2021秋アニメの感想

秋アニメも楽しかったね。

前回に引き続き、来期アニメをチェックしながらの随時更新にします。いつも読んでくれてありがとね。

<更新履歴>
2022/01/08 初回更新
2022/01/11 うざ先輩 / 見える子ちゃん / ブルーピリオド
2022/01/14 電池少女
2022/01/16 ルパン三世 / サクガン / 王様ランキング
2022/01/22 まかないさん / 最パラ / アクアトープ
2022/02/20 ぐんまちゃん / セレプロ / ヴィジュプリ / やくも二番窯

 

 

極主夫道・極工夫道(後半クール)

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 2021年は極主夫道のおかげで毎日笑って過ごせました。ありがとう極主夫道。

 特に笑ったのは第51話の地酒回。雅ァ……が突っ込み役に回るほど何もかもが機能してない、画像はいい年した大人たちが揃いも揃って大惨事なところから。他にも絵本読み上げとか柴犬自慢の回とかもすごく好きです。

 極主夫となり理想のその先へたどり着いた津田健次郎概念も健在。お休みと決めた日に気になる汚れを掃除してるところとか解釈一致すぎました。解釈とは?

 

吸血鬼すぐ死ぬ

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 No.1サイコーアニメーションでした。週1本アニメやる間に吸死は7本やっててほしい。あまりにも楽しくてばかばかしいから一日のアニメ視聴のうち2本目,3本目とかに見ることが多かったです。キャラデザにはイナイレシリーズの方が入ってるらしいよ。

 すべて身を委ねてドラルクさん達を眺め、小学生男児のやりとりを見守り、ぬーを崇拝する。疲れた日にはなんならお酒も開けちゃう、これに限ります。大抵は果てしなく下らない話だけど、ネタの割に不快さは全然無くひたすら笑って幸せな時間を過ごしました。なにやってんねんこの人たちって愛しさが止まらなかったです。1話のコンビニ人質から始まりガールズがめっちゃ強いのもあるかも。私的にはドラルクさん達がジョンに話しかけるときの「ジョン、これが私たちのお城だよ」「良かったねえジョン」って優しい語りかけが大好きです。ロナルドさんがジョンのおててに指を置く持ち方も大好き。

 好きなエピソードを摘まむと半田さんの登場回はどれもお気に入りです。超いい子。初登場4話でロナルドさんに敵対しながらむにむに頬を擦りつけてるところですべてを悟り微笑んでいました。同じ話数だと野菜が吸血鬼化する話も好き、ドラルクさんの「なあ、もしかしてキミって私が思ってる以上にあほだったりする?」って台詞が尖ってて。後のシンヨコでも片鱗があるけどロナルドさんって実は誰よりも精神年齢幼いんじゃ・・・? かわいいね。

 サブキャラ、あれをサブと言っていいんでしょうか、面子とおじさんボイスがとにかく濃ゆい。OPの先取りで出て来る吸血鬼たちを(とはいえシリアスな敵なんだろうなあ)と思っていた日が遠い昔のようです。おばかしかいない。Yおじのあのチェック柄スーツでナイスなお顔から小学生の表情が飛び出るのいとおしいな…… 野球拳の人と組んだときは別の意味でこの世の終わりを感じました。ナギリさんはまだ悪役の矜持があったね。8話ジョンが誘拐されたときは皆が大山鳴動して探してくれるのがうれしい。普段はあほでもイザというときしっかり動ける優秀な大人たちなんです…… 底の方でちゃんと秩序があるからこんなに好感度マシマシで笑えるんだね。

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 や~~~ 10話お祭り回、ズルい。9割5分こんな調子のアニメがほんの少しだけイイ話で終わったら簡単に転がされてしまいます。Aパートは屋台に照らされたドラルクさんのお顔もいつにも増して大変よろしかった…… ドラルクさん軽薄に見えるけどちゃんと紳士してるもんね、たぶん。これ絶対Bパートでド下ネタやるつもりでしょって思ったら大当たりでした。

 小学生っぽさを言い換えて、やっぱり登場人物がピュアなところに惹かれてるんだろうなぁ…… それこそドラルクさんは200歳でその間楽しい家族とゲームに囲まれて育ってるんだもんね。長い時の中に何も思わないわけではないと思うし、死ねない体を憂うよりも面白おかしく生きていられるのが、あの屈託のない笑顔に感じたうれしさだったりするのかな。怪しくないよ~って呼びこむ怪しい店に自分から進んで入るシーンとかすごく「っぽさ」のある場面に思います。

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 2期決定めちゃめちゃうれしい。2期はハメを外すと言ってるそうですね、今まで外してなかったのかな。

 

でーじミーツガール

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 1話90秒のショート枠。クリエイター気質あふれる作品で小物ひとつ取っても打てば響く心地良さのあるアニメでした。
 特に水中・空を問わない浮遊感の表現が圧巻。浮き輪の杭に使えるけど手を離せばどこかへ漂っていくような粘っこい動きとか見てるだけで楽しいよね。魚の流れに引っ張られて胸倉から浮くところとかも。

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 淡い水中に限らず、青空を突く大木*1、夕暮れ、怪しい生き物と楽しい題材が次々に出てくるお話でした。こうして並べて見ると朝の気配から夜を一周してあのラストに繋がってるのかも。あと現実に戻るシーンや来客の豹変などパッと転換して驚くような場面も多々ありました。あれは絵コンテの手癖なのかな。MV的な強いカットが続いても2分のためすっきりと見られました。

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 最後で今までの体験が駆け巡るのがいいよね。これはやっぱりアニメだから単に映像を見て消費したのではなく一緒に駆けてきた思い出なんだという感じがします。

 

大正オトメ御伽話

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 よかったね珠彦さま・・・。
 大正浪漫の恋愛話ってなんだか久しぶりに見る気がします。制作のSynergySPは前クールの『出会って5秒でバトル』が記憶に新しいです。森の背景とか一部を見てると急に蘇ってくる。

 普段なら ”女は家に入って家事するのが幸せ” みたいな話は好きじゃないけど今作はそこを乗り越えるだけの魅力が見えました。そういう時代だという設定もあるけど、夫にとって単に都合のいい妻ではなく、気立てそのものに芯の通った美しさがある印象を受けて。お魚の骨まで取って食卓に上げるとか令和じゃ絶対やらないもんね……。お金や距離の単位だけでなく振る舞いからここが大正時代だと分かるのも面白かったです。

 1,2話はそんな風に見ていて、だけど3話ではまた見方を変えられました。今までの珠彦さま越しに妻としての夕月さんを見るところから、珠子さんから直接夕月さんの人となりを見るところへ。私はこの珠子さんに妙に感情移入してしまって、「もし本当に夕月さんがお姉ちゃんに居てくれたら」と胸に響いてしまいました。もしくは不意にオトされてしまったのかも。これまでも夕月さん良い子と思ってたのが、もっと大きな包容力や生来の優しさに触れたような、そこから言葉をかけて救ってもらえたような気がして。ユヅ姉さま・・・。

 なんといっても珠彦さまが可愛いかったです。用意したご飯に手を付けないのはキレてた覚えもあるけど。初期のどうしようもなく不貞腐れた珠彦さまから、だんだんお礼を言えるようになり、先生と呼ばれるようになり・・・ その姿を見る度に「よかったね」と涙ぐんでしまいます。私の中でよかったねは1つあればこのアニメ観てて良かったと心から思うレベルの嬉しさで、『大正オトメ』は毎話のようにそれが押し寄せてくるアニメでもありました。

 綾さんの介入、珠彦さまの登校と、後半にかけてグサッとくる話も多かったです。綾さんの回は普通ならもう挽回は無理だと思ったし、登校は心配で仕方ないのに黙って見送るしかない不安も痛いほどシンクロしてしまいました。あの・・・あの珠彦さまが、家に学校のお友達を連れて来て、それから本当の意味でもお友達が出来たとき、嬉しくてお赤飯買いに走りました。白鳥のお兄ちゃんほんとにありがとうね・・・。

 小さいユヅ姉さまがデッカいご飯炊いたり重い物持ち上げるところ大好き。買い物カゴや布団の山、かと思うと一番重たいの持ち上げてるのはOPだったり。今までずっとユヅ姉さまから差し伸べて引っぱり上げてきた手、そして最終話で ”手” がもう一度映るところがものすごく良かったね・・・。

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見える子ちゃん

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 大丈夫大丈夫、ヤバいやつなんて居ないよ、おるわ。ロッカーとかそんな前振りして居るわけないじゃん! ほらね、全然おるわ。なんか無害そう…… ボリボリ食っとるわ。数珠来たこれで勝てる、ああーーだめだ

 そんな感じで笑って見てました。私的な理由でこのアニメは実験に寝る前の安眠用として見ていました。最近席に座って行儀よく見るだけがアニメじゃないかもという思いがあって。ただ今作は間違いなく画面的に気合の入ったタイトルだったので結局は見流すより見入ることの方が多かったです。

 一発ネタかと思いきやめちゃめちゃ楽しめました。ビックリさせるために手を替え品を替え工夫する営みが大好き。化け物も最初のちょっと抜けた感じから、お父さんみたいなほっこり幽霊も居て、気の緩んだところで本当にヤバいやつも出ると毎回気持ちの振れ幅が大きかったです。「どうせ~~だろう」みたいな思いが全然通じない。

 あと花ちゃんが超いい子・・・ 友達思いで明るくて、みこちゃんが変なことしたり空気読めない(けどそうしなきゃいけない)ことしても変わらず寄り添ってくれて。あんな子が友達にいてくれたらよかったなぁ。

 OPとEDも特に良かったです。OPはタイトルロゴの上をのっしのっし歩くところとか面白い、あんまり他で見ないユーモアがある感じがします。主人公の声の人の震え声もすごいよね。EDは合いの手化け物の「コタエニャ ソンソン♪♪」がめっちゃ好き。

 

先輩がうざい後輩の話

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 今期の動画工房枠その1 見るポイントは人それぞれだけど個人的には今期トップアニメでした。

 原作はどこかで見たことあるTwitter発祥の漫画、当時は流れてくるたびに読んでました。1話居酒屋で口が滑るところとか確かに大盛り上がりだった覚えがあります。監督は『イエスタデイをうたって』の副監督から、あっちも人によって視聴態度が変わる作品だったかな。

 アニメで身長差がある2人が出たときの差を見せびらかすような画作りが好きで、今期は『大正オトメ御伽話』『ルパン三世 PART6』でもおいしい思いをしました。だけどうざ先輩の場合はもう10割バッターなんです。オフィスは四角いものが多くて空間を区切ってくれるし、レンガっぽい横に線の入った背景もかなり仕事してました。他の人と距離があるときも並んだらこのあたりかなーとか、そして本当よりもちょっと誇張して差をアピールするところにも遊びがあります。座ってる桜井さんと並んでも画面上が見切れてないってどういうことなの。

