2023冬アニメの感想(その3)

続きだよ~ 全タイトルへのリンクは(その1)から

 

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異世界おじさん

おじさん!今日も放送ギリギリの顔してるね!

何より最後まで走り抜けられたのが一安心でした。初回の放送は2022夏だったんだ、しっかり添い遂げたよ。

 

まずは1話の掴みが印象深かったです。突っ込んでくるトラックが誰も轢かずに過ぎ去るシーン。このお話は異世界に行くのではない、と一瞬のうちに伝わるようで思わず興味を惹かれました。

異世界から出戻ってきたおじさんの話を聞くストーリー。これだけ沢山の異世界アニメが放送されていて、まだ新しい切り口を見つけられるのすごいよね。しかも一発ネタということもなく、毎話面白く見られました。

おじさん、決して悪い人では無いんだよね……。アニメ一覧でティザーを見たときはインパクトが強くて怯みました。「い」行で出ていい禍々しさではないでしょ。だけどいざ見てみると……やっぱりおじさんの顔は怖いけど、可愛い人がたくさんいる楽しいお話でした。悪人の顔をした正義のヒーロー、って役に声もぴったりハマってたね。

 

居間で3人がイキュラスエルランを見ながらあれこれ言ってるの、この雰囲気がとにかく好きでした。趣味はそれぞれ違っても同じものを見て夢中になれる感じ。エルフさんの指輪の件とか思わず「おじさん……!!」ってシンクロしてたよ。

同じ気持ちになれて楽しいのに加えて、タカフミさん、藤宮さん自身もかなり個性的……面白い人なんだよね。タカフミさんの無邪気な笑みに闇が混じってるの、好き。

温泉回鑑賞のとき、藤宮さんの「朝チュンは逃げです、お願いします」って祈ってる時がなんだかすごく楽しくて。おじさんとエルフさんの該当シーンって、絵面だけ見るとちょっと遠目になっちゃうような場面でした。だけど信頼できる藤宮さんが同じものを見てテンション爆上がりしてるなら、そっちに乗ってみようかなって思えて。いいぞー!映せ映せ!

温泉に限らず、異世界パートはおじさんを中心に女の子が寄ってくる王道ストーリーでもありました。このお話を斜めに見るのではなく、タカフミさんたちと一緒に喜怒哀楽ツッコミも交えながら騒がしく見れたのがやっぱり良い視聴感に繋がったなと感じます。

 

この生きものは?

 

齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定

cv.大塚芳忠さんにこの先5000年は可愛い役してほしい

好きなアニメ。15分枠で気軽に見られました。最初のイケニエ少女の話題こそヘビーな展開になるのかな?と思いきや、終始楽しく見られて、かつ最終話の〆まで綺麗にまとまっていました。

 

原作が日本のなろう発、それが中国でヒットして、アニメ制作も中国という経歴。口パクが違ってたのは中国語ナレーションの方に合わせていた名残なんだろうね。

中韓制作のアニメはここ1年ほどでグンとレベルが上がってきた気がします。最近だと、一括りにはできないけど『時光代理人』『阿波連さんははかれない』『万聖街』など。どれも単に原作が面白い・動く枚数が多いという以上に、アニメとして楽しくするための工夫を凝らしているのをよく感じられました。面白いアニメが見られるのは国に関係なく嬉しいね。

スピンオフもあるから見て。

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可愛い人(ドラゴン)を眺めていられる幸せな時間でした。お話がシンプルなのもあって和やか。かつ、目の冴えるようなカットが多々あって、特に見るよろこびの大きいアニメでした。ここのレーコちゃんの耳打ちする所とかすごく決まってるよね。泣き虫聖女様も可愛い、この子は国をあげて守らなきゃ……。

キャラクターを可愛く見せるって当たり前のようで一番難しいことです。そこを『邪竜さま』は可愛く・カッコよくするための動きがいっぱいに詰まって見えました。1つのポーズを取ってもそうだし、次のポーズに繋がるまでの動きにも無駄がない感じ。

これは個人的な趣味だけど、派手なアクションシーンとは別に、細やかな仕草が大切にされていて、動きにその人の魅力や思いが乗って見えたとき特にグッと来てしまいます。

 

さっきのスピンオフは見た? ライオットくんが本編だとペリュドーナの街でお留守番だったけど*1、状況の緩いスピンオフではしっかりレーコちゃんを助けに来てくれるの……! やった~小さな王子様だ!

