2022秋アニメの感想(その3)

そろそろ書き上げないとやばい!

 

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ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン(13~24話)

バチバチにカッコイイ女たちの闘い第二弾。

~24話は脱獄まで。Netflixの一覧表示が24話までだったから、てっきり終わりだと思ったら38話まであるんだね。まだまだ続く。日々の中でパワーがほしい時に見ていました。力強い台詞を心の中で復唱するだけでなんだか楽しい。

大きな事件だったのはF・Fの脱落です。出会った頃は化け物だったけど、今はすっかり情が湧いちゃった……。毎話のように致命傷を負って帰ってくる徐倫たちを一手に治してたのはF・Fだったのに、これから怪我したらどうするつもりなんだろう。

このシリーズではよく人間の誇り高さを「黄金の精神」と呼ぶところ、F・Fは元がプランクトンだった分、そもそも精神や知性があるかのレベルから怪しかったんだね。そんなF・Fが自分に知性があったことを別れの言葉に、最後まで仲間のために身を捧げて。歴代の高潔な人々と同じ黄金の姿で旅立てたのは、本人にとって何より幸福なことだったんでしょう。

アナスイも登場が増えてきました。この人が何だか不思議で、いつの間にか現れて同行していたような人でした。善人か悪人かもどっちつかず*1で、赤ん坊を前にしたとき、守りたい徐倫と「殺せ!」と言うアナスイで対立するのも印象的でした。徐倫に求婚してる手前そんな態度だと信用ガタ落ちじゃない? ただ最後の徐倫のために命を賭すところではやっと信用してもいいのかな……と傾きつつあります。

気のせいかもしれないけど、1~3部と繋がりのある話だからか、雰囲気もその頃に寄っているように思います。OPはバッチリ意識されてる他、徐倫が鼻をくいっと拭って戦闘の構えを取るところとか、まだスタンドが無かった頃のスタイルを思い出したり。

まだまだ話の途中なので、何とも言えない部分もあり。ただラスボスと一騎打ちになる頃からまた一段と緊張感が高まる予感もしています。あの敵味方に関係なく、絶体絶命のピンチがお互いに降りかかっては二転三転する感じ。いつも(流石にもうここから勝つ方法なんて無いよ……)って思いながら見てるからね。楽しみです。

 

不滅のあなたへ Season2(21~32話)

ノッカーって食べられるんだ。

そう、22秋からはこのアニメがあるんです……覚悟を決めなくちゃ。本編はサールナイン島編、ウラリス王国編から、王都レンリルの途中まで。

あらゆる面で完成度が高く、もし1つだけ他人にアニメを見せられるならコレと言ってもいいアニメです。長編だったり重めなテーマだから薦め辛くはあるけど……それでも。1期タクナハ編のロマンチックな悲恋のお話に深く心を傷つけられて以来、すっかりこのアニメに惹きつけられてしまいました。見てしばらく寝込んだ経験は忘れられないよ。どうにか皆にも見てほしい、そしてこの甘々な可愛さと苦みの両方を共有したい。

シリアスだけが良いのではなく、人間をとことん魅力的に描き出すところが『不滅のあなたへ』の美点だと思っています。一口に「可愛い人を描く」「カッコいい表情を描く」「苦悩が滲む顔を描く」と言っても今作は分厚い底力に支えられていて、その結果ものすごく可愛い女の子が生まれる、カッコいい老人がいる、シリアスも輪をかけて身にしみる……と存分に味わえるのが特徴に思います。物語を魅せるエンジンが一級品なんだよね。

 

まずはサールナイン島編。いきなり40年の時間経過から始まるのがこのアニメらしいね。フシは前回よりさらに人間らしくなって見えました、拗ねた少年から拗ねた大人……程度には。

何といってもトナリの再登場がサプライズすぎて。こんなカッコいいお婆ちゃん見たことないよ……! 人がもりもり死んでいく今作で、生き残りENDを果たしたヒロインが老練な顔つきで戻って来たことがどれほど嬉しかったか。しかも正面をキッと睨みつけると確かに昔のトナリの面影が増すんだよね、もう既に見ていて泣きそうでした。

ヤノメの子孫が出てくるのもびっくりだったね。初代のハヤセがいかに外道だったかは血のジャナンダ編で嫌というほど刷り込まれていて。瓜二つの顔をした子どもが仲間として擦り寄ってくるのは頭がどうかしそうでした。この子は信用してもいいのかな……でもまだ無垢な子どもだし……いや、やっぱハヤセじゃん!しっかり血を受け継いでるよこの一族!