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 小ささのアピールは可愛さに繋がるけど、それと同じくらいデッカい人が居て小さい人のため守ってくれるのが良いんだよね…… 画面いっぱいに近づいてくるところとか思わず後ずさるほどの迫力でした。そんな人ふつう怖いけど、実際はどこまでも優しくて、仕事もちゃんと出来てピンチには必ず駆けつけてくれる。カッコつけちゃってさ・・・カッコイイじゃん・・・。

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 シンプルで分かりやすいお話の中にアニメーションとしての旨みがギッシリ詰まったアニメでした。確かに ”すごい契約” とかモブの扱いは記号的に感じたけど、そこを細かくするよりは何か出来事を受けた後のリアクションだったりが嬉しかった思いです。現実として会社でイベント事とか人間関係持ち込むのはもちろん嫌ですが、会社が何をやってるかもわからないフワっとした描写だったおかげか、ファンタジーと割り切って視聴できた気はします。

 OPすっごい・・・ 感動しました。音ハメ的な気持ち良さもそうだし、動画作成やスマホ越しの撮影なんかも相まって実在感もあり。なにかキャラクターを生んだ人にとってあの画面よりちょっと近い場所で息付いてる様子を見られるのって代えがたい感慨があるんじゃないでしょうか。武田先輩が ↑ を指差すところとか五十嵐さんが頭を揺らすところ、「晴れの日だって...」からの芝居付けも本当に楽しい。もしこんなアニメが出来たらと思うとワクワクします。

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www.youtube.com

 

ブルーピリオド

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 この絵を見たとき嬉しくて仕方なかった、原作の力を含めれば今期『ブルーピリオド』が一番面白かったです。

 美術をテーマにすると大抵の人は遠い世界に感じると思います。そこを今作は非常に論理的に、美術に向かう人が何を考えてるのか、そもそも考えなんてあるのか、良い絵って何が良いのかを1から説明する丁寧さを感じました。私も美術を知っているとは言えない人間ですが、このアニメを見た人が何か通じるものがあったか、やっぱり対岸の火事で没入できなかったかは結構気になっています。

 1話、森先輩の絵を見て「は? 緑じゃん」って思うところ、あれがものすごく良かった。絵を見るって結局その積み重ねでしかないからです*2。八虎はすでに大切な一歩を体験してるし、その後の「渋谷の朝ってなんか良くね?」って漠然に思うのもめちゃくちゃに良い。ここまでは誰にでも出来ることだけど一番大切なことです。

 でも滅多にやらないのはそれを形にすること。ここを先生の導きと、ある意味義務だった授業を通して1枚絵が出来上がる。たとえ周りより下手でも1つ出来上がりまで行くのがすごく嬉しいじゃないですか。だからもう見てて満足してたのに、不良友達の子が「なんとなく分かるわ」って言ってくれるんですよ。めっっちゃいい子・・・。褒めてくれなきゃ一時の迷いで終わりだったかもしれない。しかも恋ちゃんが「あれ渋谷だろ」とまでコメントしてくれるのが一緒に泣くほど嬉しかったです。嬉しさがあればもっと枚数を描ける。細かいネタではティッシュを描くところも笑いました。初めて筆を持つ衝動に駆られた人は手元にあるティッシュ箱を描く、あの心理は何なんだろうね。

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 1話後半~2話までが初学のいちばんワクワクする時間、今まで知らなかったことが自分で手を動かすと見えてくる…… っていうのが本当に楽しいよね。八虎が2回,3回と試すうちにすっかり絵という手段を使いこなしてるのが気持ち良かったです。やっぱり素直で吸収が早い人だよね……。

 予備校の公表会、あれもいいなーーと思いました。今の時代になぜ予備校へ入るかって、自分の身を置く環境を買うのと、強くてヤバい他人に会うために入るんです。公表会で他人の絵と並べて、コメントを貰い、橋田さんたちと美術館に行ったりして自分に無かった視点を貰い、反映してまた棚に飾る。ここにお金を払う価値があります。それは最終ゴールだった美大に入るのだって同じことです*3。アニメだから普通に他人と関わるけど、必ずしも当たり前ではないなと思ったり。だから予備校編では八虎が自分より強い人たちを避けるんじゃなく、よく観察して自分の糧にできるところが何より嬉しかったです。しかも八虎が恥の無い人じゃなくガッツリ劣等感剥き出しなのが良い、「俺の絵で全員殺す! そのためならなんだってやる!」が多かれ少なかれ誰にも必要なんだと思います。厭世とかじゃなく、憧れのお前を絶対に驚かせてやるって意味で。

 先生が本当に人格者だよね。作中では生徒のほとんどがメンタルを崩したり奇行に走りますが、漫画っぽい誇張というよりも大体あんなもんです。どこまでも答えが無い世界だからこそ必ず不安が付き纏い、そこを先生がバシッとケアしてくれるのは見ていて救われました。過酷な道を示すのにも嘘が無くて。佐伯先生、大葉先生とも本当に尊敬できる大人・・・ 最終話では一緒にお礼を言いたい思いでした。アドバイスの中でも「良い(絵)は主張がハッキリしてる」はよく覚えています。そりゃそうって話だけど実際に出来るかは別問題。決して絵に限った話では無いと思います。

 八虎は人生を変えて美大合格を目標に定めました。だけどほとんどの人はそんな選択はしない、個人的にはそれでも全然いいと思うんです。いつでも何か新しいことをしてみていいし、同じことしてる人を見て刺激をもらうのだって変わらずに面白い。それこそ最後美大に落ちた人達だってあそこで人生終了ではないと思います。ぬるい考えだとも自覚しますが、今作を見ているとやっぱり色々考えてやる面白さというか、資格云々で諦めるのとは違うワクワクを感じてしまいます。

 

舞妓さんちのまかないごはん(~12話)

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 NHK10分枠のほっこりご飯もの。今期の隠れた名作でした。J.C.STAFFの実は『極主夫道』と脚本・シリーズ構成を同じにするタイトル、空気感は180°違うのにね。その例に漏れずか実写ドラマ化も決まったらしいよ。

 美術が圧倒的に良かったです。ご飯が美味しそうなのはもちろん、使い込まれた跡の見える台所とか、京都の街並みも美しさに目を奪われました。ごはんアニメだから当然台所にいることが多いけど、同じ場所でもその時々によって表情を変えられるのも面白い所でした。細かで複雑な"くすみ"のある描写も京都テーマなだけあって年月を感じられて。反対に冷蔵庫に卵を見つけるところも個人的には発見でした。白いコーナーに白い卵が並ぶって色みも形もまるで情報量が無いのに、これはキヨさんが初めてまかないさんとして居場所を得たときの食材だから、暖かみをこんな風にも描ける。決して白い〇とロがあるだけじゃないね。

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 街並みも良いよね、しかもただの京都という以上に夜なのが良い。各話に加え、11話「見習いさんの夜」は花街を次々に駆けていくシーンがものすごくリッチでした。怪しい暗闇と白く浮かんで存在感のある舞妓さん、舞台に立つ人を取り囲んで照らす橙~黄色の明かりにも花街と呼ばれて胸を張れるだけの華がありました。

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 舞妓さんがどういう生活してるのか知らなかったけど・・・ 地毛の髪をほどくのは週に1度で、髪を崩さないよう苦しい枕で寝て、コンビニにも入れないし、携帯も持ち歩けないって。絶対無理、ツイッターも出来ないよ。厳しくともそれでもなりたいと思う人しかなれない道のようで、だからこそすーちゃんの白粉姿は気高く美しいものに感じました。すーちゃんが舞妓さん衣装で出たとき思わずため息着いちゃった・・・ ほんまに綺麗やね・・・。

 舞妓さんが人間離れした存在なのが分かってくる中で、6話「同じ雪を見ていた」は特に掴まれた回でした。髪を結い、名前まで変わるのは、それこそ今までの自分すべてを殺して別人に生まれ変わるようなものだよね。戸来すみれはそれを受け入れるだけのストイックさを持ち合わせてる子だけど、同時に脆くて支えが必要な子というのも伝わっていて、もう目を瞑ってでも変わるしかないというときに「すーちゃん」って間違えて呼んでくれる人が居てくれる。その嬉しさはきっとキヨさんには分かってもらえない ものなんだと思います。自分を削ぎ落してでもくぐらなきゃいけない門を前に、変わらないキヨさんを見ていれば変わっても自分を持って行ける。なんてことない短い日にの話に自分そのものが揺れるほどの出来事が雪に積もっていく美しい回でした。あの雪が永遠に溶けなければいいじゃなくキヨさんが何食わぬ顔でざっくざくドカしてるのがまた良いよね。

 連続で続編もあり。すーちゃんの晴れて門出を迎えた先もすごく気になります。

 

最果てのパラディン

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 すごい硬派なファンタジーだよね、昔のオンラインゲームしてるみたい。
 作りこまれた世界観に圧倒されるアニメでした。背景と音楽がめちゃめちゃ良くて森を歩いてるだけでも面白い。個人的には主人公の少年ボイスが超カッコよくて毎話聴き惚れてました。『ゾンビランドサガ』の純子ちゃん役の人なんだって、納得です。

 ウィルくんが自慢げにフルネーム答えるところ全部好き。1~5話もの間やってた親との物語でばっちり惹き込まれました。始めはあの異形の人たちが悪者かどうかの疑心暗鬼な駆け引きにも気を引かれました、絶対いい人なんだろうけどまさかね・・・って。2話のCパートとかすごい怖かったです、散髪で刃物を持った人が後ろに居て、首元の布を取る思わせぶりな手付きにゾワっとしました。でもあんないい表情*4する人たちが悪者なわけないよね。これから何度も繰り返す誇りや教えといったワードも、あの英雄たちの意志ならと噛みしめるものがありました。しかも言葉が大切なこの世界で名前として在り続けるのがすごく良い。

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 見ていて何となく不思議な感触もあるアニメでした。なにか目的や結論が最重要でそのために動くというよりも、道中で見るものや起こす行動の1つ1つが面白いでしょって見せるようで。例えば神殿長から叙勲された時とか「パラディンになりました!」で済ましてどうこうするんじゃなく、あの長ったらしい儀礼こそが見せたいものだった気がします。丁寧過ぎるくらいの状況説明と語りがアニメ的な面白さに繋がるかは別として、世界を一歩一歩を踏みしめるようなワクワク感は確かに感じました。特に6話以降とか、ずっと閉鎖的に過ごしてきたウィルくんの目線と重なって視界が広がる感じすごく良かったよね。

