2023冬アニメの感想(その2)

続きだよ

 

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氷属性男子とクールな同僚女子

おれ~w

大好きなアニメでした。原作はTwitter漫画からpixivにて商業化の流れ。SNS発祥のお話って独特な軽さ、目立たせ方がある気がしていて、人によっては好みが分かれるのかも。だけど個人的には抵抗が少なく、むしろ今作はこれまで見てきた中でもかなりグッと来る場面の多いアニメに感じました。

 

氷室くん良い子すぎる……立派な社会人なのに、ピュアな高校生の恋愛を見守るような気持ちでいました。見ていて微笑みが止まらないよ。

思わず天を仰いでしまったのが2話です。このアニメの登場人物ってもともと、妖怪とか、すぐ凍るとか、特徴の強い人たちでした。その軽めなテンションのまま2話で氷室くんが可愛い子どもになっちゃうんだもん。そんな唐突なことある?!ってびっくりしたけど、妖怪がいるならそのくらいあって問題ないよね。とっても良いものを見た……この日ほどSNS発祥に感謝したことはないです、ありがとう。

 

レストランに誘うとか、社会人だったらそこそこあり得ることでも、氷室くんと冬月さんを見ていると(大丈夫?まだ早くない?)って心配になっちゃう。2人の初々しさにときめいて、いつまでも見守っていたいほどでした。でも氷室くんは大人だからいつかは誠意を見せなくちゃね……。

思わず応援したくなったのは、2人へ向ける好感度を自然と高められてしまったからです。特に氷室くんの「感情がすぐ氷になって表へ出てくる」のが正直で良いよね。裏で何考えてるか分からない人って怖いもん。人類も氷室くんみたいに優しい心をもって嬉しいとき「やったー!!!」って言うようになってほしい。

 

特に8話はびっくりでした。8話は氷室くんが冬月さんに贈るアクセサリーを買う場面から始まります。

ここを見たときちょっとだけ寂しくて。氷室くんってデキる人なんだよね。仕事も優秀だし、読モな妹も含めて愛される血筋の人で。だからこういったお洒落なお店での買い物も息をするようにできて、何となく遠い存在のような距離を感じてしまいました。

でも実はそうじゃなく、贈り物は猫のブランケットに落ち着く流れにすっかりKOされました。さらに嬉しかったのが、9話をはさんで、10話~買ったアクセサリーもまた再登場してくるんだよね。氷室くんが「冬月さんに似合うと思った」気持ちも無駄にはならなかったんだ……。

イベント、イベントと目新しい話題が進んで、買ったアクセサリーは握り潰されていてもおかしくなかった分、ここを思いやってくれたのはすごく印象深かったです。でも一番嬉しかったのは氷室くんだよね、よかったね……。

 

最終話、冬月さんを押し倒す描写をマイルドにするためだけに子供化したってまじ?

季節が一巡するアニメは名作!に漏れない幸せなラストでした。同じ一年でも大人の過ごす一年ってすごく短くて、無感動なものかもしれないね。それでも氷室くんと冬月さんの過ごした一年は、他のどの青春アニメにも負けないくらい濃密なものだったと実感を持って思います。

 

ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン(25~38話)

「ウワァァァァァ徐倫ーーーーーッッ!!!!TLに・・・どんどん神父の『オモシロ画像』が流れてくるぞォォォォーーーーーッッ!!!!!!」

完結。歴代の中でもエキセントリックなシリーズで、見ている間は頭が追いつかなくなる事もままありました。ただ原作勢の話を聞いた限りだと、元々6部は初見で取っつきにくいイメージもあるらしく、読めば読むほどにハマれるお話だったかなと思います。詳しい解説の方はすでに他サイトがたくさんやってるので調べてね。

 

そもそも神父の言ってる「天国」ってなんなの?*1が明かされた最終盤、やっと理解が進んだ気がします。初めて聞いたときはやっている事のスケ―ルに比べて、意外と保守的で後ろ向きな人だな……とも思ったり。これは歴代の登場人物たちが見せた「覚悟」を何度も目の当たりにしたからかもしれません。