1,2話は凄まじいスピード感で物語が動いたのに、驚くほど見やすく、敷かれたレールにどっぷりと浸れる視聴になりました。結局ヤノメ一族にも理解者が必要なんだ、って枕を並べるシーンも本当に微笑ましかった……。未だ油断ならない人たちだけど、何だかんだでヤノメ一族と行動を共にするなんて今までなら1mmも考えられなかったもんね。

ウラリス王国編、ここでも数十年と過ごすフシ。アイキャッチで突然まんまるになるのは何なの、可愛いね。ごはんが美味しかったのかな。*2

ここでも人の魅力を映し出すのが巧いアニメで、たとえばこの頃のボン王子は「わがまま王子」という記号より一歩踏み込んだキツめな自分本位さが見えたり。トドは心底良い人なのに機を逸し続けていて、何となく報われそうも無い人みたいな。原作の設定だけでなくその見せ方に技があったと思います。トドのふにゃっとした笑顔が愛らしすぎて、この人には死んでほしくない……けど無理かもしれないな……ってもやもやを抱えたり。見ていてこれほど腹を据える必要に迫られるのはこのアニメくらいだよ。

物思いに耽ってしまったのが、フシがパロナの姿をして街を歩くところ。もちろんこれはパロナ本人ではないけれど、生まれる時代さえ違えば、弓を引かずに綺麗な服で可愛いものに囲まれて暮らしていたかもしれないんだよね。決してそうあるべきだったとは思わないけど、あり得たかもしれない生活を垣間見て、実際は狩人として惨い死に目を迎えたことを思うと、なんだか複雑な気持ちになってしまいます。……よりにもよって殺した張本人の子孫がパロナの姿に恋仲を迫るって、どうしたらそんな酷いことを思いつくの。

ワニワニパニックを経て、ボン王子が断頭台へ向かうまで。利己的なボン王子が友のため、自分を犠牲に真実を騙るシーンは怪演だったね。どれだけ良い人だろうと容赦なく死んでいくこのアニメでは、遂に来るものが来たかと遠い目をしていました。最期の瞬間まで手を握ってくれる人がいるの嬉しいね……。

王子の首は落ちました。そして8話ですよ。この話があるから、この緩急に度肝を抜かれてしまうから、私は『不滅のあなたへ』というアニメに惹かれてしまうんです。大逆転のハッピーエンドでした。

これ、8話まで見た後にもういちど4話を見返してほしいんです。見た? 見たね。ボン王子の幼少期で「幽霊が見える」という説明パートの中、他の幽霊と一緒に出てきた色素薄めな女の子。今でこそなぜ気付かなかったんだろうと思うけど、当時トドは男の子だと思い込んでいたのもあり、見事にしてやられました。

そして枕元で囁いた声と刺繍のハンカチ、これは幽霊じゃなく本物の人間の仕業だったんだね。そりゃボン王子のお母さんが悪魔祓いをしただけでは逢瀬を防げなかったわけです、だって女の子は壁をよじ登って会いに来てたんだから。

もーーこの御伽噺のような甘いお話が大好き……! 時を経て2人は実はずっと傍にいたこと、ヘタレでもカッコいい王子様が彼なりの言葉を使って2人が結ばれること。8話という最高に幸せな回を200%、300%と盛り上げてくれるのがたまらないです。このアニメは確かにシリアスなENDもあるけど、その逆方向でも爆発して、こんなドラマチックな結末だって見せてくれるんです。

続いて王都レンリルの途中まで……だけど、家の再建が始まる頃はまだ準備段階・人物紹介といった感じで、珍しく穏やかな時間が続いてるね。嵐の前の静けさなのかも。新生ボン王子はサッパリした人に変わりつつ、根っこではフシのために実利を求める姿勢があるのも元の人格が見えて良いよね。

フシの強化プログラムの話もありました。「いよいよ人間から離れてきた……」って台詞が印象に残っています。フシがこれまで何を守れたのか?を振り返ると、初めは死に翻弄され、助けたい人も力及ばず目の前で失うばかりで。ジャナンダ編ではトナリこそ生き延びたものの、あまりに多くの犠牲が出てしまいました。そう思うとウラリス王国編は異色で、指の隙間を何ひとつこぼれなかった初の快挙なのかなと思います。

