話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選

aninado様で集計されているこちらの企画に投稿させていただきます。

https://aninado.com/archives/2021/12/20/876/

初参加で、拙筆さが恥ずかしいばかりですが好きなアニメを自分の感じたように話したいと思います。上記URLより他ブログ様の記事も見られるので、年末年始ゆっくり振り返るお供にぜひご覧になってくださいね。

■「話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選」ルール
 ・2021年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
 ・1作品につき上限1話。
 ・順位は付けない。
 ・集計対象は2021年中に公開されたものとします。

 

ゆるキャン△SEASON2 4話「バイトのお金で何を買う?」

脚本:田中仁 絵コンテ:黒沢雅之 演出:鈴木薫 作画監督:竹本未希

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 「ソロキャンプ、やってみたいな」の呟きが冬の景色へ溶ける回。なにか新しいものを好きになれるかもしれない、自分でも出来るかもしれない。そんな気持ちがぽつんと浮かび上がる瞬間に私はたまらなく惹かれてしまうんです。

 特にこの場面は演出、テンポ感、音楽・・・と渾然一体のアニメーションとしても素晴らしかったです。走り出す楽しさとは裏腹に警告色を次々に通り過ぎ、階段を越えるとBGMも消える。だけど寒くて空っぽのホームは不吉なものではなく、むしろ暖かな孤独と期待に満ちているのを感じられました。それはきっとリンちゃんが ”楽しい” と言っている生の風景で、じんわりと引くカメラにも単なる "寂しい" ではないこのアニメだからこその滋味深さを持って見えました。

 これだけセンセーショナルな場面を見せた後、「天丼!」の一言で同じ場所を爆速で引き返すのもお腹痛いくらい笑っちゃって。そういう雰囲気もすごく楽しいアニメだったよね。

 

ホリミヤ 7話「君がいて、僕がいて。」

脚本:永井千晶 絵コンテ・演出:奥田佳子 作画監督:河合拓也、清水裕輔

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 天真爛漫に見えてその実誰よりも繊細で面倒くさい、吉川由紀という人間の屈折した内面が見える一幕でした。

 当時、恋敵になる河野さんは無知と色香で石川くんを惑わせる人物に見えてました。そんな人が渡してくるクッキーなんて受け取らなくていいよ・・・! って思うのに由紀ちゃんはそうは出来ない、きちんと食べてしまうし、ゴミ箱という選択肢があったことに自己嫌悪すらする。こんな心優しい子には絶対幸せになってもらわなきゃ困るという願いと同時に、この子はきっと報われないんだとも思ってしまって。青空でみんなが笑ってくれる中ぐらっと影が入る笑顔にも、今はここまでの幸せが精一杯という印象でグッと来ました。

 

SK∞ エスケーエイト 10話「言葉のいらないDAP」

脚本:大河内一楼 絵コンテ・シーン演出:林明美 演出:高田昌豊、山本貫之 総作画監督:千葉道徳、菅野宏紀、徳岡紘平

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 レキ君にとって最も辛い時期にあり、それでも最後の最後で好きを諦めきれない気持ちが執念のように残っていたことがすごく嬉しかったです。

 蹴飛ばしたスケボーをそのままに立ち去るところ。これを越えればアウトという局面なのは分かりつつも、長い間精神的に本当に参っているのも伝わっていて、この時ばかりは大切なものを見限ったって仕方ないよと思っていました。事実、画面から完全に歩き去ってしまうけれど、そこから戻ってきてくれた瞬間には思わずガッツポーズをしてしまいました。他にも大人である店長と話す路地裏のシーン、忠さんとの邂逅、海辺のラストも最高。

 

ワンダーエッグ・プライオリティ 6話「パンチドランク・デー」

脚本:野島伸司 絵コンテ:篠原啓輔 演出:山本ゆうすけ 総作画監督:高橋沙妃 作画監督:山崎淳

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 大人と子供の中間点、柔らかい心にナイフを入れグチャグチャにされるようだった本作から6話を選びました。印象強かったのは一度は席を立ったアイちゃんが嗜められて結局戻るシーン、凄く嫌でも場のためお母さんのため子供が黙って泥を飲む・・・ のが胸を締め付けられる思いでした。

 特に最後、瑞々しい青春走りの先で、先生への気持ちが好意と気付く場面が本当に辛くて。14才だよ。熱を知った卵はヒナや鶏にならないままオムレツとして皿にあがり、未熟で黄色いシャツの少女は食べられるものとして大人の前に現れる。これがアイちゃん目線から最高に美しく描かれてるのが本当にどうしようもない・・・。そいつ抱き着かれて平然としてるヤバイやつだよ! とは、当事者じゃないから思えるんだけどね。

 

スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 6話「リヴァイアサンが来た」

脚本:高橋龍也 絵コンテ:木村延景、鈴木清崇 演出:高田恭介 総作画監督:後藤圭介 作画監督:原科大樹

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 アニメーションという枠の上でキャラクターが瑞々しく息づいていること、そして疑似でも確かな ”家族”をそこに感じられるのが素晴らしい今作でした。中でも特に輝いて見えたのが6話、ただし全話を通しての感想だったことを加えておきます。

 キャラが生きるって少し言葉足らずかもしれません。絵が美麗でよく動くのもそれ自体スゴいことですが、人物の中に確かな感情があり、感情を発信して受け取る向きがお互いの間にあり、それが動きや視線を通して表になるような感覚を今作には覚えます。しかもそれは日常仕草に溶け込みながら伝えたいことがハッキリしていて、意識してなくてもスッと胸の奥まで届く。楽しいお話なのも相まって見ていてすごく心地いいんですよね。一つの描き方という以上にアニメ全体の力として、この世界で暮らすことの意味や幸せをこうやって表現できるんだ、と目の当たりにするとやっぱり面白いしアニメ見てて飽きることは当分無いなと思うんです。

 

やくならマグカップも 6話「空と風の庭」

脚本:荒川稔久 絵コンテ:神谷純 演出:尾崎正善 作画監督:佐藤多恵子 プロップデザイン:滝れーき

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 「どうやって出したんだろう、あの色。」 自分の中から不意に”好き”が動く瞬間がたまらなく嬉しかったです。

 5話で好きなことをやらない、やらないことにホッとするという最強の話に参ってしまって、周りの励ましも本当に嬉しかった上に、まだ足りないと思ったところへ続いたのが6話でした。モニュメントを見て真っ先に自分がやるならどうかを考えてしまうような、周りだけでなく自分からほんの少し湧くナニかの感覚を知ってしまうと、もう誰にも止められないものだと感じます。それはたぶん陶芸に心中複雑だったお父さんでも。6話はまだ訳の分からない未熟な気持ちながら姫ちゃんが”好き”を持つ大きな転換点だったと思うし、陶芸に限らず何かが好きな人にとって何にも代えがたいエッセンスを感じた回でした。

 

不滅のあなたへ 12話「目覚め」

脚本:藤田伸三 絵コンテ・演出:むらた雅彦 作画監督:薮野浩二

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 花があり恋がある物語だったタクナハ編、その青年グーグーの雄姿。この回を見た後はしばらく何も考えられなくなって寝込んでしまいました。厳密には11,12話を通しての感想です。

 指輪、紫色の花……と過去の行いはちゃんと巡って大好きな人まで伝わる、報われるのが嬉しくて。テラスでの二人の最高にドラマチックな答え合わせからはもうずっと釘付けにされて観ていました。グーグーの優しさと不器用さ、そして彼が思わず恋をしてしまうような女の子リーンを描く筆圧にも熱があり、心を掴まれるには充分すぎるほど魅力的でした。

 ラストまでの展開には言葉にならない思いがあります。ただ、後悔の残ったマーチの見つめる中グーグーが清々しくいられたのは一つ良かったのかな。OPで映る各々の在りえなかった姿…… 炎の王子様は本当に恰好良くて、それは”一生キスの出来ない顔”とは違う空想だけど、事実ちゃんと結ばれて守るべき人も守ってみせたもんね。グーグー本人にとっては劇的で満足できる結末なのかもしれない。でもさ・・・ ちょっとカッコ良すぎたんじゃないの・・・。堂々の10選入りです。

 

小林さん家のメイドラゴンS 12話「生生流転(でも立ち止まるのもありですかね)」

脚本:山田由香 絵コンテ:山村卓也、石原立也 演出:石原立也 作画監督:角田有希

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 どの回も選べる贅沢な悩みをしましたが、大ラストでうれしさが爆発した12話にしました。放送前は1期と雰囲気が変わってバトル系になってしまうのでは…… と不安があったのも、むしろ新しい事・やりたい事を含めてパワーアップしたようにすら感じた大満足の2期でした。

 やりたい事は例えばアクションで、ビームなんだろうと(主に監督が)。12話はあの宴会ごちゃ混ぜな中でゴキゲンなビームをぱなすところが、堪えきれずつい出しちゃった感があって爆笑してました。それに、あの桜の下で楽しんでいたのって「小林さんちのメイドラゴン」のキャラクター達に限った話では無いと思うんです、クレジットされた人間達も確かに楽しんでいるのが伝わってくるようで。最後に残っていた ”イシュカン" はキャラクターと人間の差、アニメの内側と外側の壁で、制作者も視聴者もまきこんで噛み潰せば全員が一緒になって今を笑っていられる。何よりも見ていて最高に幸せなハッピーエンドでした。

 

かげきしょうじょ!! 8話「薫の夏」

脚本:松本美弥子 絵コンテ:阿保孝雄 演出:江副仁美 作画監督:三橋桜子

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 眩しすぎたひと夏のお話。捨てなければならないものを捨て、自分の意思で夢を目指す姿は苦しくも本当にかっこいい。それでも紅華へ続く日傘を一度きり手放したシーンでは観ていて同じように画面に食い入ってしまうほど衝撃的でした。