ただ、神父はかつて、自分の行動が巡り巡って最愛の妹を失うにまで至った人でもあって。だからこれ以上自分のすることでミスを起こさないよう、執拗に準備を重ねて、禍いを起こしうる因果は1mmたりとも残しておけない人だったのかも。

 

これはジョースター家・DIO勢力を巡る、血の運命への最終決戦でもあったんだね。神父がよく「これは決着だ」と語気を強めていたのを覚えています。徐倫はアイリンになって名前から「ジョ」が抜け、次の7部以降は『ジョジョの奇妙な冒険』というタイトルですら無くなるらしいよ。

ついに悪の軍勢が正義の味方に一矢報いたとも見えます。この長く続いた因縁を断ち切るには、誰か個人をやっつけるくらいじゃ収まらなくて、根っこを掘り返して過去と地球の再創造までしなきゃいけないんだね。

このシリーズって承太郎さんが負けたらもう無理じゃないですか、誰も勝てないよ。思えば4部でもラスボスにとどめを刺したのは承太郎さんで、いつしか絶対的なヒーロー像を刷り込まれていました。その人がナイフを使われて正面から負けたことは、最初こそ信じられなかったけど、ひとつの事実ではあったんだと思います。

 

ラスボスの威圧感は特殊OPにも。1期の演出を汲みつつ、1~5部の彼らが見せた正義の輝きをすべて踏みにじることができる巨悪に思わず手を握りしめていました。絶対に倒さなきゃいけない相手だ……。特殊OPが来ることは予想がついていたのに、思わず期待を上回られてしまったね。

ED、星の形をとった黄金の精神だけはエンポリオを通して新しい地球にも受け継がれていました。アイリンたちが本編とは違う場所で再会できたのも、神父の言う「人がいつどこで出会うかは決まっている」を異にするラストだったと思います。

抽象的ではあるものの、長くシリーズを見ているとそれなりに意味は伝わってきて、このEDが流れる頃にはすっかり画面を食い入るようにして見ていました。正直「なんだか分からないけど勢いはあった!」で終わるのを危惧していたので、作品の持ち味を端からでも噛みしめられたのは本望でした。

 

ラストが強すぎてその話ばかりになっちゃうけど、道中も変わらず楽しかったです。

特にお気に入りだったのは27話リキエルさんの回、声を演じるのは古川慎*2さん。神父の手先の中でも特に弱さを抱えていた牛柄の人で、CM合間に出るステータスのグラフも貧弱でした。だけどその実、誰よりも力強い信念を見せる人で思わず見入っていました。

ジョジョで好きな回はいくつかあって、同じくらい視聴の目に炎が灯ったのは5部ホルマジオさんの回*3 ここに匹敵するほど好きな回でした。アニメーションと声優の演技が手を取ったとき生まれる凄まじいパワー、この迫力ばかりは他のアニメでそうそう観られないものに思います。

 

老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます

まずはやっぱりエコノミ~

冬アニメでも特に期待をかけていたタイトルです。掴みの面白さがバッチリで、これからミツハ殿がどうなるか次第では80点にも80000万点にも転びうるとドキドキしながら見ていました。

 

「お兄ちゃんって回想以外でいつ出てくるんだろう?」と思ったのを見事に刺されてしまったね。1~3話頃は毎週驚かされてばかりでした。なんだか妙に行動力ある主人公だな~と思ったら、本当に吹っ切れてる人だったんだ……。

ミツハ殿がどうして今の打算的な性格になったのかを納得させられた思いがあります。切羽詰まった人って視野狭窄に陥るんだよね、たとえば本当はそこまでじゃないのに(もう死ぬしかない……!)って思いこんだり。ミツハ殿の場合は頼っていた人を失い、生きるために手段を選んでいられず、自分だけの力で生計を立てようとする人に見えました。

 

ミツハ殿はすごく子供っぽさの残る人で、見ていて危なっかしい気持ちが常にありました。車を運転できる年齢なの?!