レーコちゃんにとって邪竜さまが心の寄る辺になっていたとしても、本当はそれが唯一ではなくて。誰か不安定な人がいるとき、ライオットくんのように別方向からも支えがあるのを見るとすごく安心してしまうよ。ありがとうね……。

 

 

外見至上主義

Netflixシリーズ。これが想像を上回って面白いアニメで、地に足着けた骨太さがありました。

こちらは韓国発で、韓国語ナレーションに日本語字幕が付くタイプ。どちらかというと「家族愛・上京・歌」の伝統的なテーマに沿っているお話でした。最初こそ気楽に見るつもりだったところ、見終わった今はかなり満足度が高いです。

 

タイトルから何となく、不細工な主人公がイケメンに変身して周りを見返してやるぞ!って展開を想像していました。だけどそうではなく、2つの外見を行き来することで物事を客観視して、周りに感謝を伝えられるようになり、本当の自分を磨くための努力を始められるお話だったんだね。まずここが好印象でした。

 

1話、「深刻なテーマ」って警告が出て何事かと思ったら、それも納得できるほどパンチ力のある回でした。いじめ、暴力、外見が劣っていることで被るデメリットは甚大で。だけど誇張でなく現実ってこういうものだよね……と妙に納得してしまうような。『外見至上主義』と銘打つ世界の冷酷さがハッキリと見えました。

変身シーン、このスマホに反射した顔を睨みつけるところがすごく好き。1話は特にこの場面で期待感を持ち上げられました。

外見さえ良くなれば人が好意をもって接してくれるけど、だからって周りを見下し返すのでなく、むしろ自分を見つめ直すきっかけとして働くんだね。赤の他人としてお母さんと話す場面にはハラハラしました。そんなの、もし醜い自分が愛されてなかったら一発で分かっちゃうじゃん……。

だけど美醜に関わらず既に愛を向けられていたことを知り、初めてヒョンソク自身もお母さんに酷い態度を取っていたことに気付けるの。暴力だってイケてるヤツらの特権じゃなく、醜い自分も同じようなことをやってたんだ。

 

また外見が良ければ人に敵意を向けられない訳でもなく、弱きを助け強きを挫くバスコの登場はとても大きかったです。顔が良いヒョンソクの言動ってどうしても上から目線にならざるをえなくて*2、視聴中にアクの出そうな部分に思います。そこをバスコが先手を取って「それはお前の立場が強いから言えるんじゃないか?」的な厳しい目を投げかけてくれるのがありがたかったよ。

 

進んでくると不思議なことに、バスコやイ・ジンソンまでもがどんどん頼もしく見えてくるんだよね。見た目や登場シーンこそ "できれば関わりたくない人" に見えたのに。なんなら周りの人もファッション学部というだけで怖いな~という気持ちがうっすらありました。

だけど、それもまたレッテル貼りのひとつで。醜い人にも内面があるのと同じく、怖そうな人にも情の厚さや純粋さがありました。

たとえば下の画像を未視聴でいきなり見たらウワッとなるかも。特に選んでるわけじゃなくずっとこんな見た目をしてるよ。ただ、誰しも少なからず持っている偏見が良い意味で裏切られるところに面白さのひとつがあったと思います。

 

誤解の無いようにすると、悪いことした人も内面を見ればみんな善人だよ!……という美談ではありませんでした。悪い人は本当に悪い。

イ・ジンソンが暴力を使ったのも、ヒョンソクが悪態をついていたのも事実で、その過去が許されるかはまた別の話です。ただこのアニメでは、良い事をしたから昔のことは水に流せというような圧力は感じませんでした。どちらかというと、醜さや過ちはどうしたって存在するもので、まずはそれが「ある」ことを描き、ありのまま見せるのが特徴的だったと思います。

 