 輪をかけるようだったのはラスト、過ぎ行くバスに乗らない2人、夢から降りた世界線の幸せな写真。もし違う未来を選んでいたなら、夢は真っ黒な影になっても人並みで笑顔の生活があったんだろうね。だけどそうじゃなく、2人がそれぞれの輝きを目指し続けている限りいつかまた別の形で出会える。その時、もしかしたら今こんな生活をしてたかもしれないねって茶化し合える日が来るなら。どれほど素敵なことだろうと思います。

 

王様ランキング 9話「王妃と盾」

脚本:岸本卓 絵コンテ・演出:今井有文 作画監督:荒尾英幸、北村友幸、日浦玲奈、野崎あつこ、小笠原真、土上いつき、藤本航己、村田理、前並武志、spike、桝田浩史、今井有文、青木駿介

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 ヒリング王妃という鼻の高い人物、その子供を想う母としての振る舞いが極まった回でした。このアニメ第一印象も善悪もとめどなく反転してギャップにずっと殴られてる感じするよね。

 闇をさまようダイダ様の表情、短い手足で駆け寄る姿にどうしようもなく心細さと守るべき子供を思わされました。こういうの…… 胸がギュッとしてしまいます。アニメを見ているとたまに、居てもたってもいられなくなった瞬間、登場人物がさらに上回るパワーで代弁してくれることがあって*1。ヒリング様の子を守らんとする姿はまさに200%の全力さでした。真っすぐに王座を睨む視線、見えない子供の助けに応じて探るようにふらふらと、だけど確かに距離を詰めていける感触もたまらなく良い。

 

その他候補

・SHOW BY ROCK!! STARS!! 10話「キミはボクのプリンセス☆」
・IDOLY PRIDE 12話「サヨナラから始まる物語」
・たとえばラストダンジョン前の少年が序盤の街で暮らすような物語 5話「たとえば雑誌に載っていたモテる口説き文句を真に受けてしまったような大胆な誘いっぷり」

・極主夫道 (話数選択なし)
・Fairy 蘭丸~あなたの心お助けします~ 9話「冷淡」
・灼熱カバディ 3話「灼熱の世界へ」

・バクテン!! 5話「かくれたい!」11話「全力で、思い切り!」
・スーパーカブ 4話「アルバイト」
・ゾンビランドサガ リベンジ 11話「たとえば君がいるだけで SAGA」

・美少年探偵団  10-12話「D坂の美少年」
・SSSS.DYNAZENON (全体 話数選択なし)
・乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X 1話「破滅フラグを回避したので文化祭で浮かれてしまった…」8話「お見合いしてしまった…」

・ヴァニタスの手記 5話「Réminiscence-友-」
・チート薬師のスローライフ〜異世界に作ろうドラッグストア〜 1話「本日の処方箋 その①猛烈ポーション その②ランデンフラワー茶 その③ボタニカル消臭液」
・ラブライブ!スーパースター!! 6話「夢見ていた」

・白い砂のアクアトープ 5話「母の来訪」21話「ブルー・タートルの夢」
・Sonny Boy 11話「少年と海」
・RE-MAIN 12話「さぁ、始めようぜ」

・ブルーピリオド 1話「絵を描く喜びに目覚めてみた」
・大正オトメ御伽話 3話「黒百合ノ娘」
・月とライカと吸血姫 7話「リコリスの料理ショー」

・吸血鬼すぐ死ぬ 10話「平成迷惑な吸血鬼合戦シンヨコ ほか2本」
・SELECTION PROJECT 10話「ただ 歌いたくて」
・舞妓さんちのまかないさん  6話「同じ雪を見ている」

・逆転世界ノ電池少女  12話「きみと(みんなで!)逆転したい!」
・先輩がうざい後輩の話 2話「うどん、ときどき満月」
・ジャヒー様はくじけない! 20話「ジャヒー様はくじけない!」
・ヴィジュアルプリズン 7話「My Principal」8話「銀河ティアラ」

 

おわりに

 今年もおつかれさまでした。ブログに毎クールの感想を書き始めたのが約1年前ということもあり、この機会にと参加させていただきました。

 数多くの作品から10個を選ぶのはうんと迷ってしまうので基準を設けて、好きだった理由がアニメと原作のどっちにあるか、個人の性癖になってないかは何となく振り分けました。だけどまあ、好きならそれ以上も以下も無いよね。候補となった話数も気持ち一つで入れ替わるほど確実に面白かったです。

 2021年も本当に楽しく過ごせました。アニメ関係者の方々に心より感謝しつつ、2022年もまた素晴らしいアニメに出会えますように。

 

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*1:例えば『ゾンビランドサガR』のライブ後に幸太郎さんがフルパワーで泣いてくれたのとかも良かったね。