが出てからは倍も楽しかったね。すっかり骨抜きにされていました。ムコーダさんそこ代わって!スイちゃんと添い寝したい!!ア"ア"

スイちゃんの「ポッ♡」って音と「キュンキュゥン↑」って声をどうにかして日常生活に取り込めないか画策しています。マウスのクリック音とかにしようかな。

「フェルおじちゃーん」って呼び始めたころから、本当に3人が小さな家族みたいに見えて、ささやかでも盤石な幸せを嚙みしめるようでした。核家族というよりは気の良い親戚の集いっぽいよね、この光景をずっと眺めてたい。

調理パートが花形だったね。実写の動きを元にするアニメーション*6はさながらアイドルアニメでいうダンスパートのような感覚でした。

特に好きだったのがフェルおじとスイちゃんがいつでもお腹を空かせて催促してくるの。そんなに求められたんじゃ仕方ないな~~じゃあ作ってあげちゃう、ふふ。「満開の笑みが見られたのなら 創造の手間もどうだっていい」のOP歌詞がその通りで、作るほどに食べてもらえる喜びがいっぱいに詰まっていました。

逆に、頑張って作ったものが誰にも食べられない……って展開が個人的にものすごく辛くて、このアニメは絶対にそうはさせないスタイルを見せつけてくれるようでした。

 

実は異世界・俺強の話もしっかりやってるんだよね。料理やスイちゃんが目当ての人はこのパート見てるのかな?と思うときもあったり。それでも王道の良さを見せようという意思を感じました。

そこでわたしはこの人を2023年助演男優賞に推薦したいです、ギルドで解体を任されてたおっちゃん。この人が毎回オーバーにリアクションを取ってくれるおかげで、俺強な展開も死に設定にならずに済んだのかなと思います。

冒頭のとおり、幅広い人に見てもらえるアニメだったとは思います。だからといってなろう系のエキスを排除するのでなく、あくまで万人に受け入れやすい形に下ごしらえして、優しく差し込んでくれていました。これが未だに偏見も根強い異世界アニメへの見方を変えるきっかけになったらいいな……なんて思うのは、飛躍かもしれないけどね。

 

便利屋斎藤さん、異世界に行く

最終話で踊るアニメは名作!

かなり独特なアニメだったと思います、断片的なお話を繋ぎ合わせたみたいな。視聴スタイルを掴むまでには少し時間がかかりました。

このテンポ感はどこから来ているのか、気になって原作*7を覗きに行くと、本当に1話が3,4ページで終わるような作風だったんだね。これを一度溶かして新しく30分アニメに組み直そうとすれば手腕を問われると思いますが、今作はむしろ原作の雰囲気をそのままに出している印象でした。このテンポ自体が取柄で人気のひとつなのかもね。

 

異世界だから当然フィクションなのですが、不思議とドキュメンタリーを見ているような気持ちもありました。お話の多くがキャラクターの独白、過去回想、その人が今生きていてくだらない日常を謳歌している……という水準で動いていて。そのため劇作家のようにお話を俯瞰しながらというよりは、個々のキャラクターの目線に重きを置くアニメだったのかなと思います。

言い換えるなら、脚本の神の手はひとまず気にしなくていいから、作中のその人が何を見て、何を感じ、どう動くかをある程度自由にやれる話だったのかなって。このアニメをなんだかんだ完走したのも実はそういう雰囲気に惹かれていた節があったかもしれません。

ただこればかりは漫画とアニメの尺の違いだと思うけれど、すごくドラマチックな事をしているのに、見ていて掛ける思い入れが足りなかった気はしています。

 

好きだった回はラファンパンさんの呪いが明らかになる回。特に言わないまでも貧乏な冒険者事情は仄めかされていて、それでもラファンパンさんに払う金貨はある優しさが好きでした。

同じチームのラエルザさんの肩を持つ訳でもなく、飄々と茶化しながらふるまう感じ。不思議な気もしたけど、むしろ画面の外から見てる人と一番目線が近い人だった気がするね。

おじいちゃんやめたげて!