独特な見応えだったのが、外見至上主義な世界が何か変わるわけではないところ。ヒョンソクたちが研鑽を積みフラットな友情を築いたとしても、変えられるのって精々が自分、もしくは周りのクラスメイトくらいの範囲なんだね。

どこまでもリアルで正直なお話でした。でも言い換えれば、この狭い範囲だけは確かに変えられたんだよね。世界は相変わらず冷酷で、そんな中でもかけがえのない輝きが生まれていることに胸が熱くなりました。

 

そんな輝きがいっぱいに見えるラストがまた良かったよね~~ バスコが名乗りを上げるとこ大好き。良くも悪くも純粋なトラブルメーカーだと思ってたら、こんなに気の置ける仲になれるなんて……!

周りから向けられる愛を知り、周りに感謝を伝えられるようになり、2つの身体のどちらにも友達が出来て、最後には自分を愛せることに繋がるの。重いテーマを扱って儘ならない事もあった分、後味まで幸せに迎えられたのは感動もひとしおでした。

自己肯定を「鏡に映った顔を見て微笑む」じゃなく「隣で眠る自分に微笑んで布団をかけてあげる」ってするの、このアニメでなきゃ出来ないね。

予想を越えられてしまうアニメでした。原作人気は噂にも聞こえていたけれど、それ以上にアニメとして見せるべき物の見せ方、臭いものに蓋をしないスタイルがお話とも噛み合っていました。続編にも期待大です。

 

痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。2

おっ、メイプル今日もいい触手だねー!

冬の必須アニメ酸でした。このアニメが1週間に1度はあってほしい、途中で延期になったときは思わず体調を崩してしまったね。

 

SILVER.LINKの超大作、秋クールでは『ヤマノススメ』が一部の人にとっての天竺みたいな存在だったけど『防振り』もいつか似たような存在になるかもしれないね。

「ノンストレスな大冒険」を掲げる通り、リッチなアニメにも関わらずどのアニメよりも気楽でいられました。いつもお風呂上りとかに椅子のリクライニングを全開にしながら見てたよ。

ほとんどが単話で完結するお話で、何話からでも見られるようでした。普通はそうすると単調になってしまうと思うのですが、『防振り』は圧倒的な美術と何よりメイプルちゃんが楽しそうで、見ていて飽きることがありませんでした。

 

何をやってもクエストが出てスキルを貰えるの、いいよね……羨ましい。現実もあれくらい分かりやすくなって、行動するたびに何かしらの実績解除が見えるシステムになればいいのに。

メイプルちゃんのニヘ~って笑い方すき。

 

ところでオンラインゲームってやったことある? NWOほど自由なゲームは無いかもしれないけど、一時期ハマってたときがあるよ。

そんな日を思い出しながら、ゲームの楽しさが一杯に詰まっているところにも触れられました。あの世界がとことん綺麗なの本当に良いよね。逃避先としての異世界とはまた違って、こんな場所で楽しく遊んでみたい!ってポジティブな気持ちがどんどん湧いてくるようでした。

変なところだと、メイプルちゃんのとりあえずボタンを全押ししてみるようなスタイルに親近感があります。スキルを使わないで落ちるのが一番ダメって偉い人が言ってた。

 

絵が綺麗で崩れる心配が無いからノンストレス。という一面はもちろんあるんだけど、アニメの魅力はそこじゃない気もするんですよね。

つまり、崩れる/崩れないのレベルは本来は視聴者が気にするようなことではなくて、その上に描ける楽しいこと・やりたいこと・いかに自然に見せるか……といった部分に魅力があると思っています。*3

だから3話のCGパートとかも個人的にはめちゃくちゃ楽しかったんです。面白そうなことを思いっきり出来るのが大好き。全編を通して作る側が誰よりも楽しんでいるのが目に浮かぶし、そういった楽しさって見る側にも伝わるものだよね。

 

そういえばOPで、皆のもとへ駆け寄るためにぐるっと回り道するところ。1期OPのときに同じ場所で転んだことを覚えてるのかなー……と書きながら気付いたけど、これって「痛いのは嫌だから」じゃん。それかあ~~