 メネルドールさん・・・ いい人・・・。あんなに分かりやすくツンツンなのに細身で腕力じゃ絶対ウィルさんに勝てないところ、それでも大切な人の様子がヤバかったら美形を泥に汚してでも叩き起こすんだね…… それはパートナーじゃん。闇落ち聖騎士様の回はびっくりしたけどかなり好みが深い話でした。設定が緻密な分、旅の途中でこんなやり取りもしてそうじゃない? って想像も膨らむよね。2期はそのあたりも沢山掘り下げがあったら嬉しいなあ……。

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白い砂のアクアトープ(2クール目)

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 生まれ直しと喪失、そして失ったものをもう一度得るお話。1クール目でアクアトープを復習したおかげもあって、2クール目は輪をかけて面白く観られました。1クール目の感想はここから。

2021夏アニメの感想 - アニメ雑記帳

 雰囲気がガラッと替わりました、ただ驚きこそあっても違和感は無かった思いです。廃館になったがまがま水族館はくくるちゃんにとってお母さんを肩代わりする場所で、1クール目のラストは巣立ちの意味合いも含んでいました。親元を離れた人が何をするかというと、労働をするわけです。がまがまは同時に、命が消え、命が再生する場所としても描かれていました。そんな生命の母のお腹から出てきたくくるちゃんはある意味で生まれ直したとも、だから見える景色は大きく変わり、またイチから始める話なんだと納得できました。そういうところからもクールの間の橋渡しはすごく巧かったように思います。

 だからといって前後で全く別のアニメになった訳ではなかったです。それは前半たっぷり人の暖かさが描かれて親しみがあったこと*5と、一貫して2人の少女が日々を抗い失ったものを掴み直すお話だったからだと思います。失ったものは夢であり、居場所であり、かけがえのない人。一度無くしたら終わりではなく形は違っても取り戻せるし、それは地道に手を動かすことの先にある。というのが軸にあるお話でした。最後に2人がもう一度出会うシーンで幕を閉じるのがあれ以外無いくらいだったよね。

 ひとつひとつ手を動かす、を切り取る画角が美しかったです。テーマに対して魂がこもった描写でした。手を動かすことを「仕事」とレッテル貼りするといかにも義務でやりたくないことだけど、作中ではやったことが確かに大切なものを守ることへ繋がっていくのが心地よかったです。やれば報われるかなんて神様しか知らないけど、それは当事者的にいえば "手を動かしていれば気が紛れる" もあるんでしょう。中でも良かったのは24話の仕事ぶり、あれは水族館を作り直してるんだね。守れなかった居場所はもう一度作ることもできる。そのためにクレーンを動かし、バケツを運び、空の水槽に命が入り・・・ と、ひとつひとつをじっくり映すところに熱がありました。

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 くくるちゃんの印象もどんどん変わって見えました。1クール目では居ない姉の代わりをするよう背伸びして空回っていたのが、反対に2クール目は甘えたな妹キャラのようで。がまがまに託していた家族の影を受けて新しく依存先になるのが風花ちゃんだけど・・・ OPの風花ちゃん見た? 佇まいの大きさがもはやラスボス並みだよね*6。2人が家族を演じる場面があるたびに微笑ましいようなもどかしいような気持ちでした。離島へ飛び出したときとか、くくるちゃんはじっとしていて、風花ちゃんはわざわざ一歩追い越し盾になって外の人と挨拶する感じがいじらしくて。姉妹というよりむしろ保護者の関係にも思えました*7

 2人はそのままの役割を続けてもよかったけど、だからこそくくるちゃんの方から「風花をお姉ちゃんにさせちゃった。」が出て来るのが衝撃でした。風花ちゃんが妹を守るため手を尽くすのは、くくるちゃんががまがまを守るため籠城した日にも重なる気がします。だけど2クール目のくくるちゃんは守ろうとして叶わなかったことを知ってるし、その先で新しく作り直せることまで知ってる、だから風花ちゃんとの今の関係を崩すあの台詞を言えるんだね。終わりと始まりを繋ぐ営みはこれまでがまがまが担ってきたことで、建物は潰れてもその心はくくるちゃんへ確かに受け継がれて見えました。きっとくくるちゃんは飼育員を辞めたのでも営業になったのでもなく、その先で立派な館長になるんだと思います。

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 神様(キジムナー)って結局何だったの? と思った人も多いかも。解釈が任せられる存在だったのであくまで個人的な感想だと、人がひとつひとつ手を動かし日々を生きることの対になるものだったと思います。あの世界にもし魔法や神様の業があれば地道な作業なんて馬鹿らしくてやってられないんですよね。だから2クールが始まる頃は神様に出張らないでね・・・ とお願いする気持ちでもありました。実は後期OPの歌詞に "神様" のフレーズは出ていて、この先に続く未来を唯一知っている存在なのかもと思います。そんな神様が投げた紙ヒコーキが一度も下を向くことなく空に上がっていったのだから、目の前の事に取り組んで一杯一杯な人々がたどる軌跡もきっと明るいものになると信じられます。

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 単話レベルで書き切れないほど重厚かつ繊細で見応えのあるアニメでした。一方で深入りせずとも美術の美しさとキャラクターの個性も強く満足できる作品だったと思います。やかましさんが一瞬の隙も無く女の子を避けるところ全部好き、朱里ちゃんも周りが頑張れる人だらけな中で必要不可欠な人だったし、櫂くんのシャイボーイさも健在でした。櫂くん最後にペンギンカップルの成立見て「年の差も性別も関係ないんだよ」って言われるのお揃いのキーホルダー付けてる2人がいるアニメで事実上の敗北通告だよね……。最高に楽しめた半年間でした。

 

逆転世界ノ電池少女

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 ズルいくらい楽しい! 個人的にはめちゃめちゃハマったアニメでした。制作はLerche(スタジオ雲雀)のオリジナルアニメ。テロップの出し方には『彼方のアストラ』っぽさがありました。

 なにがズルかって1話でときめきエンジンの解説が入るところ、オタク演出的に盛り上がれば盛り上がるほどパワーアップする! なんて言われたら最終回でやることはもう決まってしまうんです。だから最終回は万全の心構えで迎えられました、実際はそれを超える熱量をぶつけられてキャッキャしてました。線の集合になった勢いのある構図が多くて、これがまたちょっと古臭いのが良いよね。

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 オタクカルチャーと ”好き” がテーマ。敵になる真誅軍の幹部は『サクラ大戦』をはじめ各々イメージ元があって 現代アニメ vs 90年代アニメ の図になってたらしいよ。ただ味方のアラハバキ陣営は現代的というよりは一世代前のオタク像でノリに着いていけない人もいたかもね。最近ってむしろ(俺は無キャだ・・・)みたいな没頭する趣味が無いことに苦しんでる人が多い気がします。その立ち位置をネオ現代オタクの細道さんが埋めてくれたのが良かった。最後の「(女の子を)とっかえひっかえだ!」とか発言は最低だけど、アニメ・アイドル・ゲームのどこでも自由に好きでいていいし、気分次第で行き来してもいいよって捉えると無いハードルが下がるような気がします。

 オタクはこういうの好きでしょ? って小ネタも満載のアニメでした。好き。昔のネタは分からないけど、充電部屋のポスターとかいちいち止めて確認しては「これ〇〇じゃない?」って話し合うのもすごく楽しかった思い出です。あとサブタイが9話あたりで逆転しかかった時とかスクショ撮って、これもしかして……! って言い合ったり。楽しいね。

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 あと地味~にモブの面々が大好き。なんか、いつまでもこんな風で居たい。まるで毎日眺めてるくらい妙な親近感がありました。世の中が大変だから一応アラハバキに所属してるけど第一優先は自分の好きに従うのとか、口数が少なくとも「やたー」で通じ合ってるのとか。特にみんな顔を隠しても心のまま好きに生きていけてるところが良いよね・・・。反対に無法者が許されてるわけでもなく、9話では秋アニメ生粋の悪役宗方さんの1人の行動でアラハバキ全体が悪く見られるのもリアル。総じてオタク文化と呼ばれる表面をなぞるよりも、もう一歩踏み込んだ解釈が詰まって見えました。そういうのたとえ世代や自分の解釈と違っていたとしても嫌いにはなれないです。

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 理解の不一致というとアカツキさん達の真誅軍が全員、倒す相手を見て判断しようするのがすごく良かったです。あの人達は戦いこそしたけど敵じゃなかったんだね*8。真誅軍は空っぽじゃなく祖国が好きで、ロボットも愛国心に限定して動くようにしてたけど、言い換えると自分の ”好き" に制限をかけてそれ以外は認めがたい人でもあったのかな。よく「最近のアニメはだめ、昔の○○作品こそ至高」って拘りを持つ人も見かけます。だけど拘りを持つのが悪ではなく、そこも尊重された上で、弾圧ではない見て判断する視座を持っていれば、ハヤテさんとりんちゃんが秋葉原巡りしたように手を取って色んな楽しいものに触れあえるんだと思います。

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おまけ

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運転手「コックピットに誰か乗ってる・・・誰だこの野郎!?

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 このアニメが私の中でズルだった理由がもう一つあります。根拠に乏しく妄想全開なので笑って見流してください。

 2010年に放送された『神のみぞ知るセカイ』というアニメをご存じでしょうか。自分語りになりますが私にとっては運命的な出会い*9をしたアニメです。本作『逆転世界ノ電池少女』とはキャラクター原案が同じ渡辺明夫氏で、第1話の放送時は顔が似てると囁かれていました。それだけならよくある話ですが、話数を追うたび、どうにもキャラデザの一致では片付かない思いがしてしまうんです。

・ 集積回路のED / OP

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・ アイドルのサビ歌詞 武道館で歌えない / 武道館で歌える

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六つ葉 / 四つ葉のマスコットと台詞(改変AAの方が有名かも)

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黒猫 / 三毛猫のスタンガン

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  好きが空っぽの主人公 / 好きが溢れてどうしようもない主人公
(女の子に心の空っぽを埋めてもらう / 女の子の心のスキマを埋める)

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  あとはデフォルメ体になるところや表情の引き出しにも近しいものを感じました、それはキャラクターに含まれるかな。

 『神のみぞ知るセカイ』の制作だったマングローブは無念を抱えた会社で、多額の借金をした末に現在は倒産しています。『GANGSTA.』の騒動といえば伝わる人は伝わるかもしれません。スタッフクレジットを確認してもキャラ原案以外の接点は見つからず、他に言及のある記事なども見つけられませんでした。だから空似と言われればそれまでだけど、もしも夢想が許されるなら、かつて散った人々の無念からの「逆転」の息吹を思わずにいられないのです。

 なにか手がかりがあればコメントにてぜひ教えて下さい。情報キボンヌ。

 