ここでフシがさらに力を付けて、次のレンリルも順調に守れるのか。はたまた力を付けすぎて、人を守ってやるなんて神様のエゴじゃないの?的なところが見所になるのかな。

他にもノッカーの目的や、死者の魂はどうなるかも情報が出てきたね。この世界に天国は実在するっぽいとか、未練のある人は今もフシの周りをついて歩いてる*3とか。人が死ぬアニメってそれだけで一線を引いて見ちゃうこともあるけど、この作品の死はかなり特殊な扱いになっていて、捉えようによっては誰一人死んでいないとも取れるのかも。難しい話だね。

 

ポプテピピック(第2期)

"クソアニメ"が誉め言葉になる唯一のアニメ。本文でも良い意味で使ってるからそのつもりでね。

これをアニメと言うかは意見が割れるけど、何だかんだ毎週かなり楽しんで見てしまいました。悔しい。1期に続いて同じ内容を2回放送+声優だけ変更のスタイル、話数ごとに今回はどういうコンビが出てるのか検索していました。阿部敦さん&岡本信彦さん*4の回とかテンション上がっちゃった……2回目の人たちお酒飲みながらアフレコしてない? そのくらいの奔放さ。

変な話から入るけど、アニメ制作なんて自分の思い通りに進まないことがほとんどなんだと思います。時間の問題やら、予算やら、各方面との食い違いやら……色んな都合で実力を燻ぶらせる人もいて。そういった人たちの溜め込んだフラストレーションが『ポプテピピック』には降り注いでいる気がします。このアニメなら真実の好き放題をやれるから……そういう意味では中指を突き立てるこのタイトルの"らしさ"とも噛み合ってるかも。

OPから視聴者とAmazon Primeのエンコード*5を置き去りにしたり、いきなり新海誠映画みたいな絵が出てきたり……天才と狂人は紙一重なアニメでした。B-sideのコーナーを手掛けたのは同じクールで『SPY×FAMILY』にクレジットされてる人らしいよ。どちらも良いなりにz軸ですごい落差ある。

たまにある作者名が「????」の話に限って超絶アニメーションが出てくるのも面白いよね、名乗るほどの者でも無いってこと……!? 画像のようなトーンの4:3アニメなんて今どきまず放送枠が無いし、作りたくてもできないよ。『ポプテピピック』はやりたいことを何でも叶えられる受け皿だったんだ……。

このアニメほど原作をなぞることに意味が無いタイトルも珍しいと思います。ありったけのストレスをぶつけてクソ漫画ができたなら、アニメはアニメ現場なりのストレスをぶつけて別個体のクソアニメができてるのが良いはずで。ストレスは昇華で解消しよう!なんて言葉を地で行ってるみたい。

かつアニメーターのやりたいことは大体絵で完結しているので、その後で声優がルーレットになろうと、はっちゃけたアフレコをしようと問題にならないのも大きかったです。

EDさ……ちょっと良くない? このアニメのネタって本当に独りよがりで、他人が見て面白いかも二の次になる”指遊び”に過ぎないと思います。だけどEDでそう喩えてなお、この指遊びは2人でやるものなんだね。「自分は面白いと思った」なネタでも、本当に誰にも理解してもらえないのと、何だかんだ隣で面白がってくれる人がいるのとでは全然違うと思うんです。全編で唯一横通しの要素にあるのが2人が仲良しなことで、そこが伝わってくるのは掛け値なしに楽しい時間でした。でも、あんまりこのアニメを「良い」と言うのも本意ではないのでこのくらいにしておきます。

 

アキバ冥途戦争

P.A.のオシゴト(?)アニメ。

CygamesとP.A.WORKSの共同制作。Cygamesは分かりやすさとインパクトを重視し、P.A.は多少難解でも心の機微を捉えた作品を作るイメージがあります。たとえばP.A.の『グラスリップ』なんかは当時散々に言われた一方で、一部のコア層にはしっかり届いているアニメだったように思います。ただ、前に放送された『パリピ孔明』に続き、P.A.はなんとか派手で理解しやすい作風に変えようと苦心してる気配は感じるね。どちらが好みかは分かれそうだけど、登場人物に心を彫り込み、かつパワフルにぶつける手付きは今作にもしっかり宿っているのが感じられました。

任侠の世界観をベースに、1999年の秋葉原を舞台にした「薄汚れた景色」の描き方がものすごい。パレードの開催です!って景気よく風船が飛ぶときの鈍い色遣いとか、ここって秋葉原のあの場所じゃない……?と思わせられるスポットとか。秋葉原には詳しくないけど当時を知る人ならもっと楽しいのかも。街並みだけでなく、食卓を囲むようなときでも一発で時代感や「ヤクザの事務所」っぽさの伝わるムーディーさが漂ってる。