 

これは失礼な喩えかもしれないのですが、昔学校のノートにキャラを描いて自分でお話を付け足したのとか、ネット掲示板の片隅に連載した小説とか、あの初々しい楽しさを感じる気がするんです。「杖がデカい老人がいたら面白い!」とか「実はこの人にはこういう過去があって……」みたいな。

そう思っていると、キャラが美しいアニメで動いてることも、最終話で全員集合することもやっぱり嬉しくて。最後のダンスもそれが許されるだけの軽さがお話にあってこそだし、実はこれしかないENDだったんじゃないかなとも思います。

 

冰剣の魔術師が世界を統べる

とんでもないアニメと同じ時代に生まれちまった……なァ、冰剣!

冬からいきなり一年を代表するようなアニメが出てしまいました。2023年は『冰剣』があった年、タイトルに偽りなくTLを風靡していました。アニメを見る人たちの間でも、近所では人気No.1だったり、隣の沼では全く話題になってなかったりと評価の差こそ著しかったですが、自分の目から見て確実に面白いアニメだったと言えます。

 

視聴者を手玉に取るのが巧すぎるアニメでした。王道文脈に加えて、いわゆる"変なアニメ"の「面白い!」って思わされるツボを知り尽くした人間の仕業。天才的という感想がこれほど似合うアニメも珍しいと思います。

大きすぎる本しかり、唐突な筋肉しかり、そのままお茶会へフェードしていくのも、見ていてどうしてもツッコんでしまうね。EDまで見終わったら他の人の反応を遡るのも楽しくて、やっぱり「本がでかすぎるやろ!」ってみんな言ってるの。そしてツッコんだら最後、このアニメとは共犯になってしまうんです。

一度アニメとの対話が成立するとそこからはずっとボーナスタイムで、もはや何をしても楽しい時間が続きました。たとえば漫才の人が場の空気を掴んで笑いの渦に取り込んだ後のような感じ。

そういう一面があってか、特に実況する人たちの間で盛り上がっていた気がします。このアニメだけはわたしもリアタイしていました。ただ実況しないと楽しめない訳ではなく、(アニメ・個人)のひと単位でコール&レスポンスの通じるアニメでした。

誤解のないようにすると、おかしさやミスを笑い物にするのが楽しいアニメではありませんでした。『冰剣』は純粋にレベルの高いお話で、その面白さを誰もが理解しているからこそ真剣視聴に値するし、その上で並々ならぬ愛情を注がれているアニメでもありました。

 

とはいえ1話で多くの人が振り落とされたのも間違いないでしょう。日頃からアニメ筋を鍛えていて良かった。ああ感情薄い系主人公ね~とか、池崎パロはそういうことするアニメなんだと了解しそうになって、期待のハードルがぐんぐん下がっていくのは感じました。

でも違うんですよ。期待値80点のアニメが100点を出すのと、期待値20点のアニメが100点を出すのでは貰えるポイントに差があるじゃないですか。『冰剣』は後者で120点を出したアニメだったと思っています。

 

完璧に思ったのが4話、グレイ教諭の出る回。アリウムさんがレイさんに決闘を申し込む回でもあります。

最近よく「かませ悪役*8の美学」というのがあると思っていて。かませ悪役は悔しそうな顔をして、劣等感を剥き出し、いかに惨めに散っていくかまでが華。アリウムさんはその立場でいつもイイ表情を向けていました。

アリウムさんにとって努力を重ね決死の思いで挑んだ試合なのに、やっぱり主人公には負けてしまって、それどころか悪役としての見せ場すら後から出てきたグレイ教諭……もっと濃い味の悪*9に巻き取られてしまうの。こんなに惨めなことって無いよ。

だからアリウムさんはこの時点で退場しても満点の人だと思っていました。今後なにかしらの教科書に載ってもおかしくなさそう。

だけどそこで斬り捨て御免ではないんだね。アリウムさん……アルバートさんが何もかもを奪われたとしても、過ちに気付くことが出来た人は何度でもやり直せるし、やり直していい。友達の輪の中にアルバートさんが入れるのがもう本当に嬉しくて、ここが満点を越える部分でした。