ルパン三世 PART6

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 シャーロック・ホームズの回+ゲスト脚本家による単話の構成。よくこなれた物語は本当に色んなことができて、変化、時代、はたまた脚本の思想を受け入れてかつルパンの物語として再編できるのが面白かったです。

 昔のルパンはぎりぎりお茶の間で見たことがありました。あの頃なんとなく見てたのに比べると、挙動一つの面白さに目が行ったり、カーチェイスってあれ凄いことしてるんだな~とか色々とアニメを見る姿勢が変わったのを感じます。面白いものをより面白く見られるように、少しでもなれてたらいいな。

 キャラクターを縁取る線が尋常じゃなく美しかったです。線数は少ないのに顔立ちの可愛さや精悍さ、老齢な人など、一目見てはっと飛び込んでくる魅力を感じました。近代のアニメでいえば線数は増加の一途*10で、それはそれで美しいものな一方、ルパンのデザインからは引き算の美を感じました。

 この巨大な作品性の前では些事ですが、個人的に好きだったのはリリーの目線に合わせてホームズが膝を折ってあげるシーン。最初ホームズは街の皆から愛されてる様子が映されるので「ほんとに~?」と思いつつ、このカットを見ると、何となく子供のリリーに対して大人が必要以上に縮こまってる感じがして。目線奥のラインとのズレや右に詰まった道路のおかげでそう見えるのですが、ここに限らず、細かい気配からホームズという人がなにか謎めいて後ろめたさを持つ人なんだなと気になって出だしを掴まれました。

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 「その事件には、裏がある。」を1つのキャッチコピーに、根っこを返せば大したことはなかった、犯罪組織は存在しなかった、と全体的にちゃぶ台返しが大きいお話だったと思います。スケール感は反対に、実はVR世界の実験だった、神様の手中だった、とトンデモない結末へ突き抜けて行った時もまんまと踊らされました。あの挿話をして辞書を片手にしたり押井節がどうこう…… と見る気は私には無いですが、見ている内についついのめり込んでしまう視聴だったのは事実です。ダイナーの殺し屋とか途中まで "壮大に何も始まらない" みたいに本当に何も起こらないのかと思ったよ。

 2クール目のキーワードは女。第0話の次元が時代を語ったように、現代のアニメ作品群と肩を並べたルパンはどこが変わり、何が変わらないのかにも注目しながら、自分なりに気楽に見たいと思います。

 

サクガン

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 このジャンクフードを親子でむさぼり食える間柄がすごく好き、こんな風景に憧れます。

 ドリル!怪獣!大冒険!の何でもありなスペクタクルアニメでした。海外を視野に入れた Japanimaton としても露出があり、とにかく派手さ第一と家族のテーマが強かったです。海外で売るには家族のキーワードが欠かせないまであるね。

 最初から「FATHERS&DAUGHTERS」のサブタイでダメオヤジとガキンチョが走り回るのが一直線でめちゃめちゃ楽しかったです。主役の一人は娘を持つお父さんになるけど、最近は異世界で世帯を持つようなアニメも多く、この流れで視聴層が高齢化すると親の目線になるアニメが増えたりするのかなーとも思ったり。親子の絆だけでなく、その裏には子供目線では見えていないもの、大人目線では理解できない思いも見て取れました。このあたりの手触りはすごく良かったです。多分インスピレーションに特化してるアニメな気がするので大筋は今さら言う必要が無いかも。

 ガガンバーがね・・・カッコいいのにどうしようもない大人だよね。徳を積み上げては次の回のアバンで全部崩す。個人的には本当に好きな人なんです、飄々としても大人らしくイザというときはきちんと頼りになって。普通は逆な人ばかりだと思います。突っ走りがちなメメンプーが一人泣いたときは必ず助けに来てくれて、そんな決めシーンでは心から好感度MAXになるのに、それがまた嘘みたいに0まで戻る。ここまで清々しくリセットされるのはなかなか無い体験でした。まあ最低まで下がるからまた100まで充填できるんだけどね。金庫強盗のときとか一人だけ正義に背くことはできないぜって態度でカッコよかったのに金塊を見た途端元に戻っちゃってさ・・・ 台無しだよ! 好きです。

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 メメンプーが他人の家族を眺めるところも特に心に来ました。メメンプーは不甲斐ない親に代わって家事もするし身に余る仕事をこなす子、なのに置き去りにされた内なる子供っぽさも当然ある。こういう場面にはどうしても弱いです。だからちゃんとした保護者が必要なんだよ・・・。

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 基本は毎話フランクな話なので楽に見られました、だけどそのノリを期待して見た7話、中毒の回はグサッとやられました。まーた馬鹿やってると思ったのにどんどんおかしくなって、実は本当に危険だったオチ。メメンプーの夢の話もここで出て瞳のアップカットが鋭利でした。あの死とか大切な人を失うことが急に怖くなって、焦って前へ前へ行こうとする感じがどうしようもなく子供の仕草だよね・・・。

 実質打ち切りで駆け足になったのは仕方ないとして、毎話本当に楽しんで視聴できました。個人的にはあの絶対不服そうな終わり方、今できる限りのことを果たした上での後ろ姿からはすごく伝わってくるものがありました。首を長くして続編に期待します。

 

王様ランキング

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 30分の映画のような気持ちで見ていました、部屋も暗くして。漫画原作だけどテイストはかなり違ってアニメーションとしての幅が大きい作品でした。制作は今をときめくWIT STUDIO、あそことCloverWorksは現在のスケジュールで過労死しないかが心配です。鉛筆の質感や絵本っぽい絵柄といっしょにディズニー映画を意識した場面が多かった気もします。

 善人は悪人に、悪人は善人に、と印象を何度も裏切られてはその度に勢いつけて殴られるアニメでした。物語の山場に相当するインパクトが各話にある異常事態。途中からは新しい人が出ると(この人は良い人・・・?)と疑ってかかるようになりました、大抵はそれで反転するから。善悪が大きくうねって様変わりする中でもボッヂ王子とカゲちゃんだけは始めから安心して見ていられる思いでした。そんな濃い味付けのシナリオを受け止められるだけのアニメーションが抜群。ロボットや兵団が出て来るアニメじゃなくても、カゲちゃんの走るシーンや1話の木刀試合見てるとあーやっぱりこのスタジオなんだなって感じたり。

 OPがかなりドキッとするものでした。ズンズン進み臣下を引き連れるのは王様の姿だけど、臣下は何考えてるのか分からない、出迎える民衆もいない、こんな畦道で王様が襲われても誰も守れる位置に居ない、と全員が敵でもおかしくない何か怖ろしさを感じました。実際1話時点では孤立無援の状況に見えたから、そこからヒリング様をはじめ優しい人もちゃんと居ると分かってくるのが良かったよね。

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 最初はみんな軽薄な人に見えたのに、後付けでどんどん意思が足されていって、結果厚みのある人間に見えてくるのが不思議です。中でも前半のドーマスと後半のデスパー様には何度も翻弄されました。ドーマスのボッヂ王子を守るべき立場にいる人が味方してくれないのが本当にきつかった・・・ あの心のどこかでボッヂ王子をダメかもと腹落ちしてしまうところ、別の人に剣が惹かれて教えたくなる思い、それでも愛の残る子供を殺した葛藤がどれも劇薬のようでした。冥府の仕事の後ホクロさんに捨て台詞吐くところすごくない? 名演技でした。後半のデスパーさんはみみっちい人だけど本当に良くしてくれたよね、だからボッヂ王子を見送ったあと密告者ぶったときはやめてよ・・・ って思ったけど杞憂になって良かった。一生酒場パートで悪役ポイント使い果たしててね・・・。

 9話のボッス王inダイダ様に詰め寄るパートがめちゃめちゃ好きです。というかヒリング王妃がお母さんしてるの全員好きだよね。ひ弱に助けを求めるダイダ様の光としても、またボッヂ王子にとっても絶対のセーフティーゾーンであってくれるのがすごく嬉しいです。あの泣いてるダイダ様がほんとに心に来て・・・。鼻高王妃サマ → 慈愛の人 の返しを見せられて好きになるのもまーー自分がチョロいとは思うんだけど、子供を守るお母さんの役割だけは一線を越えない、それどころか魂の形として極太に描き上げ見せつけられたのが衝撃体験でした。

 一応12話~ が2クール扱いになるのかな。すべてが後から付け足されていくからミランジョ様の意図とか全然分からないけど、そのあたりとカゲちゃんがこれからどう関わるのかも残ってそう。あとは民かな・・・ 王様は臣下だけじゃなく、民衆に支持されてこそ王たりえるのだと思います。続きも楽しみです。

 

世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する

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 窓から登場するところちょっと笑っちゃった。監督は『魔王学院の不適合者』から。モノクロ調のOPは『落第騎士の英雄譚』を彷彿とさせるけど、暗殺貴族のこういうのは別にフィルム・ノワールって言うらしいよ。

 掴みが強力でしたね。OPスタートと1話からこれは気合入ってるぞと期待が高まりました。SILVERLINK.といえば同種のファンタジー作品も色々思い浮かび、剣と魔法がある戦闘シーンなんかはやっぱり十八番だなと感じます。OPでルーグさんが乱舞するところとか本当に気持ちいい。ストーリー的にも目を引いて1話は丸々ハードボイルドなおじ様が転生するまでの話。意思も無い主人公が転生先でちやほやされるんだろうってありがちな先入観とは逆に興味を誘われました。まあ結果ちやほやにはなったけど・・・。

 前半はとにかく少年ルーグさんが可愛くて見ていました。「暗殺に必要だから……」ってノリノリでご飯作ってるところとか現世めちゃめちゃ楽しんでるじゃん、って。毎話挟まる女神様の人間ガチャもおもしろかったね、OPをネタバレにするなら女神様がラスボスにも思ったけどなかなか苦労人っぽい。勇者を狙う意図も含めて(あれば)2期に明かされるのかな。

 6話は本当に醜いものが題材で、また妙にイキイキ描かれてたためこれが見せたいものかなと個人的には合わなかった思いです。ただ最後ノインさんの顔の傷が治るシーンは本当に良かった、魔法がある世界だから出来ることだよね。その後の7話も化粧品店やる話は急になんで?と思いましたが、働いてる人がノインさん達だと分かるのも良かったです。美しさを道具にされ美を遠ざけた人が、美しくなるための道具を売って美を厭わずに暮らせる人になったんだもんね……。マーハさんだけ引き抜く形になっても他の皆とちゃんと関係続いてるのも嬉しかったなぁ。