ストーリーは暴力、殺人、ブラック労働と、濃い味の展開が続いたね。良いアニメなのは間違いないですが、人の死をかなり軽率に扱っている節があり、終盤までは乗り切れない気持ちもありました。作品がやりたいのは任侠で、そのために出る死人は舞台装置のようなものなんだ、と見方を割り切ってからはそれなりに楽しく見られました。

そんな汚れた世界でも唯一、芯を持って輝いていたのが万年嵐子さん36歳でした。もしもメイド喫茶に行く理由が「推しがいるから」なら、私にとってこのアニメを見ていた理由は「嵐子さんがいるから」に尽きると思います。その嵐子さんすら、美しくない表情を映されて散ったときはどんな顔をすればいいか分からなかったね。

 

ただ驚いたのが12話。ここまで良くも悪くもと思っていたところ、最終回で信じられないほど巻き返された感触があります。

見ている人からも、周りに流されやすいなごみさんからも、初めは(メイド=ヤクザなんだ、人の死もオモチャ感覚でそれが普通なんだ。)という目線があったのかなと思います。だけどそれってやっぱりおかしいよ、メイドって何なんだよ!と吐き捨て、なごみさん自身に芯の強さが灯るのが12話でした。

一触即発の人たちを前にした完全アウェーの劇場。ただのヤクザの言い換えでしかなかった「メイド」に、ここで意味を感じられたことに圧倒されました。少し想像も入っちゃうけど、現実のメイド喫茶の人も日々見劣りしない戦いに晒されてるのかなと思ったり。時には悪いお客さんから作中のように「こんな恰好して恥ずかしくないの? 人間辞めてんじゃない?」と冷笑され、それでも笑顔を絶やさないのがメイド喫茶のキャストという職業で。銃撃戦は無いにしても、同じだけ肝が据わっていなければ務まる仕事じゃないだろうね……突飛に見えたメイド×ヤクザの設定もこれをやりたかったのかな。

暴力を使った罪は消えず、かつての嵐子さんも、立ち止まることが許されなくなった凪さんも、なごみさんも例外なく凶刃に倒れ臥すラスト。思えば1話で"チュキチュキつきちゃん"へ軽いノリみたいに襲撃をかけた日の報復が12話まできっちり繋がってるんだね。しかも火種は取り返しがつかないほど拡大していて。静寂の後のED入りには、暴力の果てに行き着く結果の虚しさを感じずにいられませんでした。

だけど何もかもが無意味に終わった訳じゃないね。1話で嵐子さんが萌えを歌いながら暴力を振りまいたなら、12話でなごみさんが暴力の象徴をサイリウムに変えさせて萌えを歌ったのは綺麗な対比になっていて。ここが時代の変わり目だったんだと思います。

暴力が無くなった2018年、明るい色みになったアキバに現れる36歳のなごみさん、あの燦然とした笑顔が本当にカッコよくて、可愛くて……。とんとことんの他のメンバーにも暴力のツケは返ってきているはずだし、今のお店で仲良く肩を並べられるほどの道理は無いのでしょう。なごみさんの道のりも凄絶だったと思います。だけど少なくとも客の前で笑顔を絶やさない。それがメイドの仕事で、暴力をふるうことではないから。ED後は短いながらも、確かになごみさんの生き様がアキバを生まれ変わらせたんだと信じられる見事なシーンでした。

途中までは任侠をやりたいだけに見えたし、主人公もフワフワしていたはずです。なのにいざ終わりを迎えてみると、しっかり着地を決め、罪を徹底的に清算し、それぞれの吠える生き様と真正面から向き合う姿勢を感じました。きっと滅茶苦茶やってる1話を見てるときの自分に言っても嘘だと思われそう、それほど切り返しが鮮やかなアニメでした。やっぱりこれがあるからアニメって最後まで見ないと分からないね。

 

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*1:登場人物のほとんどが重大犯罪者の中で善悪を言うのがおかしいかもしれないけど……

*2:と、当時は特に意味の無いカットだと思ってたけど、もしかしてアイリス邸の近所にできた「美味しいスイーツ屋」をフシも実食してた可能性がある……?

*3:それなら周りにいないパロナは本当に未練が無かったんだろうね。

*4:『とある魔術の禁書目録』のコンビ

*5:あの渦のシーンを綺麗に見られた人いるのかな……