リディア師匠の「レイは幸せになるべきなんだ」から、より一層このアニメへの見方が変わるようでした。いつの間にかレイさんがかなり好感を持てる人になってるんですよね。年相応の人たちに囲まれて楽しそうにしていると、それだけで何だか嬉しくて。

最初はとんちきに見えた周りの人も、今度は"友達"としてどんどん頼もしく見えてきました。OPのエヴィさんなんてギャグにしか思ってなかったのに、いつしか見るたび(ありがとう……)って唱えるようになってたよ。本当に良い笑顔。

超イイ話をしたと思ったらすかさずギャグが入るセンス、この荒波みたいな押し引きにずっと付いていったんだなぁ……毎回のED映像で常に試されていたともいえるね。好きなED。


7話もすごかった……水着回。水着回ってどう思う?これでも少しは色々なアニメを通ってきたつもりなので、アニメで水着が見えると⇒うれしい!って拝むくらいの心構えは持っていました。

だけど水着無いじゃん!ははーーこういう予想の裏切り方もあるんだ。『冰剣』が意外にも硬派なアニメだったとはね。だけどそれもいいかな、今週もEDまでしっかり楽しかったし……どぅわあ~~やった~~~!!!

キャッキャ 超楽しい。アニメの掌の上で転がされるほど気持ちのいいことって無いよ。

師匠はレイさんに「人の心を教えられなかった」と悔やんでいました。だけど最近のレイさんは本当にいい顔をするようになってきてるんだよ……知ってる?

アルバートさんもサッパリとした顔をしていて、この人の活躍があるたびに胸が一杯になりました。結局どこまで行っても勝利を手にできない人だったけど、誰よりも美しく強い顔をする人でもあって。ここ最初期からいる取り巻きの人たちがずーーっとアルバートさんのことを見てくれてるのも本当に嬉しかったね……。

 

アメリアさんのお話も大好きでした。OPの特典ボイスはアメリアさんverを買ったよ。

試合前、アメリアさんの吐き出した悩みが本心からのもので鋭利さもはらんでいた分、うかつな言葉はかけられないシーンだったと思います。一歩間違えれば途端に説教臭くなるような場面。

それでもレイさんの言葉がアメリアさんを救いうると思えたのは、レイさんもまた仲間に救われたことがある人で、その一部始終を私達は既に見てきたからなんだろうね。空っぽだった心に仲間から大切なものをもらって、その自分の内側に宿っているものだけを素材とした言葉で励ましてくれていると感じました。

 

アリアーヌさんとの決戦は文字その通りの意味で息を呑みました。あの会場にいた全員が、2人の語らいが済むまで歓声を上げるのを待ってるんです。きっと自分が会場にいたとしても同じようにしていたはずで、あの一体感は体験しないと表せられないものがありました。1話を見てた頃に「お前はこのアニメで泣くぞ」って教えてみたいね、絶対信じてもらえないよ。

 

アメリアさんは本当に頑張ったので、ご褒美があるなら何でも叶えてあげたい気持ちでした。そしたら本人のやりたいことが……メイド喫茶?!

そういえばアメリアさんがかなりイイ趣味をしてるのは数話前の夢の話にも出ていて、妙なところで綿密なアニメでした。他にもレイさんの野球スイングとか、初期の空っぽな喋り方とか、急にムキムキになるのも理由があってびっくり。

文化祭ならメイド喫茶ってお決まりの展開も、アメリアさんの意思が絡むなら盛大に祝うしかないよね。「メイドが嫌いな生命体など、この世に存在しません」そうだったんだ……じゃあそんな気がしてきた……アルバートさんがすっかり馴染んできたのもたまらなく嬉しかったね。

 