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 マーハさんとタルトちゃん、ちょっと怖くないですか? ディアちゃんは見てて可愛いけど、比べて2人は少し温度差があるような。1話で他人を信用するなって教えたルーグさんが今は女の子を駒にできたと思い込んでるし、何か裏があるのかな…… と思ったり。テーマが暗殺ということもあって妙にぞっとするカットが差し込まれていた印象です。例えば8話の馬車のシーン、村人と会話する何てことない場面だけど、ポツンとまとまってると偶然じゃなく待ち構えてた感じにも見えるとか、去り際に微妙に長い間があるとか。図ってか図らずかは分からないけど蜜のある時間こそ針を忘れられない視聴だったかなと思います。

 後半11話はタルトちゃんの疾走が一つの見せ場でした。ここで使い捨ての道具という言葉が出て来るんですね、本家よりよっぽど電池少女してる。ルーグさんを見送る前の何か期待を込めた表情、去った後の光を目で追うところがグッと来ました。「ディア様のことが好きなんですよね」「そうだ」の後、もしルーグさんがいつものように「道具として」と一言添えていれば。タルトちゃんは羨望も泣くことも無かったんだろうね……。

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 12話ラスト、敵は一撃で倒すからバッサバッサ薙ぎ倒すようなのではないけど、お姫様を助けに来てくれる展開はやっぱり盛り上がります。自身の視聴スタイルを振り返って、可愛い少年期主人公を追っかける→青年になってヒロイン増やすのを遠巻きに眺める→お姫様を城に迎えてくれる姿にときめくの流れが精霊幻想記まんまだなと思ったり。

 EDもすごく良い、歌:結城アイラのEDといえば『ペールムーンがゆれてる』『どんな星空よりも、どんな思い出よりも』あたりも大好きです。今作は4話から変則EDで毎話違うところがないか探すのも楽しかったです。詳しいことは誰かがまとめてると思いますが、本に背が届くようになってたり、窓にルーグさんが居るとか居ないとか。

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月とライカと吸血姫

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 今期指折りの名作でした。決して予算潤沢なタイトルではないものの場づくりと細やかなところで抜群にセンスが光っていました。

 視聴前はとにかくヒロインにcv林原めぐみさんが入る話題で持ちきりでしたね。1話はそこを含めてすごく印象が良かったです。イリナさんが喋る瞬間を溜めて、溜めて、十分に場を暖めてからパッと華開く感じが美しくて。アニメに後付けで有名人を起用したという話じゃなく、その時々で一番見せたいものにしっかり焦点を置いて作られている感じがしました。

 ただ2話~しばらくはあまり個人の趣味に合わなかった思いもあります。可哀そうな女の子を痛めつけた反応を見せたいのかなと思ったり。でも今思い返すとあれは人種差別を印象付ける狙いだったかもしれないね。各所で目を引きつつ、ちょっと視聴ペースが落ちた時期がありました。

 我に返らざるを得なかったのは 7話『リコリスの料理ショー』、だって6話の次回予告で(料理上手な新キャラでも出るのかな・・・)くらいにしか思ってなかったです。まさに思う壺。乗せられている想いの重さや死の近さなど、今まで着々と下準備を続けていた分、カウントダウンなんて無くても手に汗握る回になっていました。暗号をモチーフに月の石や船内のキーホルダーといった無口なアイテムも雄弁。おじさん達はみんな人相が悪くて敵味方の区別もつきにくいけど、思いやりを見せてくれたのは1話の実験犬・マールイに涙を流した人達だったんだね。そしてレフさんが本当にいい人…… イリナさんの反応に割り込んで肩を抱くのがすごく良い。7話からのEDは特にグッと来ました。

 7話までがイリナさんのお話なら、8話からはレフさんのお話。イリナさんの誉まれ無き予行があったからこそ "ミエチタ" 計画の方はつつがなく無感動に終わるのがなんだか奇妙で、このアニメならではの感触でした。タイトルも月とライカと "ノスフェラトゥ" の方だもんね。

 全体的に決めシーンに至るまでの場づくり、雰囲気のお膳立てが素晴らしかったと感じます。1話の他にも湖のシーンは別格に良かったよね。夢を語り、ファンタジーが許される地上の宇宙。OPでやたらに出る松ぼっくりの場面もロマンチックでした、あの湖の氷が溶けるのはまだ先の話なんだろうね。それから監視の目というか、ちょっとでも気を抜こうものなら車が突っ込んで来る緊張感があったから、国への意識も自然と刷り込まれていたのかなと思います。国どころか周囲は嫌味な人だらけだったのが1人また1人と和解するとやっと戦うべき相手が見えてくる……って導線引きも。こういう場づくりはロケットの準備にもなぞらえてすごく丁寧だった印象です。

 あと最高だったのが視線です。アニメを見るときはいつも誰が、どこ見ながら喋ってるかを気にするのですが、イリナさんはろくすっぽ人の方向いて喋らないんですよね。人間を嫌う態度でもあり、逆にここぞというとき真っすぐ相手を向いて話すのはハッとさせられる瞬間でした。例えばそれは9話で設計部に転属が決まったよとレフさんに伝える場面で・・・ あれが嘘だからすごい。

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 さらにイリナさんが正面を向いた後、相手の反応をごく短い間で切り取って見せるのがすごく良かったです。同じことは例えば11話で脱走を企てるシモニャンさん相手でも。イリナさんってたぶん自分が見られることや他人の顔色にすごく敏感な人で、それは吸血鬼として見られ忌み嫌われる生い立ちもあって、一瞬でも相手の様子を洞察してしまうんだと思います。不必要に見続けることはしないし、シモニャンさんなんてすごくイイ顔なのにすぐ次のカットに移ってしまう。だからこの一瞬はイリナさんから見えている景色そのものなんだと思います。視線にこれだけ意識が乗っているならラスト大勢の人間に真っすぐ話したイリナさんの演説も一段と意味を増してくるようです。

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 この一瞬を見る、と逆のことをしているのがED。積み重なる時間の先でレフさんの横顔をずっと見ていられる。一瞬で顔色を読み取るのではない、見つめ続けることに込められた思いに想像を巡らせてしまいます。ここぞという回り込みやドラマチックに持ち上がる視界、夜空に抜けていく願いまで含めて大好きなEDです。

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 全体のテーマは冷戦、国家、人種差別…… と超お硬い。だから好きで見る人は限られるのかなと思いきやそこはシモニャンさんの功績がすごかったね。今期助演女優賞があれば間違いないです。孤高を気取るイリニャンさんの支えになってくれる人としても、出るだけで雰囲気を変えてくれる人としてもこのお話に無くてはならない人だったと感じます。

 

プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~

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 この顔すき。

 アイスホッケーに興味を持って! の意思をビシビシ感じたアニメでした。言わずもがなのCyberAgent系列で総制作指揮の人が無類のアイスホッケー好きなところから業界を救う狙いがあったらしいよ。柳の下の泥鰌じゃないけど、Vダンスしてファンが付くなら使えるものは使うっていえば一理ある気はする。ちなみに海外では試合の合間で女性チアによるエンターテイメントが本当にあるんだって。

 掴みがとんでもないアニメだったね。1話切りを防ぐために「見せたいものは一番始めに」はお決まりだけど、それにしたって開始~6:30でホッケーやってダンス踊ってお風呂浸かってる人たちは何なんだろう。ただ演出のアツさは顔見せに恥じず間違いなく惹き込まれました。

 基本的には真っすぐ爽快なマイナースポーツもので見ていました。丸い目でハイライトが高い位置にバチッと決まってるのもかわいい。1話時点ではアイスホッケーに入るきっかけがチラシ1枚だったのが少しふわふわして見えて、あんまり肩上げなくていいほんわか地方創世アニメかな~とも思ったり。

 急に話が変わったのが3話。一番はじめにホッケーへの想いが芽生えたのが真美ちゃんで、その想いを受け止めようとしなければ他の皆は体験入部で終わる気まんまんだったんだね。初試合は去る人に送る思い出作りのため、そのアンサーをさらに真美ちゃんが受け取るから1点をもぎ取れるし、1点取れた楽しさがあるから今度は愛佳ちゃん達が卒業後もホッケーを続けられる。心の絆で・・・はここから始まってたんだ。*11

 人の話は後で言うとして飛んで11話。決戦の前にじーーっくり映すモノが物販や満員の観客席、というのが一つこのアニメの肝だった気がします。実際のところは詳しくないですが現実はこんなに店が出たり賑やかな会場では無いのかもしれません*12。まさにDREAMというか、これから叶うべき夢の景色だったのかなと思います。

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 試合がカッコいい。アイスホッケー×可愛い女の子でどうしたって気になるのは肩幅のゴツさです。これまでも他作品でそういった挑戦は見ましたがなかなか両立は難しかったように思います、ましてや今作はアイドルをやる人達なわけで。その点『プラオレ!』はすごく巧くやっていましたね。なるべく太さが気にならないよう画角を取ったり、ユニフォーム自体に騙し絵的なデザインが入っていたり、逆にドッシリ構えたところを見せたいときは顔をシールドの反射で隠したり。ホッケーという競技自体にスピード感があるためスティックの先やパックの方に視線が行くのと、絵だけでない音に気持ち良さが集中することもありました。このあたりかなり努力の跡が感じられて、実際女の子がゴリマッチョだとかいう雰囲気はありませんでした。こういう縁の下に魂入ってるのやっぱり好きだなあ。

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 スポーツものとしてはビギナーから着々と楽しさを見せてくれる爽やかなお話、でも人を描くときの『プラオレ!』は急にアクセルべた踏みで突っ込んでくる感じもしました。たとえば梨子ちゃんが典型王子様タイプに見えて尚ちゃんへズブズブに依存してるのとか…… いいね。制作陣の中に一人変態がいると思う(褒め言葉)

 優ちゃんの初登場はキツい人に見えてそうじゃないと分かっていくのがすごく良かったよね。プロ意識の無い日光チームといがみあうかと思いきや、一緒にお弁当食べたりちょっとした事で笑い合えたり、むしろ申し訳なさそうにしてる方が多くて。釧路の依子さんが同じ危機感を持ったようにただ口煩くしなきゃいけない役回りが巡ってきただけなんだ・・・。優ちゃん脱退後の釧路は瓦解するチームとして妙に生生しくて。それでも(かつての優ちゃんを秘めた)依子さんのおかげでチームが引き締まるのは救いでもあり、そこからパックを奪い取れるところは本当に息を飲みました。

 3話→10話が真美ちゃんのお話、ひょっこり帰って来るから何かあったのかなと思って、いちど監督目線から話して笑顔だったから油断してしまいました。本当の悩みは愛佳ちゃんにしか打ち明けない。皆となら何でもから ”アイスホッケーが” に変わる瞬間は力強く、また対峙の図・拳を突き合わせた場面から最後まで真美ちゃんが同じ空間にはキッパリ入らないのが清々しいほどでしたね。ここが3話と違って、気持ちに十分整理を付けられた後のお別れという感じがしてすごく良かったです。