見た目はともかく、内面も事故の日から止まってるのかもしれないよね。短絡的なウソをついたり犯罪を軽く捉えてるのは「幼さ」と結びつけられて、ミツハ殿が過去と折り合いをつけて子供をやめない限り、危うさが変わることも無いんだと思います。逆にいえば、ミツハ殿にとって何かポジティブな心境の変化があれば、それは行動に反映されるのでしょう。*4

 

そして心境の変化は、周囲の優しさに気付けるかどうかに懸かっているんだと思います。「ミツハ殿が安心して周りに支えられる日が来るのか」これを視聴中ずっと気にしていました。

たとえば現実世界で家を出るとき、お隣さんが気にかけてくれていることに気付くだけでもいいんです。異世界でも関わる人はみんな優しくて、きっとミツハ殿が肩肘張っていなくても、周りの人たちは同じように心を向けてくれていたと思います。

 

とか、難しいことも考えてたけど8話の萌えが強すぎて負けちゃった~~異世界のふわふわ金髪お姫様!!

ところでOP、作中で関わる人が次々に映るところが大好き。コインが裏返るほどに映る顔がみんな心から気の良い人たちで。たとえ対価が無くてもミツハ殿が困っていれば支えてくれる人はこんなに沢山いるんだ……。

 

結果的に、12話まででミツハ殿が100%周りの優しさに気付いたわけではなく、無難な終わり方に落ち着いたとも思います。原作も未完なのでまだその時ではないだけかもしれません。

ただ作中でも小さな希望はあって、それはコレットちゃんとの再会の中に見えました。貴族になって態度を改められるのに対して、そのままのコレットちゃんでいいと伝える場面。

これまで周りと他人行儀にしてきたのはむしろミツハ殿の方です。だけど異世界を通して、他人と距離を縮めるきっかけが生まれ、何か大きな出来事の前後で自分が変わってしまう必要は無いと言えるようになったこと。少なくともこの台詞をミツハ殿の口から言ったことが大切で、いつかミツハ殿が思い返したとき自分を癒す言葉になったらいいな……と願ってしまいます。

 

英雄王、武を極めるため転生す ~そして、世界最強の見習い騎士♀~

季節にTSジャンルが4本以上もある異常クールのうち一角でした。

このアニメを見ていた理由はただひとつで、1話のラーアルさんの描き方に美しさを見たからです。この人もいわゆる"かませ悪役"のポジション。

ラーアルさん自身は外道で庇うべくもない人です。だけど少なくとも1話に関しては、惨めに敗北する悪役の中にも彼らなりの美学があり、それを知ってかつ「この人を美しく描いてあげよう」という意思が無ければ成し得ない回だと感じました。

いかにも雑魚敵っぽいモーションだったり、プライドの高さ、主人公の凛々しさに比べて情けない大股・大振りな姿も。特にラーアルさんは顔のアップが多いんです。本当にどうでもいい役ならわざわざ見せ場を用意しないし、手間も時間も節約する方法があったはずだよ。

そんなラーアルさんが3話、あまりにもあっけなく退場したのはびっくりでした。あの急に出てきた魔石獣がラーアルさんなの?!

悪役はいかに無様に散るまでが華で、その意味だと100点かもしれません。だけど感慨もなく消えてしまったのは少し悲しかったです。その後は、黒い仮面の人が実はラーアルさんだったりしないかな~なんて淡い期待をしながら楽に見ていました。

 

ノケモノたちの夜

癖に刺さるアニメでした。ケモノは詳しくないけれど、意思のある女の子・背の高い従者って関係が大好き。

好きな要素がありすぎるよ、まず教会でマルバスさんと逢瀬する場面から。「自分を救い出してくれる存在を窓に見る」って行為がものすごく好きなんです。惨めで誰かに助けを求めることさえ出来ないとき、最後に縋るように窓を見て物語の世界へ逃避してしまうものだよね。そんな窓から夢の住人が現れたとき、この話はわたしに合うと確信を持って見ていました。

 

何があっても自分を守ってくれるような大きくて誠実な存在がほしい。だけどこちらが何も与えないのに一方的に尽くしてもらえるのは嘘の関係で、その点「契約には代償が必要」だったのも個人的にはポイントでした。