 

 

永久少年 -Eternal Boys-(14~24話)

隠れた名作。アラフォーという現実感と、アイドルという特別感を生かし切った見事なアニメでした。いま再放送してるんだっけ、たくさんの人に見てほしいタイトルです。

 

Eternal Boysって大人でも少年でもあるところに不思議な魅力があるよね。序盤で好きだったのがビーチ回。蓮くんと一緒になってはしゃぐ姿が無邪気で、見ていてにっこりでした。アラフォー軍団よりも(たぶん敢えて勝ちを譲ってあげた)ストラブが送る視線の方がむしろ大人びてるみたい。

かと思えば反対に、浅井さんが腹痛で蓮くんに出番を譲ったのも演技だったかもしれないんだよね。気を回した事をわざわざ言わない感じ、年上の余裕っぽくてすごく好き……。

 

武道館を目指すのがなかなか無謀に思えてしまうね。Eternal Boysは売れるようになったとはいえ弱小グループには変わりなく、見ている間もどこかでダメだった時のことを考えていた気がします。

大人って何なんだろう。ひとつは諦めることに慣れ過ぎている存在だと思います。真田さん達が(もうこのくらいが潮時だ)と身を引けるタイミングはいくらでもありました。これがもし高校生アイドルのアニメだったら立ち直るのを期待してしまうけど、アラフォーの大人たちにそこまでの活力があるとは保証されず、危機が迫るごとにハラハラさせられました。好きなことが終わる瞬間って何より怖ろしいものだよ。

 

これまでずっとEternal Boysが華やかなステージに立つ姿を見たくて。23話のライブは圧巻でした。何度も困難を乗り越えてここまでたどり着いたことに感動しつつ、でもやっぱり席を埋めたかったんだろうな……って思いも真田さんたちの表情から痛いほどに伝わって来ました。

ライブ中、何となくEternal Boysってここで終わるんだろうな、という予感も身に染みていました。実際に宣告されたのはその後でも、驚きよりやっぱり感が勝っていて。それは客席に集まった人、真田さんたち本人が一番よく分かっていたことだと思います。

特に石田さんをどういう思いで見ればいいのか分からなくて。1期10話でこの人にガッチリと心を掴まれてしまったので、石田さんの思いの強さに触れてはまた泣いてしまいました。

 

大人ってもうひとつ、物事に永遠が無いことを知っている存在なのかも。「僕たちはいつまで永久少年でいられるんですか」の一言は強烈でした。無邪気に永遠を信じられる子供が言える台詞ではないね。

それだけに「ずっとずっと永久少年でいよう」と言えるのも凄まじいことで。永久にもいつか終わりが来ることを知っている大人のまま、それでも今が続くことを願う少年の心を持っているグループ、永久少年だ……。

 

現実に嘘をつかない誠実さを貫いた分、怒涛の幸せ100倍返しがもう最高に嬉しかったね。視界のせいでニコライさんのキーホルダーがさらに歪んで見えました。

しかも誕生日を祝ってくれるの、ここもすごく泣いてしまって。41歳の誕生日ってあんまり感慨が無いのかも。アイドルとして普通の家庭を持たない真田さんにとっては尚更だと思います。そんな年を重ねる儀式を目いっぱい祝ってくれる人が今自分の傍に居てくれるんだもんね。

 

後で報われるかどうかを差し置いても、武道館を成功させるよりもスゴいことが既に起こっていたんだと思います。それは40歳からでも自分のやりたいことを見つけて諦めなかったこと。

40歳の自分なんてイメージできる? なんだか考えるほど嫌な事ばかり浮かんでしまう気がします。だけど真田さんたちを見ていると確かに勇気づけられてしまって、そんな人のことを指してアイドルと呼べるのかもしれません。

 

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*1:危険な竜の噂にアリアンテさんがまだ近づけさせられない判断をして

*2:たとえ本人にその気が無くても、外見で優劣が決まるこの世界なら

*3:「本来は」と付けたのは、そのレベルに引き上げることが途方もなく難しく、しようにも出来ないアニメだって沢山あることを知っているつもりだからです ほんの少し