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 最終話の後に改めて1話を見るとあの冒頭の試合って愛佳ちゃん率いる日本代表vsカナダの国際試合で後日譚だったんだね。そして同じプレーに真美ちゃんがいる喜び・・・! 当時で気づくはずもない配置も今なら意味が分かります。あと1話でも真美ちゃん自分が居なくなること知ってるんだなぁ…… って目線があったり。

 

ぐんまちゃん

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 群馬県が制作を担当しているホンモノのご当地アニメ、30分枠なの...!? ぐんまちゃんは以前から知っていて、ゲームのコラボか何かで遊んだ記憶があります。でもあの顔の赤い点はキティさんと同じでずっと鼻だと思ってた、「鼻ではなく口なので口の位置に修正してください」ってリテイクが群馬県から飛んできたアニメーターがいるらしいよ。あとキャスティングもほとんど群馬県出身から選んでるみたい。

 個人的には何かのスキマ時間に楽しく見ていました、やたらと良いアニメーションだったものの。一見子供向けのようで話してる内容はすごーーく含蓄のあることを言っていて、わかる・・・わかるよ・・・ と一人呟きつつ、小難しい話を聞いたぐんまちゃんが「そうだねぇ」「うれしいねぇ」で返すのが心地よかったです。わかんないときは「わかんない」って言ってもいいよね。

 ぐんまちゃんのボイスが癒しでしばらく脳内の会話はぐんまちゃん色になりました。なんだか幸せ。余談だけど、昔いた場所で新井里美さんがcvをされているさいたま県のマスコットの声を毎朝聞いていたときがあって、どちらも特徴的な声がずっと頭に残っています。ああいった声質は地方創世と相性がいいのかな。

 

SELECTION PROJECT

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 秋アニメ動画工房枠その2、オーディション番組がテーマのお話。監督は『恋する小惑星』の方で、2話の夕景のシーンには特に面影を感じました。またキャラクターデザインは『彼女、お借りします』を務めた有名人、本作のアイドルになるため美容にお洒落に頑張らなきゃ! ってしてる子たちと絵柄がマッチしててすごく良い采配だったよね。

 まだアイドルになっていない人にスポットを当てられるのが新鮮でした。第1話で「あの子(鈴音)の夢はきっと叶うはずだ」って橋を歩くシーンより、あの進む先にまだ長い長い余白があるところをゆっくり渡り切って見せるまでがこのアニメの全体だったようにも思います。番組がキーワードだから画面作りも少し特殊で、たとえば初めて歌うシーンでは一歩引いた場所から舞台や機材が映りこむのが特徴的に見えました。舞台に立ち慣れてない人の目に入るのってむしろこういう裏方サイドの方なんだろうね。

 完璧なアイドルが自分の綺麗な部分を切り取ってステージ上で披露するものなら、まだそうでない9人はオフで私生活的なところが見えていい人として描かれているように感じました。特にセレプロで扱っている80年代アイドル像はプライベートの流出絶対NGの気が強かった時代と想像します。それを現代のリアリティーショーと合わせて未熟な今だけ裏舞台を覗けるお得感があるんだね。寮生活でちょっとした仕草からメンバー同士の関わりが見えるのは間違いなく動画工房の十八番でバッチリハマっていました。凪咲ちゃんが話題を切り込んで逢生ちゃんの方が席を譲るところとかすごく好き。

 また家族が揃って暖かいのは何度見ても嬉しかったです。アイドルがファンに支えられて成り立つなら、上京したての9人を面と向かって応援してくれるのは家族だけだったりするんだね。話が重くなるとき折に触れて家族が頼れる存在でいてくれたのは何より心強かったです。

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 一度番組を離れてからは、アイドル未満から本物のアイドルの姿へ、9人の見え方がガラッと変わって感じられたのがとても印象深かったです。みんな本当に良い子なんだよね・・・。セレプロってどうしても斜に構えて見がちというか、私自身テラ〇ハウスを心から楽しめるオタクではなかったし、カメラが回ってるからやるんでしょ的な偏見はどこかにあって。だけど10話~ を見ていると自分が色眼鏡を掛けていたことを思い知らされました。9-tieとして誰も見ていないところでもアイドルで居続け、蹴落とし合いなんてもっての他。それって9人自身は今までと変わってないのに見てる側がリアリティーショーの語感から勝手に悪いものを輸入して加えてただけなんだね。自分が恥ずかしいのと同時に、気付けば9人のことがグンと好きになっていました。路上でファンを集め、思わず応援したくなって、好きになってくれる人が増えて、その姿を前に(アイドルだ・・・)と呟いたことは今でも思い出せます。

 振り返るとすごく楽しめました、特に10話からは輪をかけて面白く毎週が待ち遠しかったです。実は視聴前は不安もあり。アイドル×動画工房ってあまり覚えが無く、勝手なイメージだけど、綺麗すぎて良い意味の雑味が無いんじゃないかなとか。でも前のとおり応援したくなる気持ちは雑味からでなく本編からしっかりと感じられました。初めての取り組みがアイドルの卵テーマでここから羽ばたいていく、って続いて見えるのも良かったね。曲も好き、なぜかOP,EDでもない「SELECTION HEROINE」に妙な中毒性を感じて一日中頭のなかを回ってたりします。ろっこんろっこん。

 

ヴィジュアルプリズン

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 V系バンド×ヴァンパイアのオリジナルアニメ、翻弄されっぱなしだった1話からどんどん惹き込まれて大好きになったアニメでした。総監督は『うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEレジェンドスター』、絵コンテ・キャラデザなどは『ヒプノシスマイク』から。あのすっごい楽曲は『神姫絶唱シンフォギア』のチームが手掛けてるらしいよ。

 V系バンドというものに疎く、初めはとにかくパンキッシュに何でも壊してやるぜ! 的なイメージだけ持っていました。もちろんLOS†EDENをはじめ破壊を掲げる人はいるのですが、ヴィジュアルかつヴァンパイアであることは幼稚なものではなく、ただ信じるものに真っすぐでいることなのがだんだん分かってくるんですね。想いを偽らないことでしか歌えない、メイクは己を隠す戦闘装束だとこぼす場面からは視聴前のイメージがすっかり変わった思いです。そういうわけでアウトローなテーマに対しては想像以上に心地よく視聴できました。むしろ全体的には誠実さが一貫していた気がします、あの世界の人たち浮気とか絶対しなさそうで良いよね*13

 音楽アニメを前に月並みだけど歌がめちゃめちゃに良い。ED曲「BLOODY KISS」のフル聴きましたか? エリザベス様のロングトーンが本当に綺麗。「玉座のGEMINI」も第一声からその力強さに掴まれました、あれを出だしの1話に持ってくるのがいいよね。それから声でびっくりしたのがO★Zのイヴ様、はじめ普通に男性声優だと思ってました。でも8話でカルミラ様に変身したときの女声が上手すぎて、そこで初めて調べたら元宝塚の男役トップスターの人が声をあててたんだね。イヴ様の男女が表裏一体な設定とも相まってすごくハマリ役でした。

 事あるごとにユニットを越え全員にスポットがあたるのも嬉しかったです。完全に趣味だけど好きなエピソードは7話「My Principal」。ミストさんの食卓を囲む様子が完全にお母さん……! ミストさんは長身長髪の美人さんで裏方の仕事が多い役回りです。こう、手を動かしていてそれでも求めるものが絶対に手に入らない人を好きになりがち。7話は人間だった頃のミストさんにとっての枷が点滴、つまり余命に縛られているんだなと見えるのがミスリードでした。本当に命が惜しいだけなら吸血鬼にしてもらえば半分解決するけど、それを断るわけです。ミストさんは根本的に人生に絶望していて、だけど最期の瞬間に本当に自分の求める美しいものが分かり、命を救ったサガに忠誠を誓うという流れ。ここで「助けてもらった恩に報いる」とかじゃなく「勝手に救われた代償にワガママを聞いてもらう」形で貴方に全てを捧げますになるのがめちゃめちゃ好き。ミストさんがどれだけ甲斐甲斐しく支えたところでサガは誰の物にもならないし、ライブ中の月も視線も交わらない。だけどサガ個人の先にある夢を支えることは出来るし、夢に共感したからこそLOS†EDENのメンバーたる資格があるのだと思います。反対にサガにとってはミストさんは自分に囚われ直しているようにも見えて、だから「様をつけるな」って言うんだね。夢が叶う遠い日を見てるミストさんの横で実はもっと近くから大切な人のアプローチがあるの・・・すれ違いでご飯がおいしい。画像は伏せますが、7話だけでなくヴィジュプリはざっきゃらカフェの看板絵が良すぎて持っていかれた所もあります。

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 8話も好き・・・ たぶん8話だけを指して好きと言うのはズレてる気がするけど、普段とは一味違う楽しさ全開のお祭り回でした。仮装してるディミトリ様がおかしくないのが可笑しいね。それにしてもシリアスめな意味で出て来ることが多かった赤い月と黄色い月をなぞらえてか、8話はケチャップとマヨネーズって。

 後半ギルティア様のいなくなる話は本当にメンタルを弄ばれました、早く永遠に幸せになってくれ……。O★Zはチーム名の通りオズの魔法使い*14がモチーフっぽかったですね、理想郷(シャングリラ)の歌詞はここから来てたりするのかな。メンバーも完璧な人というより各々がどこかに欠けたものを抱えていたように思います。そんな中で再びギルティア様を失えばもう2度目は無さそう、なのに死にたがりムーブが止まらないからずっとハラハラしていました。最終話の赤い月の力で生きながらえた後も、「しばらくはもつ」って台詞があったときこの期におよんで~~~って思ったものの、すぐに一息つけて。吸血鬼の言う "しばらく" は実質永遠! ・・・かは分からないけど、でもあのギルティア様が冗談めかしてそんなこと言えるのがなんだかすごく安心してしまいました。

 

やくならマグカップも 二番窯

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 1期に続いてイチオシのアニメでした。好きなものを見つけられること、自分らしさが分かること、そして自分を好きになれること。1期の感想はここから。

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 視聴前は二番窯が姫ちゃんにとって "次" を作る話になることが、期待半分、不安半分に思っていました。1期は初めての楽しさに満ちていた分、2期は秋冬の季節といっしょにちょっとこなれた後の話ができるわけです。もしかしたら何かを新しく始めるよりも、続けることのほうがよっぽど地味で難しいことなのかもね。やくもがモノ作りに真摯な話をするのは覚悟の上だったので、次は、次は、と急かされるようなシリアス展開も出来るのかな・・・と予防線を張っていたり。