とめどないギャグに笑いながら、でもマリアさんのピアスはお笑い要素じゃなく見ていました。安全ピンって……。いいとこの貴族の子が非行に走って、だけど虚しくもワルにはなりきれない感じ。自分が嫌いで傷つけたくなるような気持ちにはかなり来るものがありました。

真面目な話も進めつつ、今のマリアさんも純粋で可愛い人なところを映してくれるのも良かったね。多分11話あたりが一番暗い部分で、それでも楽しさと両立しきったのは結構スゴいことに思います。

 

12話は登場人物を整理すると、主に11話の恋愛小説*10をなぞっていました。

まず白い長髪の人がリーゼロッテ。小説でいう悪魔の少女。エヴァン(レベッカさんの婚約者)に10年間化けていて、夜道でレイさんからレベッカさんを引き取ったのも正体はこの人でした。

ガスマスクの男が本物のエヴァン。小説でいう人間の男。力を欲してレベッカさんを利用しようと企み、愛していたはずのリーゼロッテを憎悪するまでになっていました。

リーゼ/エヴァンは長いコミュニケーションロスの末に殺し合うしかなくなったのに対して、レベッカ/マリアも同じく長いすれ違いをしながら本音で話し合うことができた、のが大筋だったと思います。ここだけ少し圧縮ぎみだったので原作勢の話も聞きたいね。

 

ラストの締めが「俺、友達が出来たよ」で成長した姿を見せるのもやっぱり好き。声がさ……1話と比べて本当に豊かになっていて。友情の話が大好きなので、このアニメとはそこでも噛み合っていたかもしれません。

レイさんって周りの友達よりもっと多くの人に支えられていたんだよね。リディア師匠にも、かつてのハワードさんにも*11。友達がいるから大丈夫という報告がまず嬉しくて、それ以上にもっと広い範囲にもレイさん達を見守ってくれる人がたくさん居ることを思うと、より強く安心できるようでした。

 

「努力」「成長」「友情」があるお話でした。なろう文脈に詳しくはないけれど他のお話だと、努力はあまり見られない要素で、成長もどちらかというとありのままの自分を認めてもらえるのが主流かなと思います。主人公と奴隷、使役するといった関係もよく見ます。

もちろんこれはどれが良いというわけではなく、どちらにも良さと需要があります。アニメを見るときはそれぞれで頭を切り替えて見たりもしています。

ただどうしても好みな部分で『冰剣』は友情のところ、対等で心から信頼しあえる仲間という関係がハッキリと見えるのが一番に刺さりました。かけがえのない美しさがここにあるよ……。

アニメとしても本当に楽しい視聴でした。たぶん1,2年前ならこのアニメを敬遠して見てなかったと思うんです。だけどいま見届けられたのは、他の異世界アニメをこれまで見てきたり、それができたのは周りで楽しそうに見ている人たちがいたからで、そういった積み重ねの上に成り立っていたと感じています。なんだ、案外自分も支えられてるんだ。

 

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*1:家まで来て喜多さんと五条くんが真剣にアニメ鑑賞会してるところ

*2:それはそれですごく楽しいものだけど

*3:性転換を扱うテーマ

*4:だからあの涙はお兄ちゃんが更生する嬉しさだけじゃなく、自身の罪が洗われる意味も数%くらいはあったと思うんです

*5:念のため、男の子じゃなくなることがどうでもよくなった、とはニュアンスが違ったとも思います。

*6:ちなみに簡単なことではないよ

*7:https://comic-walker.com/viewer/?tw=2&dlcl=ja&cid=KDCW_EB00000027010001_68

*8:主に序盤に出てくる、いかにも悪いヤツ!って役。主人公の強さを引き立たせるための踏み台になることが多いです。

*9:グレイ教諭が指を回しながら挑発するところすき、これを描いたら一生自慢すると思うよ

*10:悪魔の少女と人間の男が出会って仲良くなり、しかし男は悪魔の力に魅了されてしまい離れ離れに……って話

*11:もしくはアルバートさんにとっての取り巻きの人、アメリアさんにとってのアリアーヌさんのように。