結婚以上の関係で結ばれる……というのがすごく好きで。マルバスさんとウィステリアちゃんもそういった間柄では無いだろうけど、身も心も差し出し、絶対に破られない誓いを交わし、お互いを認め合って生きていくなら、それは結婚以上のものだと思うんです。

 

マルバスさんと契約した後にお兄ちゃんが迎えに来るのヒヤッとしたね~、もう兄の知ってる無垢な妹ではなくなってるじゃん……。

スノウさんの滲み出る不幸体質がウィステリアちゃんに負けず劣らずで、自然と目が追いかけてしまいました。ラングレイ家はそういう星の下なのかな。ただ2話の早いうちからマルバスさんと拳で語り合えたのはかなりホッとしました。このわだかまりを長く燻ぶらせるほど恨みも蓄積させていたことでしょう。よかった、スノウさんが悪堕ちラスボスになることは無かったんだ……なっとるやんけ!

守りたい、この笑顔。

 

ダイアナさん、ナベリウスさんを加えて、お買い物したり街を歩くのがもーー大好き。暗めな話もあるぶん可愛いパートはとことん明るくて笑顔でした。マルバスさんとナベリウスさんも仲睦まじくて良いよね……桁の違う年長組がじゃれあう姿を見てにっこり。

ここから深夜のお話になってしまうけど、身長の違いをハッキリさせたカット*5も多くて大変満足でした。

単に差があればイイってわけじゃなくて。非力で小さな女の子が大きな力を横に置くためには相応の代償、もしくはそれに見合うだけの意志の輝きがあるんです。そして力のある側は支払いに応じて、または心のありようを美しく思っているから、絶対に誠実でいてくれる。この高さが合わない2人が、見た目以上の対等さで結ばれているのが好きでした。どちらかの力関係が崩れたら途端に暴力に成り下がってしまうよ。

ただ人間相手に「絶対」なんて言葉もそう当てはまらなくて。だからこういったお話のとき、悪魔と契約をするという形になるのも好きなポイントだったりします。*6

逆に、差があることをそのまま暴力として使うこともできます。こういうこと考えながらアニメを見るのが結構楽しい。

 

後半からは少年漫画らしいバトル要素が強くなり、少し雰囲気が変わった気もします。人型ダンタリオンさんの筋肉でぱっつぱつになったスーツ……好きなもの。

ダンタリオン・ルーサーペアもまた信頼し合うパートナーなんだね。「将なら兵を使い潰せ!」って何度も言ってたのに、最後にはルーサーさんが助けられるのも彼らなりの矜持が見えてグッと来ました。

ルーサーさんの記憶無くなったんだ……元々ダンタリオンさんとの契約はルーサーさんが昂る闘いをする代わりに戦争以前の記憶を取り戻すことで。ダンタリオンさんが舞台を降りた今、もはや闘争無しでは生きられなくなったルーサーさんに「戦場の将」ではない「友人」が贈った最後の計らいだったのかもしれないね。

 

1話で好きになった方向から後半の展開には少し戸惑った時もあったけど、アツさも含めてやりたい事なのはアニメからしっかりと伝わってきていて、温度感に再び慣れてからはより一層に楽しめました。

スノウさん、ウィステリアちゃんと一緒に居られるようになって本当に良かったね……エピローグで声が聞こえたとき泣いちゃった。もしこの先マルバスさんが挫けて、情けなくなっちゃったら隣で叱ってあげてほしいな……。

 

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*1:人々が未来の運命を知り「覚悟」を持てるようになること

*2:『吸血鬼すぐ死ぬ』ロナルド役など

*3:https://www.youtube.com/watch?v=Jyidx-R-7uQ

*4:このあたりの視聴感は『リアデイルの大地にて』と通じるかも。

*5:ここに小さい側の身長ラインがあるぞ~ってひけらかすようなカット

*6:『ヴァニタスの手記』ジェヴォーダン編で、クロエ・ダプシェが異形に皿を運ばせる代わりにやがて自分を殺すよう契約していた、とかもすごく好き。