 だから13話で「(次は)なーんにも思い浮かばない!」で明るかったのは救われた思いでした。座布団の欠片がストラップになったのも嬉しかった……。13話はお母さんの猛烈っぷりが分かる回想がメインで、その話をするのが2期スタートのタイミングなのが良いよね。1期でひとつ満足できるものを仕上げた後の姫ちゃんだからこそ、その道に生きた人間のヤバさを何となくでも聴ける段階になったんだと思います。とはいえ姫ちゃんは駆け出しには違いなく、仮に今から100個カップを作ろう! って言われても同じ熱量になるのは無理なものです。そこですごく良かったのが、じゃあ自分には資格がないって腐るんじゃなく、できそうな町巡りだけ真似してみようって続くところ。上手くやってる人を分解して参考になるところだけ吸収するのはとても健全な行いです、勝手にスゴい人と自分を比べて自滅したりって本当によくあるもんね・・・。お母さんは戦う相手じゃないとすでに分別が付いているようで、姫ちゃんが想像よりずっと強い子に見えてビックリしていました。だけどこれは言葉の上で納得できる綺麗事で、実際に手を動かそうとするとき姫ちゃん自身も知らないうちに嵌っていくよう続きます。

 14話は直ちゃんのお話。「皆から言われたら急にダメなつまんないものに見えてきて」の台詞はグサっと来ました。誰かの喜ぶ顔を思い浮かべながら作ったものを自分で捨てる系の話が一番堪えるよ…… 周りから心無いこと言われるのも必ずあることです*15。それだけに何気ない姫ちゃんの言葉が輝いていました。直ちゃんは自分のことヘンな子って思ってるけど、子供姫ちゃんが負けず劣らずとんでもない場所から這い寄ってくるから同じ目線で寄り添えるんだね。一方で救われるばかりじゃなく、直ちゃんから姫ちゃんに影響を与えていたことも後半の冒険シーンから見えました。個人的にやくもで「ミートボール隠しちゃお~」って姫ちゃんが一手間捻ってニシシ笑いするところが大好きで、そのルーツはもしかしたら直ちゃん由来だったのかもしれないね。

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 15話はヒメナ・バルデスさんの登場回。関連は分からないけどスペインには「ヒメノ製陶所*16」って施設があるらしいよ。同じ名前、同じパワフルさを持つ人を通してお母さんをより身近に感じた回でした。やくもは全編通してお母さんが直接語りかけてくるような描写はないけど、風や月のモチーフ、または棚の向こうからちょっと誰かが覗きこんでるようなアングルから存在を感じられる(感じてもいい)のが優しいよね。お母さんのうつし身のようなヒメナさんと同じものを好きになって、世界の裏側まで繋がれたなら、もっと遠い世界にいるお母さんとだって繋がれておかしくないのだと思います。

 16話は夏の回想。二番窯は秋~冬のお話だけど、照り付ける日差しに薄暗い室内と逆光のあるシーンはやっぱりめちゃ綺麗。真土泥右衛門に使われていたのは美濃焼の土で、美濃焼の「どんな要素でも受け止めて誰でも受け入れる懐の大きさ」を比喩抜きに見られるすごく楽しい回でした。墨の跳ねも割れたお皿も失敗じゃなく自分らしさにしていける。なんにでも染まって形を変えられることが、14話で直ちゃんの言った「姫ちゃんって美濃焼みたい」に重なって最後まで一貫するテーマだったと感じます。

 17話からは十子先輩の話。二番窯って "好き" が始まったその後はどうなの? まで手を伸ばして描けるから面白いし「あの頃は良かったなあ」って言う人がいてもおかしくないです。ただその役は姫ちゃんじゃなく十子先輩の方なんだね。姫ちゃんは実はまだ1年も多治見に居なかった人だし、より経験のある十子先輩がメインになるのは確かに説得力がありました。17話では反応が欲しい人から何も言ってもらえない…… のが厭に生生しい感触。楽しくて始めたことが何時からか評価してもらう手段に変わって、得られないものを得るためどんどん初心から離れていく。程度こそあれ、誰もが避けて通れない最強の敵に思います*17。お爺ちゃんも絶対悪い人じゃないのは分かるのにね、あの動揺したときまず土から手を離すのが十子先輩とそっくり。そして最後、姫ちゃんが先輩に「だって面白そうじゃないですか」って言ってくれるのがものすごく嬉しかった。一番初心に近い姫ちゃんが言うから意味の増す台詞だったと思います。このタイミングで1期のBGMが流れるのも最高すぎる…… 初めてのワクワクがいっぱいに詰まった1期だったもんね。

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 18話、身構えていたよりもずっとニコニコして見られました。扱う話はシビアなはずなのに全体的には笑って見られるの本当にありがたいね。18話は「自分らしくない」ものを遠ざける十子先輩が、他人の言葉を借りてクイズしてるのがめちゃめちゃ嬉しかったです。自分らしさって自分で決めるものじゃない、周りを反射して映し出されるもの・・・。ベテランの人ほど自分を経験に裏打ちして語るようになるけど、初心の頃ってもっと ”面白そうだからやる" が先に来て、誰か尊敬できる人の特徴を真似しながら試してみることが多かった気がします。その積み重ねが経験と呼べるもので、「自分らしさ」だと思い込んでることも元をたどれば誰かの色の集合に過ぎないのかもしれません。だけどそれって全然悪いことじゃない、他人から貰った色を取り込むことに初心者も経験者も関係ないし、十子先輩はお爺ちゃんの台詞をどんどん真似していいんだね。色は1つじゃなく、お爺ちゃん、姫ちゃん、これいいなと思った11万の陶器、もっと多くの関わった色をかけ合わせていれば、それは間違いなくオリジナリティのある自分と言えるものです。

 閑話休題…… このあたりを放送してるとき、自分はこのアニメを見る資格があるんだろうか・・・って呟く人をぽつぽつ見かけたのがすごく良い思い出に残っています。そんなの誰だって思うよ~~。二番窯の十子先輩目線のところって、何かを頑張り続けた人がその先に抱えるモノの話だと思うんです。でも「私はこれを頑張ってます!」みたいに胸張って自称する人なんてそう居ないじゃないですか。だからアニメを見て自分を引き合いに出すとつい落ち込みそうになるけど、そうして真面目に悩んでること自体に私の好きな何かキラキラしたものを見つけて愛しく思ってしまいます。もしやくもを見て「なんかゴミ作ってんなー」と笑うのでなければ、その差にある諸々がかけがえのないものだと思いますよ。

 19話は文化祭、めちゃめちゃ楽しい。ひとつ吹っ切れた十子先輩が学生の一大イベントでちょっと浮足立ってるの嬉しすぎるね。とはいえ「(器は)誰かに喜んでもらって完成なんだ」に顔を曇らせる先輩にはチクリと刺されました。18話ラストであれだけ楽しく新作に取り組めても、誰にも見てもらえなければ自己満足で納得するしかないもんね*18。店番の先生も頑張ったねとは言えるけど陶芸を理解して喜んでくれる人ではないし、お爺ちゃんの来訪もまだ十子先輩には伝わらないまま。そんな中で松瀬さんが赤釉の大皿を見て心から喜んでくれるのが本当に良かったです。ワクワクしながら作ったものは決して未完じゃない。たとえ数話先にお爺ちゃんの話があったとしても、今この19話の中に肯定があったのが何よりも嬉しかったです。見てほしい人に届かず塞いでるときイイね! って言ってくれる人は、どことなく直ちゃんから見た昔の姫ちゃんにも似ていて。だから十子先輩が松瀬さんに「大切な友達になりました」って言うのは直ちゃん姫ちゃんに負けず劣らずのパワーがあってもおかしくないんだと思います。

 20話は荒井啓太郎さんを迎えつつ、各々の隠れていた思いが静かに大きくなっていくような回でした。荒井さんの褒めてもらえないから期待に添うことをやろうとする、って話は十子先輩が17話で愚痴っていた姿そのまま。だから先輩がハッとするのは分かるけど、その隣で姫ちゃんも同じように反応するんだね。20話は姫ちゃんが先輩に何かを相談しようとする→やっぱり辞めた に始終が閉じる話で、内容は明かされないものの、きっと棚に飾る期待に添うカップを作るにはどうすれば…… あたりだと想像します。自分では得体の知れない悩みが十子先輩のレンズ越しに光が当たるから釣られてハッとするし、それって十子先輩を一方的に救ったわけじゃなくちゃんと返す光を受け取ってる。またお爺ちゃんに目線を変えると、日陰で評価してることを孫に伝わる形にしなきゃいけない、今までずっと素直になれなかった態度はこの回でもまだ引っ張られてもどかしいけど、思いはモミジの葉のようにようやく色づいてきた・・・と感じられた引きが美しかったです。もう一人、くくりちゃんの目線からも湿った感情がありました。どうしても十子先輩メインになる中でくくりちゃんも負けずに巨大だよね……。18話で十子先輩を厳かな月のようと言ったのも、本当はそうじゃないことを知って引き止めておくために言ったわけで。そういった小さな台詞から心の距離まで繊細なところは抜群のセンスで押し寄せてきました。

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 21話で十子先輩の話は一区切り。ベテランの十子先輩でも1期の姫ちゃんみたいな万能感に浸れるの最高にうれしい・・・。物語の山場なのは間違いないのにお爺ちゃんとのその後はすべて回想で語られて表立っては来ないんだね。気恥ずかしくて間接的なのがここでも伝わってくるようでした。21話でいちばん驚いたのが回想が終わった後に棚のスキマへ気付くところ、こんな重要なものがそこにあるのに全然視界に入らなかったんです。お爺ちゃんの言葉で十子先輩の心の枠がスッと無くなってから、今度は姫ちゃんを押し込める心の枠がそこに映っているシーン、それを十子先輩に指摘されてはじめて気付く。姫ちゃんの自覚のないプレッシャーと同調して思わず息をのみました。

 そして最後で二番窯のOPが流れるのがまたすごく良い・・・ 21話は十子先輩の問題が解決するだけでなく、それを姫ちゃんが聞いているのが大切だったように思います。17,18話では十子先輩が初心の姫ちゃんから影響を受けて1期OPが流れ、21話では姫ちゃんが枠を破った十子先輩から影響を受けて2期OPが流れる。夢中に楽しかった頃から一歩先へ進める姫ちゃんはもう初心者ではなくなったんだと思います。

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 22話は直ちゃんからマグカップを作る案をもらう回。姫ちゃん色のマグカップは、自分らしいマグカップと読み替えてもいいと思います。それを今なら作れる。ここで13話の赤字に帰ってくるんだね、ここまで悩み通してやっと頭でっかちに分かっていたことへ立ち返れる。マグカップでは勝ち目が無いと思ってしまう感触にはすごく覚えがありました。「(他人と)比べるものではなく並べるもの」と言葉では理解しても、実際は手が止まるか、自己流を入れようと躍起になったり変化球で差別化しようと企むものだと思います。そうやって一人よがりで出来たものってだいたい黒歴史になるんですよね。ここでポエムを作った先生の話が出てくるのは笑いながらも身につまされる思いでした。

 だけどポエムが文集に乗せられたところから思ってもみなかった今の自分がある、ヒメナさんの出品には2,3年かかる、と未熟な物を人目に晒すことについても意識的な回でした。修行して充分上手くなってから出そうと思ってる人ほど成功しなさそうだよね、下手な物をどんどん数作って人前に見せたほうがいい。それって怖くないから出来るのではなく、自分にとって得になるからするものです。*19

 お父さんがずっと最初の提案を気にかけてるのも良いよね・・・。〇〇にはまだ早かったか、余計なことだったか、って取り越し苦労するのは親の優しさだけど、反面、まだ子供だと見くびるから取る仕草だとも思います。ただそんな姿はすごく好ましくて、1期のカレー作りに引き続き、姫ちゃんだけが頑張ってるのではなく一緒に悩んだり反省してくれるのがすごく嬉しかったです。それから22話はこの最後、笑顔で駆け出すところがサイコーだよね……。

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 23話はまた一番楽しい時間でした。没頭する姫ちゃんに魅せられて周りまで幸せになれるのが大好き。振り返ると何個も器を作るのって13話はじめのお母さんに似てます。あの頃は(姫ちゃんには無理だよ)って思ってたことが、意図せず同じようなことをしてる。大きくなったね・・・。しかも姫ちゃんがえいって土を潰すところ、あの瞬間がもうたまらなく嬉しかったです。潰すこと自体が嬉しいわけじゃなく、途中で潰すのは数をこなしてる人だけが出来ることだから。あの勇気は・・・なかなか出ないなあ。1期の座布団づくりのときは3枚作って3枚とも焼いて試して、あれはあれで楽しかったけど、今の姫ちゃんはある程度予測を立てて土の時点で辞める判断が出来るんです。正しく、ポジティブに。そんなのを見せられて最終回を前にほぼ泣いてました。

 24話、びっくりするぞ~って転がったり飾り付けするのがも~~~大好き。誰かの反応を思い浮かべながらシメシメと準備してる人がこの世でいちばん好きです。その想いはきっと陶芸に限らないね。そんな姫ちゃんを見ていると幸せと一緒にどうしようもなくむず痒い気持ちも抑えられなくて、お父さんの言う「運動会で全力で走る子を転ばないよう祈るような」は本当にその通りでした。ここまで準備して大失敗することだっていくらでもあります。だけどきっとこのアニメの最後に辛酸は似合わないでしょう。

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 とは思いつつ、やっぱり幕を開けるまでは期待と不安で仕方がなかったです。そして開いた後も一瞬わけが分からなくて。だけどその後姫ちゃんが自分にプレゼントを贈れるようになる、自分の事を考えて自分を好きでいられると分かったところでもう止まりませんでした。思えば1期1話の姫ちゃんって陶芸趣味も反対されれば辞めるくらいの人だったんだね。自分が無いのでは、と心配しすぎるお父さんにとって最高のアンサーでした。しかもそれは一人よがりな危ういものとも違って、周りの人すべての色を取り込んで見つけた自分らしさで。姫ちゃんにとってはサプライズの本命は全員分のマグカップの方だったかもしれないけど、お父さんの目線にがっつり取り込まれる演出の後にあの白いマグカップを見せられたらもうね……。

 そういえば姫ちゃんってこういう人だったな、とも思わされる回でした。サプライズ気質だったり、鑑賞用の陶器を作るのには最後まであまり興味がなかったり、むしろ実用的なものを作る人だったり。1期を見て感じる「らしさ」からすれば棚に自分のものを飾らなかったのも納得できる思いです。ただこれも他人から見た今のイメージに過ぎないんだね。これから先、たとえ姫ちゃんがオブジェを作っていてもおかしくないし、どんな色にも変わっていける。それはやってみないと分からないけど、好きなものがあって、周りから映した色で自分らしさを作り替え、自分を好きでいられる人の未来に希望を思わずにいられません。

 以上、各話感想でした。ここまで好きになれるとは思いもせず個人的に2021年は間違いなくやくもが輝いた年になりました。ちなみに多治見市にふるさと納税を突っ込むと実質無料でBlu-rayやホンモノの陶器が貰えるよ。大好きなアニメです。

 

ジャヒー様はくじけない!(2クール目)

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 そもそもジャヒー様が2クールなところから嬉しかったよね。いつでも気軽に見られる雰囲気も相まってすっかり生活の一部になっていました。半年間ずっとアクアトープを見ながらジャヒー様をおやつに見る感じ。

 新しい子が増えながらも基本はいつも通り "かわいい" と "かわいそう" の間を揺れながら楽しんで見ていました。途中あまりに不憫だからバケツ一杯の魔石を見つけてきたときは(減給くらいでオチ付いてよかったね……)って安心する心地ですらいました。すっかり感覚がジャヒー様基準に染まっちゃってる。

 この笑顔がほんとにいいよね。キャラデザから大好きです。善意の化身こころちゃんに限らず出会う人はみんな良い人、その優しさがズレまくってるからオモシロになるけど、やっぱりジャヒー様ってたくさんの好意と関わりに囲まれて生きてるんだなって感じます。不憫は不憫でもこういうところは見ててすごく気持ちが助かる思いでした。

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 最終20話がはちゃめちゃに良かった…… ぼろ泣きです。王道のラストといえば全員再登場、イイ感じの絵面で〆 と例に漏れずだけど、ジャヒー様はまず商店街の名前もわかんない人まで集合してくるのがびっくりでした。なのに、あの店主はジャヒー様が貯金溶かした時の人かな~ とか、あの警察からも逃げたな~とかエピソードを思い出してしまって。きっとジャヒー様があれだけ騒がしく居てくれたから記憶にも残っているんだと思います。小さくてもこれだけ多くの人たちと暮らしてきたんだね。

 そしてお祭り一等賞でジャヒー様が皆から褒めてもらえるところも、たったそれだけなのに不思議なくらい感動してしまいました。たぶん今まで散々報われないところを見てきたから。さらに最後は皆で揃って鮮やかな花火が上がる、EDとも重なってもう堪らなかったです*20。ジャヒー様も結果はどうあれ常に一生懸命だったもんね。ゴールへ向かって進んで、自分一人じゃ足りない力は皆が支えてくれて。その先にはとびきりのご褒美がちゃんと用意されてる。1歩1歩を進んだ子への最大の祝福があるラストでした。よかったねジャヒー様…………

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一旦終わりだよ

 秋アニメは映像的な美しさや技で勝負できるタイトルが多かった気がします。そういうのは大好きですが、立て続けに見ると流石に疲れてしまうので、うまい距離感を探したり合間にただ笑っていられるアニメを見て調整するクールになったかなと思います。

 感想は個人のもので決めつけるものではありません。自分自身で感じたことが何より尊重されるものと思っています。

 秋アニメも本当に楽しい時間を過ごせました。一旦終わりです!

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*1:ああやればよかったんだね…

*2:たとえば、美術館でうーんと何時間も同じ絵を見てるような人がいると思います。あの人達はきっと絵を見るのが上手いけど、やってることは「なんでこんなことしてる?」「なぜ良いと思ったんだろう?」の繰り返しで、その後に引き出しの数が違うんだと思います。

*3:よくある話だと、芸大に入ったもののやる気のない友達グループに入って数年が経ち、惰性で同じような作品を数点あげたのみで結局全然上手くなってない、先生もっと真面目に教えてよ! なんて怖ろしい話がごろごろ転がってたり

*4:ほんとに表情が見えるのはガスお爺ちゃんだけでも、声色から温かさが溢れてるのがうれしいね……

*5:秋アニメの始まった頃、仲が良い親戚のようにアクアトープばかり見たくなったのは、決して2クールという理由だけじゃなかった気がします

*6:風花ちゃんに水の模様が重なってるのって、くくるちゃん目線で死者の面影を重ねてるからだったりするのかな……

*7:風花ちゃんは風花ちゃんで、行方不明のくくるちゃんに何件もメールを飛ばすのは1話で自分がされたことだし、本物のお母さんを真似て動いてる気配もあるよね。

*8:本当に弾圧しようとしてるのは真国日本の偉い人で、アカツキさん達はどちらかというと祖国から厄介払いされてる集団みたい。このあたりアニメで語り切れなかったオタク長文設定が膨大にあるらしいよ。

*9:当時アニメが見られるような家ではなく、ネット契約をしてはじめて見られるようになったとき、タイトルも何も分からないのでとりあえず過去作含む一覧をあいうえお順に並べて、目をつむりザーーっと流しカーソルが合ったのがこのアニメでした。

*10:『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』などはその最たるものに思います。

*11:10話で真美ちゃんが「引っ越さなければ今も皆とホッケーやってたのかな」的なこと言うけど、皆と一緒でさえあれば別の色んなことにふらふら渡り歩いてたかもしれないよね……

*12:余談だけどアイスホッケーは2021東京五輪でも¥2500~4桁程度でチケット取れる最安値の競技だったみたい

*13:それだけに3話ジャックくんがロビンさんに今カレを見せつけるところは高まりましたが…!!

*14:無垢な少女ドロシーを先頭に、脳が空っぽのカカシ、心がほしいブリキの木こり、勇気がない臆病なライオンを導いてエメラルドの都を目指すお話

*15:今の直ちゃんが陶芸をしてないのはそれが原因かは分からないけど、自分が初めての時期に言われたら一生やらないくらいの傷になってもおかしくないな…… と感じてしまいます。

*16:https://www.fabricagimeno.com/ 「GIMENO」でヒメノ、今は博物館になってるみたい。

*17:特に現代はTwitterもpixivも評価数が露骨に出ちゃうもんね・・・。

*18:もう少し話を先取りすると、誰にも喜んでもらえないのに自己満足で納得し続ける自分を指して「自分を好きになる」ことはなかなか出来ないなぁとも思ったり。

*19:雑談 昔好きだった絵や文章の作者が、自ら新作を取り下げるようになり、最悪それをすること自体が嫌になって消えてしまった事態に何度か立ち会った覚えがあります。あれは本当に悲しい。恥ずかしさに潰れすぎると人前に物を出すハードルがどんどん上がって苦しくなるよね。だから恥はある程度割り切って、面白そうでやった物は1人でも見えるところに出したいな、とだけ思ったりしてます。0人は続かないよ。

*20:しかも辿り着いたゴールで皆が迎えてくれる・・・ という以上に、本編だと歩いてるジャヒー様を見かけた皆が釣られて集まってくるようだったのが良かったよね。